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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 †決戦† ――連合政府首都ティトシティ――
33/40

第32話 とある魔女の逆襲

※前半はアレイシア視点です。

※後半はセイレーン視点です。

 私の周りには敵が多すぎる


 なぜ――?


 いつからかだろうか?


 














































 【連合政府首都ティトシティ ヴォルド宮】


 ティトシティに戻った私たちを待ち受けていたのは、予想だにしない状況だった――。


「コマンダー・アレイシア中将、お待ちしておりました」


 そう言って私に近づいてくるのはプロヴィテンス。周りでは大勢のバトル=アルファやバトル=ベータが絶えず走り回ってる。

 深夜のティトシティ・ヴォルド宮。今、私たちはヴォルド宮の周りにいた。


「犯人はコマンド代表を人質にヴォルド宮を占拠しています。合計で3名の連合政府リーダーが人質となっております」


 プロヴィテンスがそう言っている間にも、何度も爆音が鳴り響く。ずいぶんと激しくやっているんだな。

 今、ヴォルド宮はサキュバスに支配されていた。聞いた話では、セイレーンとかいうサキュバスが率いる軍勢がヴォルド宮をあっという間に制圧。連合政府リーダー3名を人質にしてしまったらしい。


「セイレーンはコスーム大陸の新興国家――ファンタジア王国の助力を得て、ティトシティを奇襲したようです。総数が1000人近い軍勢です」

「そうか……」


 私は割と落ち着いた声で言った。とんだ逆襲にあったな。……ぶっちゃけ、連合政府リーダー3人が死んでくれれば、個人的にはありがたかった。

 私は連合政府に本気で忠誠を誓っているワケじゃない。連合政府リーダーが死に、ケイレイトの連合政府内勢力が上がれば、クローンの王国を作るという私の夢を実現させやすくなる。


「ティト州西部にファンタジア軍の本隊が進出してきています。指揮官は元国際政府軍の将軍、サファティです。長引かせると、攻め込んできます」

「そうだな」


 そりゃ困る。ファンタジア王国はファンタジア王族中心の国家だ。連合政府がファンタジア王国に乗っ取られてたまるか。もし、そうなったら、第二の連合政府が誕生してしまう。


「ファンタジア軍の防衛にはティワード総統が直々に。ティトシティ防衛はアヴァナプタ将軍とプロパネ将軍。国際政府軍の動きに警戒するのはメタルメカ将軍です」

「ここを何とかするのは私たちか」


 なんとかするって言ってもな……。ここの軍を指揮するプロヴィテンスとバトル=オーディンをこっそり始末して、セイレーンと話しつけて、連合政府リーダーを片付けて……。

 私は黒いことを考えていたが、不意に私の背後から機械の足音がした。振り返ると、そこにいたのは黒い鋼の身体を有するバトル=オーディン。連合政府リーダーの1人だ。


[ティワード総統は即座に始末せよとのご命令。一気に攻め込む]

「連合政府リーダーが殺されますが……」

[分かっている。だから、俺と“クローン・ボス”、ケイレイトの3人でこっそりと忍び込み、セイレーンの首を取る]


 誰がクローン・ボスだ。マシン・ボスの分際で何言ってる。


「いや、バトル=オーディン将軍は指揮を。ここは私とケイレイト将軍とクナの3名で乗り込みます」


 私はそれだけ言うと、異論を挟む隙も与えずにその場からさっさと立ち去る。あんなヤツに来られると、話がややこしくなりそうだ。

 私は歩きながらヴォルド宮に視線を向ける。まず、ヴォルド宮に忍び込んでセイレーンに会ってくる。彼女と話をつけて、連合政府リーダーをその場で殺す。

 そして、メイン・コンピューターを使ってバトル=アルファらを使って操り、ティワードやバトル=オーディンら連合政府リーダーたちを皆殺しにする。

 よし、これは行けるかも知れない。今まで散々、狩られてきたが、今度はこっちが狩ってやる。


「コマンダー・アレイシア!」

「ケイレイト将軍……。いよいよ新政府の設立チャンスが来ましたよ」

「…………!?」


 私の言葉に彼女は驚いたような表情を浮かべる。この私の計画を知っているのは連合政府内ではケイレイトだけだった。


「いよいよ、実行に……?」


 そう言うケイレイトはどこか震えていた。まぁ、こんな大がかりな計画の実行を前にすれば、誰でも震えるか。そういう私もやや震えていた。失敗すれば、もう後がない。


「連合政府リーダーたちを殺し、連合政府を乗っ取る。今がチャンスだ」


 私はヴォルド宮の方を向いて言う。利害の一致だけでセイレーンと手を組むのは難しいかも知れない。だが、これを逃せばチャンスは……。


「アレイシア、そろそろ行こう。セイレーンとファンタジアの軍が負けるのは時間の問題だよ」

「……分かってる。行こう」


 深夜のティトシティ・ヴォルド宮周辺で鳴り響く銃撃音や爆撃音。その音に包まれながら、私たちはヴォルド宮に向かって歩き出す。今度はもう、狩られない――!



◆◇◆



 【連合政府首都ティトシティ ヴォルド宮 ティワード私室】


 私は連合政府リーダーの1人、コマンドと共にティワードの私室に立てこもっていた。ファンタジア王国から借りた兵の大半はやられた。もう、ダメかも知れない。テティスやディオネ女王の仇を取りたかったけど、それも叶わないかも知れない。


「まぁ、落ち着け、セイレーン」


 コマンドがニヤニヤしながら私に声をかけてくる。


「ここは平和的解決をしようではないか。今、このわたしを丁重に外に送り届ければ、お前に街を1つ買ってやろうではないか」


 コマンド=パネル。財閥連合代表。12名いる連合政府リーダーの中でも、最も大きな影響力を持つ男だ。


「そ、そうだ! お前に朗報があるぞ! お前たちサキュバス王国に禍を呼び寄せたギルティニアのパラックルは死んだそうだ。愚かにも我らに反逆を企んでいたらしくてな……」

「うるさい!」

「ひぃっ」


 私はコマンドを睨み付ける。大元となった兵の貸し借りは確かにパラックルの提案みたいだった。でも、軍を派遣したのはティワード。そして、アヴァナプタとプロパネ。傘下の中将たち。


「お、お前の望みは何だ? カネか? 国際政府のパトラー=オイジュスに雇われたか??」

「自分の意思だ! 私は仲間の敵討ちにここにきたんだっ!」

「わ、そ、そんなに怒るなっ! そ、そうだ!」

「今度はなに?」

「お、お前たちサキュバスはかつて「サキュバス討伐作戦」を行ったフィルドを恨んでいるんだったな!」

「…………! フィルド……!」

「お前も知っているだろう?」

「…………」


 私の悲劇の始まりはもう6年も前になる。EF2007年の夏。国際政府軍による大規模なサキュバス討伐作戦。私たちのいた要塞は破壊され、仲間は殺された。ピロテース将軍も、友達だった子もみんな……。















 ――EF2005年8月 【コスーム大陸 サキュバス・ポート本部】


 ディオネ女王の実妹であるピロテース将軍。彼女は財閥連合と共謀し、ポート山脈の洞窟を改造し、地下要塞とした。

 その狙いはサキュバスによる世界支配だった。何千年も昔、人間は人間の上位種であるサキュバスによって支配されていた。その世界をもう一度、取り戻す事がピロテース将軍、ディオネ女王の狙いだった。


「サキュバスの世界を再興させることが、我らの使命! 愚かな人間に取って代わるのだ!」


 当時、12歳だった私はピロテース将軍の従者の1人でしかなかった。ポート本部が出来た頃は、仲間も少なかった。

 アポカリプス出身のサキュバスは70名。コスーム出身のサキュバスは123名。僅か193名のサキュバスによる組織だった。

 でも、2年後、その数は1万人にまで膨れ上がった。大半が、コスーム大陸出身のサキュバスだった。そして……。



「いよいよだ。コスームのサキュバス軍1万人。サキュバス王国より10万人の軍勢を持って、国際政府を打倒する。再びサキュバスが世界の覇権を握るのだ」


 ピロテース将軍はいよいよ国際政府に宣戦布告し、世界の覇権を取ろうとしていた。まず、私たちが大陸西南のポート州とレーフェンス州を攻め落とす。その後、サキュバス王国より10万もの大軍を呼び寄せ、大陸南西を拠点に世界を奪い取る作戦だった。

 もし、これが成功していたら、世界大戦は4年早く始まっていただろう。――結局、サキュバスによる世界大戦は始まる事なく終わりを迎えた。



「コマンダー・セイレーン。お食事中に失礼します。ピロテース将軍より、政府軍機を発見した故、直ちに出撃せよとの指令です」


 作戦決行の3ヶ月前、国際政府軍のフィルドがやってきた。



「オイ、死にたくなかったらそこをどけ」


 フィルドの恐ろしいほどの殺意。彼女の瞳に宿る狂気。彼女を一度は捕えた。だが、翌日には政府軍の攻撃。


「せ、政府軍の攻撃です! 上空に10隻の大型飛空艇プローフィビを確認!」


 政府軍の攻撃によって多くのサキュバスが殺された。フィルドはサキュバス軍の幹部たちを次々と殺した。泣きながら命乞いした子もいた。


「いやぁッ!」

「どうなって……!」

「殺さないで! やめて!」

「い、命だけはッ!」


 全く容赦はなかった。逃げ惑うサキュバスを、フィルドは何の情もなく、次々と殺していった。私は、その映像記録を、逃げ延びた後に見た。あまりに酷かった。


「ね、ねぇ! 私、降伏しますッ! な、何でも、するから、命だけは、命だけはぁッ!」


 土下座して命乞いをするサキュバス。彼女は無表情で血の付いた剣で、彼女の背中を刺した。血が舞い、最後のサキュバスも命を散らした。

 私はフィルドの弟子であるパトラーという少女に助けられた。彼女は優しい人だった。でも、他のみんなは……。


 これがサキュバス討伐作戦。私がフィルドに憎悪を持つキッカケとなった悪夢だった。

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