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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 †狂乱† ――シリオード大陸――
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第25話 狂乱

 【東都 カリュプソ御座】


 数日後、イプシロンとコマンダー・レイの人質交換が行われた。シリオード軍にイプシロンを引き渡し、レイを引き取った。

 レイは酷い状態だった。四肢を切り落とされ、もはや精神もボロボロ。私と一緒にいたケイレイトが駆け寄っても、ほとんどあまり反応を示さなかった。


 そして、今。私、ケイレイト、コマンダー・モル、コマンダー・ログ、クナ、フィルストでベッドに乗せられたレイを取り囲んでいる。

 さて、スパイを引きずり出さないと、な。そのために彼女を取り戻したんだ。


「レイ、口は利けるか?」

「…………」


 彼女はしばらく無言だったが、小さく頷く。レイは割と元気なヤツだったんだがな……。それがここまでボロボロになるなんて……。

 私は剣を引き抜く。全員が驚いたような表情を浮かべる。私は僅かに震える手で剣を握りしめる。いよいよだな。


「――レイ、この中にスパイがいるだろ?」


 私は覚悟を決めて言った。本当はいてほしくない。だが、現実は残念なものだ。スパイがいることは間違いない。その証拠に昨日も誰かがメモリーカードを触っている。


「スパイ? どういうことですか? コマンダー・アレイシア閣下」


 コマンダー・ログが近づいてくる。私は素早く彼女に剣の先を向ける。彼女は動揺しながら、立ち止まる。


「近づくな、ログ。私は、お前が一番怪しいと思っているんだ」

「ロ、ログ!?」


 近くにいたフィルストが慌てて彼女と距離を取る。距離を取られたログは……意外と冷静だった。決まりだな。


「私がスパイ? ははッ、笑わせるな、コマンダー・アレイシア」


 何を開き直ってんだコイツは。急に態度を豹変させつつも、未だにスパイであることを認めないコマンダー・ログ。そんな彼女を見ながら、私はそっと自分自身にキャンセル・シールドを張る。いきなり超能力で斬り殺されるのはごめんだからな。


「何の証拠があるんだ?」

「昨日、データを引き抜いただろ?」

「知らんな」

「コマンダー・レイ、コイツがスパイだろ?」

「…………」


 レイは相変わらず、無反応だった。頬に涙を伝わせているだけだった。


記録ログを調べれば分かるさ。なぁ、コマンダー・ログ」

「ああ、そうだな。私がスパイじゃないことがな」

「まだシラを切るつもりか?」

「……ずいぶん、鈍いクローンだな」


 何を言ってるんだ、コイツは。どこまでも頑なに認めないとは。バレたくなければ、その態度をやめればいいだろうに。もっとも、もう遅いのだが。

 その時だった。コマンダー・ログがいきなり飛びかかってきた! あまりに突然のことで私はつい反応が遅れた。彼女は私を掴み倒す。


「う、うわっ、離せ!」

「動くな」


 コマンダー・ログは私の首にナイフをそっと押し当てる。キャンセル・シールド張ってるから意味はないのだが……。


「ケイレイト、クローン・データを調べてみろ」

「えっ?」

「“コマンダー・ログ”というクローンを調べてみるんだ」


 ……は? コマンダー・ログは何を言っているんだ? それで自分の無実を証明できるとでも思っているのか?

 ケイレイトは薄いパネルのコンピューターに触れる。しばらくコンピューターを操作していたが、やがて、手を震わせながら、こっちを向く。


「コマンダー・ログ……?」

「ママ?」

「……データがない」


 は!? データがない!? なんで!?


「はっはっはっ! 鈍感なクローンだな! 私が誰かまだ気がつかないらしい!」


 不気味な笑みを浮かべながら、そう言うと言い放つと、私の身体を持ち上げ、ケイレイトの方に投げ飛ばす。私はケイレイトとぶつかり、2人して床に倒れ込む。


「な、何を言ってるんだ、アイツ……! データを消したんじゃないのか!?」

「ハハハハハ! そんな鈍い頭でよく連合軍の中将が務まるな!」


 そこまで言うと、コマンダー・ログは急に真顔になる。その目には何か黒いモノが感じ取れた。この時になってようやく私は彼女の正体が、なんとなく分かった。ああ、最悪だ。スパイよりもたちの悪いのが紛れていた。


「いい加減、気がつかないか? 私は――」


 なぜ、気がつかなかった。コイツ、私を見張っていたのか……!


「お前たちクローンのオリジナル――フィルド=ネストだ」


 私のオリジナルは、私たちを睨むようにして言った。狂気の殺戮騎フィルド。最悪だっ……! この女は連合政府を憎んでいる。――私たちのオリジナルはかつて、実験台にされていた。その実験を得て生み出されたのが、私たちクローン……。


「……い、た……」

「…………?」


 ふと私は呻くような声が聞こえ、そっちに目をやる。声の主はコマンダー・レイだった。彼女は今までのような死んだ目をしていなかった。憎悪と狂気を含んだ目で、どこかを睨んでいた。


「コマンダー・レイ?」

「……おまえ、どこに、いた?」


 どういう意味だ? 私がその言葉の意味を考えようとしたよりも彼女がその言葉を発したのは早かった。


「“コマンダー・モル”! あの時、私と一緒に左の道を進んだ時、どこにいたんだ! 私たちがシリオードのニュクスに襲われている時っ、どこで何をしていたんだ! 指揮官の私はアイツに狙われた! お前はなぜ狙われなかったッ! この裏切り者ッ!」

「…………!?」


 コマンダー・レイは狂気的な目をしながらコマンダー・モルに向かって言い放つ。一方のコマンダー・モルはその表情を強張らせていたが、すぐに元に戻る。そして、薄気味悪い笑顔を浮かべる


「……そっか、分かっちゃったんだ、レイちゃん」


 それだけ言うと、すっと顔を上げる。その目にも狂気が宿っていた。


「私は、私は奴隷でいたくないっ! 平和な、普通の暮らしが欲しいんだっ! クローン軍を崩壊させれば、私を人間にしてくれる! 約束してくれたんだ! タナトス皇帝と“パラックル代表”が!!」


 パラックルだと!? あの男は連合政府リーダーの1人じゃないか! ――そういえば、3手に分かれて進軍する、と最初に言ったのはパラックルだったな。あの男がモルを使って……。クソッ!


「レイとモル? ハハッ、聞いた事ある名前だな。なぁ、ケイレイト?」


 今度はフィルドが喋り出す。……ああ、なんかまたイヤな予感がしてきた。モルとレイ。2人はケイレイトの部下。名前の元ネタは自分の大切な元部下。フィルドに殺された部下の名前!


「……よく覚えていたね。殺戮騎フィルド。そうだよ。コマンダー・モルとコマンダー・レイはあなたに殺された友達の名前っ!」


 そう言うと、ケイレイトはブーメランを握り締め、フィルドに飛びかかる。フィルドは白い尾を引く白色の衝撃弾を何発も飛ばし、一斉に爆発させる。何度も爆音が鳴り響く。

 爆発と同時に発砲が鳴り響いた。見れば、コマンダー・モルがコマンダー・レイを射殺していた。銃弾を喰らったレイは血を吐きながら、床に倒れる。

 そして、レイはカリュプソ御座から飛び出す。彼女を追うのはクナとフィルスト。


「ハハッ、ケイレイト、強いじゃないか! ハハハハハ!」

「黙れっ! お前を八つ裂きにしてやる!」


 いつもの優しそうなケイレイトはどこへ消えたのか、強い言葉を発しながら戦いを始める。ク、クソッ、あいつらこんな所で戦うな!

 その時だった。建物が激しく揺れる。な、なんだ!? これ以上、めんどくさいことが起きなければいいんだけど!

 私は御座の窓ガラスから外を見る。……ああ、これは本当にマズイ。


[て、敵襲です! シリオード軍が一斉に攻撃してきました! 指揮官はシリオードのタナトス皇帝を筆頭に四王の、えっ、やだ、やめっ――]


 シリオード全軍による総攻撃だった――!

◆フィルド=ネスト

 ◇コマンダー・ログの正体。

 ◇かつて連合政府によって実験台にされた女性。

 ◇連合政府の施設から脱走後、傭兵をしながら生活していた。

 ◇「復讐に燃える赤い夢」の持ち主。

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