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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 †淫魔† ――アポカリプス大陸――
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第1話 吸精の魔女

 遥か南――。


 深く暑いジャングル。


 そこに半裸の“彼女たち”は住んでいた。


 怪しい美しさを持つ魔物。


 男を誘惑し、精を喰らう魔物たち。


 その名は、サキュバス――。




































 私はフラフラと深く暗い森を歩く。ボロボロの服を纏って。

 ――苦しい。暑い。痛い。あと少し。大丈夫。あと少しで――。

 その時、木の上から人影が飛び降りてくる。胸と腰に布を巻いた半裸の若い女性だ。やっと、会えた。仲間たち、だ。


「……女か」

「誰だ、あんた?」

「あたしらの世界に誤って踏み込んだのか?」


 彼女たちは、意識が今にも消えそうな私に弓を向けてくる。鋭い矢じりが私の額を狙っていた。私は最後の力を振り絞って吐くように言った。


「私も、同じ生き物……。助けてッ……」


 私の身体は土と草の生えた暑く湿った地面に倒れる。意識が遠のいていく。さっきの3人が私の上半身の衣服を剥ぐ。


「ああ、ホントだ。羽がある。紫色の」

「一応連れて行くか」


 彼女たちの会話が耳に入る。意識が深い闇へと消えていく。両手を引っ張られ、どこかに引きずられていく。助けて、くれるかな……。



 私も彼女たちもサキュバス。人間とは少しだけ異なる生き物。人間男性を襲って精を搾り取って、それで魔法を使ったり、生活のエネルギーにする。

 それが、人間は気に喰わないらしく、北の大陸では討伐された。大勢の人間が、私たちを殺した。小さな子供さえも殺された。私も友を殺された。


 私は生き延びた。服で背中から生える二枚一対の羽さえ隠せば、何ら人間女性と変わらない。羽を隠し、北の大陸で生きていくつもりだった。

 だけど、討伐という名の虐殺から何年もたったある日、私はついに見つかった。私を見つけた「連合政府」は、私を拷問し、奴隷にした。


 私は隙を突いて逃げ出した。連合政府の実験体と共に。だが、1つだけ問題があった。その実験体はかつて私の仲間を殺しまくった人間だった。私は実験体に復讐を果たした。彼女を殺したんだ。

 そして、苦難の果て、北の大陸から南の大陸南部にあるサキュバスの地に戻った。たくさんの仲間がいるサキュバスの聖地に――。





「…………ッ!」


 私はゆっくりと目を開ける。天井は真っ暗だった。……洞窟だ。紫色の炎に照らされるサキュバスの聖地。サキュバスの洞窟。私はそこの一室に入れられていた。

 ゆっくりと立ち上がる。まだフラフラする。それでも、行かないと…… 洞窟のざらざらする地面に足をつけてようやく気がついた。衣服を脱がされていた。腰巻きだけの姿になっていた。


「気がついたんだ?」

「…………!」


 すぐ隣から声がかけられる。茶色のショートヘアーをしたサキュバスがいた。彼女も森で出会ったサキュバスと同じく腰と胸だけに布、という格好をしていた。


「あたし、テティス。君は?」

「……セイレーン」

「ふぅん。あの服装、北のコスーム大陸にいたんでしょ?」


 私は無言で頷く。ここに来た時に来ていた服は灰色と黄色のラインが入った長袖の服。同色のズボンに黒い靴下とブーツだった。


「コスームは“餌”はいっぱいいるケド、あたしたちが生きていく世界じゃない。餌が多すぎて負けちゃうのよね」


 テティスは苦い笑みを浮かべながら言う。

 その通りだった。女性指揮官率いる大勢の人間によって、仲間はほとんど殺された。あの日のことは忘れない。


「でも、ここは安全だよ。こんな未開の地に人間はやってこないからね」

「…………」


 口にはしなかったけど、テティスの言っていることは間違っている。来ようと思えば来れる。北の人間たちは貪欲だ。いつかこの南の大陸にまでやって来る。それだけの技術と力は充分にある。……戦争に明け暮れている内は無理だと思うけど。

 コスーム大陸では2年半ぐらい戦争をしていた。これまで大陸全土を支配してきた国家――「国際政府」。その巨大統治機構に逆らう勢力が現れた。それが連合政府。2大勢力は勝ったり負けたりを繰り返しながら、今日まで戦い続けていた。


「女王はどこに?」


 私は話がひと段落したところでテティスに聞いた。

 この国のサキュバスを統べる女王――ディオネ。私がここまでやってきたのは、彼女の会いに来たのもあった。目的の半分はそれ。残りの半分は故郷に戻りたかったからだ。


「んー、確か外出中だったかな? たぶん、今日中には戻ってくると思うけど、なんで?」

「……伝えなきゃいけないことがあるんだ」


 私は強い決意を胸に抱きながら言った。もう、二度とあの悲劇は繰り返さない。これ以上、人間に仲間を殺されるのはごめんだ。それを何としてでも防がなきゃならない。それが、6年前の虐殺で生き延びた私の使命なんだ。


「戻ってくるまで、さ」

「…………?」

「“一緒に食べない”?」


 私と一緒に、青色の炎に照らされる洞窟を歩いていたテティスは突然立ち止まる。怪しげな笑みを浮かべて言った。舌なめずりする。ああ、そっちの食べるか。


「吸精……しない? 私の、分けてあげるよ」

「……いいの?」


 基本的にサキュバスのルールだと、捕まえてきた男性にまたがって吸精する権利があるのはそのサキュバスだけ。他のサキュバスのを奪って吸精するのは厳禁だ。

 私はテティスに手を引かれ、洞窟内にある1つの洞穴までやって来る。中に入ると、そこには浅黒い肌をした男性が2人いた。2人ともやせ細り、何も言わない。


「右の餌、分けて上げる」


 テティスは私の腰巻を剥ぎ取ると、自身も胸と腰の布を取り払い、全裸になる。美しい身体をした彼女は、左の男性を抱き締めて彼の唇に自身の唇を合わせる。


「ほら、遠慮しなくていいからさ」

「……ありがとう」


 私は一言そう言って右の餌の脚に自身の脚を絡め、テティスと同じように彼の口内に自身の舌を入れた。吸精も久しぶりだった。

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