第34話 ヴォルド宮の戦い
※アレイシア視点です。
私たちの前に突然現れたフィルド。彼女は本当に神出鬼没だ。ケイレイトがブーメランを引き抜き、セイレーンも魔法の剣を再び作り出す。すぐにでも襲い掛かりそうな勢いだ。
「自然の魔女、人工の魔女、パーフェクター。まさに世界の三大人外が揃ってるじゃないか」
「生きていたんだ、フィルド」
「今度こそ殺す!」
一番最初に飛び出したのはケイレイトだった。彼女はブーメランを握り締め、飛び込むようにしてフィルドに斬りかかる。
だが、フィルドは余裕そうな顔をしながら大きく飛ぶ。宙を舞いながら、電撃を飛ばす。黄色の電撃が飛び、ケイレイトを吹き飛ばす。彼女は扉に背を打ち付ける。
「1人ずつ殺すのはめんどうだ。3人いっぺんにかかってこい」
フィルドの挑発。その顔は余裕に満ちていた。……3人って私も込み、だよな? 私なんかしたっけ? もしかして、ノリと勢いか?
ケイレイトとセイレーンが共に床に着地していたフィルドに斬りかかる。フィルドも剣を引き抜き、2人まとめて相手にする。何度も鋭い金属音が鳴り響く。火花が散る。
「コマンダー・アレイシア! コイツを殺せ!」
「えっ」
私、関係ないぞっ!?
「財閥連合のっ! 実験台として、成功例はこいつだけだ! コイツがティワードの手に渡れば! アイツらますます生物兵器開発を進めるぞ!」
「ハハッ! 連合政府はまだ私の完全なコピーを生み出せないのか!?」
フィルドの剣がケイレイトのブーメランを弾き飛ばす。かざされる手。それはケイレイトの方を向いていた。やばい、超能力だ! ケイレイトが殺される!
「…………ッ!」
「ママ!」
「…………!?」
フィルドの超能力が別の超能力で相殺される。扉の方を見れば、そこにはクナがいた。彼女は部屋に飛び込むようにして入って来ると、フィルドに手をかざし、次々と超能力を飛ばす。だが、フィルドは超能力の斬撃を剣で防ぐ。
「邪魔がまた増えたか。ケイレイト、お前はどれだけの友がいるんだ?」
「仲間のいないあなたには、永遠に奪われる気持ちが分からないんだっ!」
セイレーンが剣を振り降ろす。フィルドは素早い動きで再び空中に飛び出し、剣を避ける。彼女はティワードの椅子に着地する。
「セイレーン……。仲間なんて必要ない。邪魔なだけだ。いなければ、裏切られることも、失う事こともない」
「…………ッ!」
な、なんてヤツだ……!
超能力の斬撃を繰り出す私に(一応、ケイレイトの仲間なので攻撃している)、フィルドは怪訝な顔を浮かべながら、彼女自身も斬撃を繰り出し、私の攻撃を相殺していく。
「ひ、ひぃっ!」
激しい戦闘にコマンドが目を覚ます。彼はフィルドの姿に仰天し、駆け足で逃げ出す。
「待てよ、コマンド」
フィルドが冷たい声でコマンドを呼び止める。おお、アイツ死んだかもな。
「…………ッ! ま、待て! わたしはパトフォーに騙されたのだ!」
コマンドは立ち止まり、震えながら言い訳を始める。言い訳、自己保身、責任転嫁はコイツの得意技だな。保身のパーフェクターか?
「決してお前を実験台にするつもりはなかった! あ、あれは全てパトフォーに脅されてやったのだ! お前もわたしもパトフォーの被害者だ! ここは共に手を取り合い、パトフォーを倒そうではないかっ!」
懇願するようにして叫ぶコマンド。フィルドに命乞いして助かったヤツってどれぐらいいたかな? ……たぶん、皆無だろうな。
フィルドは無言で手をかざす。大きな斬撃が飛ぶ。それはまっすぐとコマンドの首を狙っていた。よし、いいぞ。
だが、それはコマンドの首をハネることはなかった。別の超能力によって相殺される。フィルドの超能力に匹敵する程の力の持ち主は……!
「逃げて、コマンド代表!」
「おっ? おお、よくやった、クナ! 実はお前のことは始めから信じておったのだ!」
それだけ言うとコマンドはさっさと逃げていく。フィルドが追撃しなかったのは、ケイレイトとセイレーンの猛攻を受けていたからだった。
風魔法がフィルドの自由を奪う。精神魔法がフィルドの精神をかき乱す。チャンス! 私はフィルドに向けて斬撃を飛ばす。
「こんなもので私が……!」
フィルドにまとわりつく風魔法と精神魔法の双方を消し去る。自身の周りに藍色の光を纏うと、ガラスを割るような音と共に妨害魔法を破壊した。
だが、超能力の斬撃にまでは手が回っていなかった。彼女は腹部に斬撃を喰らう。血が飛び散り、ステンドグラスに叩き付けられる。
「クッ……!」
ケイレイトがブーメランを投げる。鋭い刃が彼女の首をハネようとする。だが、僅かに間があった。フィルドはその場から空中に飛び出す。しかし、空中には、すでにクナが待ち構えていた。
「…………!」
フィルドは強い打撃を受けて叩き落される。あの打撃も超能力によるものだ。そして、落ちたすぐ側にはセイレーンがいた。彼女の手に握られるのは魔法の剣!
「みんなの仇っ!」
「なにをっ、調子に乗るな! 自然の魔女!」
斬撃が飛ぶ。振り下ろされていた剣は超能力で砕かれ、その衝撃でセイレーンは後ろに吹き飛ばされる。
だが、それと同時に私は火炎弾と電撃弾を放っていた。2つの魔法弾はフィルドの腹部に直撃する。そして、タイミングよくクナも魔法弾を放つ。火炎弾と破壊弾と衝撃弾をそれぞれ3発ずつ!
合計で11発もの魔法弾がフィルドを四方八方から襲う。爆音と破裂音が鳴り響き、火花や電撃が飛び散る。
「――――ッ!」
フィルドは床に片膝を着く。剣で痛みに震える体を支える。あと一押し!
「ハハハハ! 私が、お前たちのようなヤツに――!」
フィルドが立ち上がった瞬間だった。セイレーンが勢いよくフィルドの懐に飛び込み、――
「…………!」
フィルドがおびただしい量の血を吐く。その背からは青紫色をした半透明の剣が突き出ていた。剣を握るのはセイレーン。彼女の剣は、確実にフィルドの身体を貫いていた――!




