第30話 貪欲な連合政府リーダー
※アレイシア視点です。
【司令艦 大会議室】
私は扉を開ける。いや、私たちだった。司令艦内でクナ、フィルスト、ケイレイトと再会した。3人ともなんとか司令艦まで辿り着けたらしい。
司令艦と軍艦の艦隊は残兵をまとめて、中央大陸へと向かっていた。もはや、軍は壊滅状態。撤収しかなかった。
私たちがここへやってきたのはパラックルを倒す為だった。コマンダー・モルに裏切りをさせ、クローン軍を壊滅させた張本人を倒す為……!
「おお、やっと来たか。敗軍のみじめな将どもが……」
「…………」
「全く、この北伐計画は重要なモノだった。なのに、貴様らがそれをぶち壊した。それだけでない。この連合政府リーダーであるわたしの許可も得ずに、勝手に軍を撤収させる有り様。アレイシア……。責任は、取れるのか……?」
私は剣を引き抜く。悪いが連合政府首都ティトシティまで連れて行く気はない。ここで死んでもらう。私はシリオードで死んだ姉妹の仇を討つ!
「おや、連合政府リーダーのわたしを殺すつもりかな? コマンダー・アレイシア」
「……もう、違う。お前はただの裏切り者だ」
「人を見てから物事を言うべきだぞ…… 反乱クローンSFT-250156」
パラックルは私のことをコードネームで言いながら、ゆっくりと立ち上がる。その目には黒いものが宿っていた。
「コマンダー・モルに裏切りを唆したな?」
「……ああ、あれのことか。わたしはさっき北伐計画は重要だと言ったな? アレに偽りはない。なぜなら、シリオード帝国を勝利に導けば、我らギルティニアに帝国から莫大な資本が提供されるからだ……。ディオネは死に、サキュバス王国は既に滅んだよ。生き残りは奴隷として売りさばく。その売上金は……」
「黙れッ!!」
私は剣を握り締め、カネの亡者に飛びかかる。我慢? してられるか! このクソみたいな男のせいで、私たちは……!
パラックルは振り下ろされる私の剣を腕で止める。大きな金属音が鳴り響く。コイツ……?
「わたしはデスピアやコメット、ララーベルのような愚かに死んだ連合政府リーダーとは違う。わたしはシリオードの将軍と同じ――」
「――パーフェクターか」
私はパラックルから距離を取る。彼の腕は白銀に輝くダイヤモンドとなっていた。
「わたしは、“ダイヤモンドのパーフェクター”! ははははっ、殺せるものなら殺してみよ! 人工の魔女どもっ!」
会議用に使われる円卓のど真ん中に立ち、高らかに笑うパラックル。そんな彼に飛び込んでいく1つの影。クナ――!
「絶対に許さない! モルちゃんだって、お前の誘惑さえなければ!」
クナは超能力でパラックルの上半身と下半身を斬り裂こうとする。だが、高い硬度を誇るその身体には傷1つ付かなかった。
パラックルはクナの腕を掴む。そして、空中に放り投げると、自身も飛び、その腹部に鋭い拳を繰り出す。そこまで筋力のあるパラックルではないが、ダイヤモンド化した拳はもはや武器だった。
クナが円卓の上に叩き落されると同時にケイレイトが飛び出す。鋭い刃を有するブーメランで彼の体を斬り裂こうとする。
「ふん、そんなオモチャでこのわたしを倒そうなど……!」
ブーメランが振り下ろされる瞬間、ケイレイトは空いている手をいきなり突きだす。そこから放たれる紫色の電撃。パラックルはそれを直で喰らい、吹き飛ばされる。背中を灰色の金属製の壁にぶつける。
「ちぃッ!」
パラックルはハンドガンを取り出し、銃口をケイレイトに向ける。連続して発砲する。ケイレイトは素早くシールドを張り、銃弾の勢いを緩める。だが、そのシールドは不十分なものであった。銃弾で体を貫かれる事はないが、大きな打撃となる。
「クッ!」
私は剣を握り、パラックルに向かって大きくジャンプする。突き刺すつもりだった。だが、彼のあまりに硬い身体にそれは無謀というものだった。
パラックルの左胸に剣の先端が勢いよく当たる。それだけだった。刺さってはいかなかった。ダイヤモンドの身体は砕けもしなかった。
「クッ……! その身体を削って売った方がカネになるぞ!?」
「ふっふっふ、わたしはこの身を傷つけるのはごめんなのでね」
「それで私たちやサキュバスを簡単に傷つけるのか!?」
私はもう一度、剣を振り下ろす。激しい金属音が鳴り響く。彼の身体は無傷だった。下手をすると、こっちの剣が砕けそうだった。
「無駄なことはやめたまえ、SFT-250156、通称コマンダー・アレイシア」
そう言うと、パラックルは私にダイヤモンドの拳を繰り出してくる。私はそれを腹部に喰らい、大きく殴り飛ばされる。
私は扉にまで吹っ飛ばされ、背中を強く打つ。それでも、素早く立ち上がる。その時、室内に風が吹き始める。これはケイレイトの……?
「なにをしている? ケイレイト」
「…………」
部屋の奥にいるパラックル。彼に向かって風が吹く。風を起こしているのは私のすぐ側に立つケイレイト。クナも彼女の側にいた。何をしているんだ……?
不意にクナが手をかざす。また超能力か? それとも、魔法攻撃……?
「みんなの仇っ! 喰らえっ!」
彼女の手から真っ赤な火炎弾が飛ぶ。かなり威力の強そうな小型の火炎弾…… あんなものでパラックルを倒せるのか……?
「ふふふ、これならシリオードのカリュプソの炎にも匹敵しそうだが、わたしは倒せない。それとも、部屋の暖房か?」
余裕そうな笑みを浮かべるパラックル。だが、次の瞬間、全く予想だにしなかった事が起きた。一直線に飛んだ火炎弾は、彼の胸に着弾。それと共に彼の身体火が付いた。
「ぐっ!? あぁッ!!?」
苦痛の声を挙げるパラックル。彼は熱され、小さな炎が上がる胸を見て、顔を上げる。その表情には明らかな焦りと苦痛があった。
だが、クナは容赦なく連続で小型の強力な火炎弾を次々と飛ばす。それらは一直線に飛び、パラックルの身体に火をつけ、あっという間に焼き尽くしてゆく。
炎の塊と化したパラックルは苦痛の悲鳴を上げる。だが、それもあっという間に終わりを迎える。彼の胸が爆発し、その身体は円卓から、床に倒れ込んだ。貪欲な連合政府リーダーの最期だった。
「ど、どういうことだ?」
「ダイヤモンドって炭素の塊なんです」
不意に後ろにいたフィルストが声をかけてくる。この作戦は彼が提案したのか……?
「だから、ケイレイト将軍に酸素を風で送ってもらい、魔力の強いクナちゃんに威力を濃縮した強力な火炎弾を撃って貰ったんです。炭素の塊だから、炎に弱いんです」
そう言うフィルストは少しだけ得意げだった。まさか、彼がそんな事を知っていたなんて……。
私は床に倒れたパラックルに近づく。彼の身体は完全に焼け落ち、あるのは灰だけとなっていた。……やっと死んだか。
「クナ、連合政府グランド・リーダーに連絡を。裏切った連合政府リーダー・パラックルを始末した、と」
「了解、キャプテン!」
私は灰に背を向けて歩き出す。パラックルは元々、連合政府議会を荒らす厄介者。まぁ、たぶん、受け入れてくれるだろう。
私たちは戦場となった会議室から出て行く。何十万人ものクローンが死ぬ原因となった“炭素の塊”は灰と化した。だが、それでも、死んだ姉妹は戻っては来ない。
ティワードや連合議会は彼の死と反乱を受け入れるだろう。でも、私たちクローンの命の重みは、永遠に受け入れてくれない。
だから、私はシリオードを滅ぼし、新たなる国を造りたかったのだが……。それは夢となった。もはや、シリオードは望めない。帰る先で、今までと同じようにまた私たちは命を軽んじられるだろう……。
◆パラックル
◇連合政府リーダーの1人。
◇金融連盟「ギルティニア」の代表。
◇実は「ダイヤモンドのパーフェクター」だった。
◇連合政府クローン軍を崩壊させたので、シリオード帝国から莫大な資産が譲渡されるハズだった。




