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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 †狂乱† ――シリオード大陸――
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第27話 希望

 【東都 外部エリア】


 私のすぐ側で1人のクローンが倒れる。シリオード軍の猛攻。何万という兵士たちによって私たちは“狩られて”いた。


「コ、コマンダー・アレイシア中将! 軍は壊滅状態です!」


 頭から血を流した姉妹の1人が私の側に走り寄り、報告する。そんなことは分かってる。誰がみてもこれは壊滅状態だ。


「ケイレイト将軍、コマンダー・モル少将、コマンダー・クナ少将、コマンダー・フィルスト少将、コマンダー・ログ少将とも連絡が取れません!」

「…………」


 ケイレイトはコマンダー・ログことフィルドと戦っている。コマンダー・モルは裏切り者だった。クナとフィルストはその裏切り者を勝手に追っている。

 このクローン軍を指揮する者は誰もいない。各兵がバラバラに戦っている。今更、私が指揮したところで、もう纏めることは出来ない。集団戦の経験が少ない私たちクローン軍はパニック状態だ。


「いやぁッ!」

「助けて助けて助けて!!」


 悲鳴が響く。姉妹が次々殺されていく。私は彼女たちを助けられない。私が行ったところで私も同じように殺されるのがオチだろう。

 私はぐっと拳を握りしめる。終わりだ、もう。シリオード軍は東都を完全に包囲している。4人のパーフェクターを筆頭に猛攻撃をかけている。


「ア、アレイシ、アしょ……」

「…………!」


 私の側に全身を焼けただれさせた姉妹がフラフラと歩み寄ってくる。全身火傷。服は辛うじて下着が纏わせているだけだった。「大丈夫か?」とはとても言えなかった。彼女はもう致命傷だ。助かる見込みはない。


「帰り、たい……」


 かすれた声でそう言うと、そのクローンは倒れる。私は慌てて彼女を抱きかかえようとした。……彼女は死んでいた。

 彼女の最期の言葉が“帰りたい”。ティトシティに……? 私はふと思った。もう、このシリオード大陸に来て2ヶ月がすぎた。サキュバスの一件はどうなっただろう……? ティワードは? セイレーンは……?

 そう思った時だった。ある事が、私の頭に電撃が走ったかのようにひらいた。


「そうだ、帰るんだ」

「えっ?」

「撤収だ……。撤収するんだ!」


 私は素早く立ち上がる。そうだ、まだ終わりじゃない。撤収するんだ! このシリオード大陸からティトシティに!

 私は側にいたクローンの手を引いて走り出す。それとほぼ同時だった。東都城の最上階が凄まじい轟音と共に爆発する。建物の上部が吹き飛び、全体に大きく亀裂が入る。一部が崩れ出す。


「アレイシア中将、今のは!?」

「構うな! 急ぐぞ!」


 もうシリオード軍はすぐ側まで迫っている。グズグズしていたら、やられる! 私は降ってくる瓦礫を避けながら走る。撤収する為に……!



◆◇◆



 【東都 下層フロア 廊下】


 私は気絶したフィルストを引きずる。さっきのよく分からない爆発は助かった。あのフロア全部が崩れたおかげで何とか逃げ出せた。

 シリオード兵はたぶん全員死んだと思うけど、ニュクスはきっと生きている。あの光のパーフェクター、どうやって倒せばいいんだろう?

 私はそんなことを考えながら、フィルストを背負う。ほぼ同い年の男の子を背負うのは初めてだな。重くないのが幸いだった。


「っと、どうしよう……。どこ行けばいいかな……?」


 ママとキャプテンのいるカリュプソ御座まで戻るべきかな……? でも、ここからじゃ遠すぎる。それに、フィルドもいる。……東都外部に止めてある司令艦がよさそうだな。あの大型飛空艇を動かして戻れば、戦況が逆転するかも知れない。


「よしっ」


 私はフィルストを背負い直し、半ば急ぎ足で暗く埃と塵の蔓延する廊下を歩いて行く。辺りには瓦礫ばかり。天井や壁が崩れていた。

 ママ、無事かな……?



◆◇◆



 【東都 上層フロア】


 私はゆっくりと立ち上る。まだ意識がもうろうとする。全身が痛い。……痛いという事はまだ生きているんだな。あの爆発で死んだかと思ったけど……。

 私は腰に触れる。砕けたブーメランが1つだけ残っていた。あの爆発で他のブーメランはどこかに吹き飛ばされてしまった。

 フィルドはどうなっただろう? イプシロンは? 毒液に火をつけて爆発させたフィルド。毒液の塊のような女だったイプシロン……。イプシロンは全身起爆して死んだかも知れない。


「クッ……」


 私は歩き出す。全身の痛みを堪えて。行き先は……司令艦がよさそう。この建物は半壊。シリオード軍もなだれ込んできている。守りきれない上に、守るべき建物でもなくなってしまった。例え、守り抜いても、次の攻撃で陥落。だから、ここは司令艦にまで戻ろう。

 クナやコマンダー・アレイシアはどうなったんだろう……? 無事でいて欲しい。あの女のクローンだけど、中身は違う。アレイシアはアレイシア。クナはクナだ。


 私は歩き続ける。壁に開いた穴や亀裂からは、風が吹き込む。風と共に爆音と女性の悲鳴が聞こえてくる。

 シリオード4人のパーフェクター。私もパーフェクターだ。でも、実力はあっちの方が上らしい……。それでも、私は戦う。クナや私の部下を守る為に……!

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