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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 †虐殺† ――アポカリプス大陸――
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第23話 パラディンの槍

※前半はプロパネ視点です。

※後半はセイレーン視点です。

 【司令艦 艦橋廊下】


 俺は最高司令室に通じる扉を背に、廊下の先を立つ“怪物”を見ていた。灰色の肉体をした大男が立っていた。白に近い灰色の頭部にある赤い瞳が俺を捉える。見るものを威圧する筋肉質な肉体を持つ怪物。どこから入り込んだ……?


[閣下、攻撃しますカ?]


 側のバトル=パラディンが聞いてくる。そうだな、先制攻撃も1つの手。それに、どのように攻撃してくるかも見ておきたい。よし、ここは――。

 だが、動くのは怪物の方が先だった。拳を握りしめ、こっちに突っ込んでくる! ヤバい!


「殺せ!」

[イエッサー!]


 2体のバトル=パラディンは電撃を纏った槍をぐるぐる回しながら、走り出す。バトル=パラディンは硬い鋼の鎧を纏った高性能戦闘用軍用兵器だ。簡単にはやられない。

 だが、怪物は片方のバトル=パラディンの槍を掴み、そのまま軽々と後ろに放り投げる。なんてヤツだ。そこそこ重量はあるぞ!?


[破壊セヨ!]


 もう1体のバトル=パラディンが電撃を纏った槍の先端で怪物の脇腹を突き刺す。どうだ? いくらなんでも……。

 怪物は平気そうな顔で槍をへし折る。そして、そのバトル=パラディンの頭を拳で殴り壊す。な、なんて力だ! バトル=パラディンの頭部も鋼だぞ……!?


[攻撃セヨ!]


 後ろに投げ飛ばされたバトル=パラディンが怪物の後ろから槍を突き刺す。怪物は勢いよく振り返る。槍をしっかりと握っていたバトル=パラディンは振り投げられる。

 怪物は槍を引き抜かず、床に倒れ込んだバトル=パラディンを勢いよく踏み壊す。それから槍を引き抜いて捨てた。


「クッ……!」


 見た感じ、物理攻撃のみだけだような。魔法まで使われたらやっかいだったが、そこは大丈夫そうだ。勝機はある!

 俺はクナイを2本握り、それを投げつける。2本のクナイは真っ直ぐと飛び、怪物の腹に軽く刺さる。筋肉がありすぎて、なかなか刺さらないのだろう。でも、刺されば充分だ。

 爆発。2つのクナイは爆発し、怪物は吹き飛ばされる。死んだか?


「…………!」


 怪物は煙の中から勢いよく現れる。その大きな手は俺の首を掴み、軽々と持ち上げる。く、苦しい! 息ができない……!

 だが、怪物には知能がなかった。最高司令室へと通じる扉に向かって、俺を思いっきり投げ飛ばした。投げ飛ばされた俺の体は最高司令室へと通じる扉を壊す。全身がバラバラになりそうな痛みが走る。あのまま首を絞められていたら窒息死していたな。危なかった……。


「クッ……!」


 俺はフラフラになりながら立ち上がり、最高司令室へと下がる。あまりこの部屋で暴れられると困るのだが……。

 怪物が走って来る。それとほぼ同時だった。廊下の奥にあるエレベーターの扉が開く。――アヴァナプタ!?


「プロパネっ!」


 アヴァナプタは鉄扇を引き抜きながらこっちに向かって勢いよく走り、怪物の近くまで来ると、大きく飛んでヤツの背中を斬り裂こうとした。だが、怪物は腕を振り上げ、彼女を殴り飛ばす。投げ飛ばされた彼女は硬い鉄の壁に背中をぶつけて倒れる。


「アヴァナプタ!」


 俺は彼女の元に駆け寄ろうとする。そんな俺を怪物は容赦しなかった。鋭い拳が俺の腹部を突く。俺もまたアヴァナプタと同じように殴り飛ばされる。広い最高司令室の空間に孤を描きながら、奥のガラスにまで突き飛ばされる。


「がっハッ――!」


 ガラスに叩き付けられた俺は、最高司令室の床に落ちる。怪物が最高司令室に入り、上段から俺のいる下段にまで飛び降りてくる。

 俺は力を振り絞り、その場から素早く離れる。怪物がそこに飛び降りた。俺がいた所に。踏み殺す気だったか?


「喰らえぇっ!」

「…………!?」


 アヴァナプタがバトル=パラディンの槍を手にして飛び込んでくる。怪物が振り向いた瞬間、電撃を纏った槍がその口に深々と刺さった!

 口に電撃を纏った槍を喰らった怪物はその場で激しく悶え、転げまわる。低く、腹に響くような雄叫びを上げながら悶絶する怪物。

 俺は電撃を纏う刀を引き抜き、怪物の胸に突き刺す。更にアヴァナプタが、槍を引き抜こうとする怪物の腕に鉄扇を深々と突き刺し、一気に広げる。怪物の腕が内部から斬り裂かれ、床に転がる。

 怪物は、それでもしばらく悶えていたが、遂に力尽き、倒れた。


「や、やった、か?」


 俺が立ち上ろうとした時だった。左の脇腹に凄まじい痛みが走り、その場にうずくまる。ク、クぁっ……! やっぱり、骨をやられたか……!


「プロパネ!? 大丈夫っ!?」

「あ、あぁ…… クぅっ……!」


 アヴァナプタが俺の側に駆け寄る。駆け寄りながら、近くのバトル=コマンダーに手で合図を送る。たぶん、衛生隊を呼ぶように言ったのだろう。


「ごめん、来るのが遅れたせいで……。もっと私が早く来ていれば――」

「そ、そんなことない。お前が来るのが早かったら、怪物を倒せなかったかも知れない。タイミングってのが、あるんだ……」

「でも、もっと早く来ていれば、無傷で勝てていたかも知れない!」

「パラディンがやられる、前に来てたら、お前は槍を取るタイミングが、なかった、さ」

「プロパネ!?」


 あまりの痛みで、意識が薄れていく。


「サキュバス王国、で俺はお前を、救った……。今、お前は俺を、――。貸し借りなし、だ……」

「プロパネ!? プロパネ、イヤだ! 死なないでッ!」


 バカ、心配しすぎだ、コイツは……。

 消えゆく意識の中、最高司令室の扉から入ってくる緑の肩当てに白い装甲服を纏った身長がそこそこ高いゼリーの塊を俺は見た。デザート=ベータ。衛生隊員、だな……。



◆◇◆



 【アポカリプス大陸 サキュバス王国 深淵の森】


 私は足を引きずるようにして深い森を歩く。テティス? 殺されたよ。ミュータント・インキュバスに。あの後、ミュータント・インキュバスは連合軍の司令艦に乗り込んでいった。アヴァナプタとプロパネを殺してくれれば嬉しい。

 みんな、みんな殺された。連合政府の殺戮軍団に。生き残った仲間はみんな連れて行かれた。ああやって、連行して奴隷にするんだ。


「許さない……」


 連合政府への憎しみ。私から仲間を根こそぎ奪った彼らへの憎悪。ティワード、アヴァナプタ、プロパネ、――。みんな、殺してやる。連合政府をぶっ壊して、何もかもメチャクチャにしてやる。許さない。

 私の目の前にある小型の飛空艇。この大陸に来るときに使ったヤツだ。もう一度、ティトシティに行き、今度こそティワードを殺す。いや、ティワードだけじゃない。アヴァナプタやプロパネを始め、他の連合政府リーダーを全員、皆殺しにしてやるんだッ!


 私は頬に伝う熱い涙を拭い、小型の飛空艇に乗り込む。復讐の果ての終焉。連合政府を終わらせてやる――!

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