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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 †狂乱† ――シリオード大陸――
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第28話 後継者亡きシリオード

※前半はクナ視点です。

※後半はアレイシア視点です。

 【東都 南部外部エリア】


「ハハッ! わたしを殺せるかな!?」


 私は衝撃弾を連続で飛ばす。白い魔法弾は、シリオードのエレボスを追尾する。だが、彼は素早く氷の矢を連射し、衝撃弾を爆発させてしまう。

 フィルストを背負って半壊した東都城内から出られたのはよかった。でも、外部エリアで運悪くシリオードの将軍に出会ってしまった(イプシロンやニュクスじゃなかっただけマシ?)。


「1ヶ月半前、あの間道でわたしと戦った人工の魔女だな?」

「へぇ、すごい。よく覚えてたね!」


 私はそう言いながら、超能力を繰り出す。エレボスに手をかざし、上半身と下半身で斬り裂こうとする。でも、彼は氷のシールドを張り、攻撃を防いじゃう。

 ニュクスとは違って、コイツは無敵じゃないらしい。1ヶ月半前もママの電撃攻撃を喰らってダメージを受けていた。そして、今また氷のシールドで私の攻撃を防いでいる。


「死にたくなかった、早く逃げた方がいいよ!」

「それはわたしのセリフではないのかね!?」


 エレボスが手を振る。白く輝く氷のつぶてが舞う。わわっ、ヤバい! 私は地面に向かって衝撃弾を撃つ。爆発。その衝撃を利用して飛び上がる。つぶてが着弾する。その瞬間、鋭い先端を伴った氷の柱が何本も着弾点から勢いよく突き出す。


「ほう、やるじゃないか……!」


 エレボスが感心したようにニヤリと笑う。私は間髪入れずに衝撃弾を飛ばす。飛ぶ先はさっきで来た氷の柱群。6発もの衝撃弾が一斉に爆発する。


「フフッ、どこを狙っている? しくじった、…………ッ!」


 私は爆発によって出来た煙から勢いよく飛び出す。その先にいるのは驚いた表情を浮かべるエレボス。私は彼に向かって超能力を繰り出す!

 血が舞う。エレボスは後ろに飛んだ。彼は硬く頑丈な装甲服を着ていた。その2つが功を奏したみたい。彼は体を大きく斬られるも、死には至らなかった。


「う、ぐぅッ――!」


 後ろに飛んだエレボスは瓦礫に背中をぶつけて倒れる。私はトドメを刺そうと思った。だけど、彼の真上に、機体全身に青色の半透明をしたシールドを張った1隻の小型飛空艇が現れる。シリオードの飛空艇!

 私は素早く超能力でフィルストを引き寄せ、……おっと、勢いよく引きずったら彼の股間が瓦礫にぶつかった! ごめんっ!


「んぐぅ……!」

「もう、起きてよ!」


 私はまだ気絶している彼を背負うと、急ぎ足でその場を離れる。追っては来なかった。たぶん、あそこに転がってるエレボスの救出があるからだろう。

 よかった、殺さなくて。もし、彼が死んでいたら、あの飛空艇は仇討ちとばかりに追って来たハズ。そういう意味ではあの時、エレボスが後ろに飛んだのと、硬くて頑丈な装甲服は私たちにも幸いだった。



◆◇◆



 【東都 西部外部エリア】


「アレイシア中将……!」

「いいから行け!」

「…………ッ! ごめんなさい!」


 そう言って姉妹の1人は私に背を向け、去って行く。さて……。私は後ろを向く。そこにいるのは大勢のシリオード兵とタナトス皇帝。そして、東王カリュプソ。ここの王様だな。


「部下を逃がしたか……」


 車いすのような椅子に座った髭の長い男が低く太い声で言う。豪華でいかにもカネをかけたような装甲服を着ているあの男は間違いなくシリオードの皇帝だ。


「皇帝陛下、お下がりを。危険です」

「そうだのう……。“後継者亡き今”、余が死んではシリオードはおしまいだからな。ゆけっ」

「はっ」


 大勢のシリオード兵が皇帝を守るようにして去って行く。残ったのはカリュプソと僅か数人の兵士だけ。

 まさか皇帝に出くわすとは思わなかった。シリオードの将軍には会うかも、とは思っていたが。……どうでもいいが、後継者亡きってどういうことだ?


「コマンダー・アレイシア。あなたにとっていい情報があるよ。悪い情報もあるけどね」

「ほう、それはそれは」


 私は剣を引き抜きながら言った。悪い情報は大方予測がつく。私とカリュプソが出会ったことだろうな。いい情報は知らないが。


「イプシロン、エレボス、ニュクス。みんな連絡がつかないみたい。イプシロンとニュクスは行方不明で、エレボスは重症。これがいい情報だよ」

「へぇ……。で、悪い情報とは?」

「あなたが私と出会ってしまったこと」


 イプシロンらがぶっ倒れたのは嬉しい誤算だな。実質、指揮官はカリュプソだけだ。あの老いぼれ(=タナトス皇帝)が指揮官としての能力を有しているとは考えにくい。


「なぁ、さっきタナトスの言った“後継者亡き”ってなんだ?」


 私はどうでもいい質問を口にする。これは時間稼ぎだ。負ける気はないが、万が一、負けたらタナトスが軍を率いて戻ってくる。つまり、逃げた姉妹を追撃しに行く。


「実はね、シリオード皇帝陛下には皇太子がいたんだ。それがサルリファス=シリオードという女の子」


 司令艦まで辿り着ければこっちのものだ。軍用飛空艇の技術はこっちの方が上のハズ。シリオード軍の有する小型飛空艇じゃ追いつけはしない。


「時間と空間のパーフェクター。間違いなく最強のパーフェクターだった」


 それはスゴイな。いなくてよかった。ニュクスやコイツ以上の化物が潜んでいたら最悪だ。不謹慎かも知れないが、私は安堵感を得ていた。


「13歳の時、彼女は命を狙われた。国際政府にね。たぶん、国際政府はシリオードが強大化する事を恐れたんだと思う」


 災いの芽を狩るってヤツか。さすが、国際政府だな(私たち連合政府も大概だけど)。


「極秘任務を受けた政府の大型飛空艇プローフィビ1隻がこのシリオードへやって来た」

「んで、殺されたのか?」

「……政府軍はサルリファスの弟サレファトを人質に、降伏を要求した。酷いよね。んで、彼女は弟を助けるために降伏した」


 弟思いな姉だな。私にも一応、弟みたいなのはいる。フィルストだな。アレが捕まったら……ほっとくかもな。おっと、最低か?


「で、処刑された、と?」


 私の問いに彼女は首を横に振る。アレ?


「政府軍の大型飛空艇プローフィビがシリオドアを出発して3日後、その飛空艇は墜落した。墜としたのは――サルリファスだった」

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