第18話 繰り返される悲劇
※セイレーン視点です。
【サキュバス王国 司令艦付近】
私は唇を噛み締める。待っていたのはアヴァナプタとプロパネ。ケイレイトはいなかった。アイツらは自分自身の為に他人をも殺すヤツだ。
「セイレーン、久しぶり。あんたと会うのはどれぐらいぶりかな?」
「アヴァナプタ……」
アヴァナプタ。蒼い装甲服に蒼いマントを身に着けた女。連合軍将軍の1人。私はぎゅっと拳を握り、彼女に向かって走る。アレは手柄の亡者だ。殺すしかない!
アヴァナプタはニヤリと笑う。懐から素早く蒼い鉄扇を取りだす。彼女の武器だ。先端が尖り、広げて使うと鋭い刃物となる。
私は魔法で紫色をした半透明の剣を作り出すと、それを大きく振りかぶり、連合の女将軍を叩き切ろうとする。だが、彼女は鉄扇で私の剣を防ぐ。金属特有の音が鳴り響く。
「フフフ、たかが元連合軍中将のあんたが、私に勝てると思ってるのか!?」
「私はもう繰り返さない。人間に仲間を殺させないよっ!」
あの時の悲劇が頭を横切る。政府軍によって多くの仲間が殺された。人間は私たちを魔物と区分し、皆殺しにした! この女も、同じように私たちを――!
私は剣を振り上げ、何度も振り下ろす。彼女は両手に持った蒼い鉄扇を広げ、私の斬撃を何度も受け流す。だが、彼女は徐々に後退していく。私の方が押していた。
何度も剣を激しく振り回し、アヴァナプタを斬り殺そうとする。彼女の右手に持った鉄扇を弾き飛ばし、更に間髪入れずに剣を振り下ろす。剣の先端が、彼女の頬をかする。
「クッ……!」
「トドメだ!」
私は大きく剣を振り上げる。これで終わりだ! だが、その時、アヴァナプタは大きな声で叫んだ。
「この女を殺せ!」
「…………!」
周りのバトル=アルファとバトル=ベータが一斉に銃口を私に向け、射撃してきた! 私は慌てて物理シールドを張る。
その時、アヴァナプタは折りたたんだ鉄扇を繰り出す。鋭い先端が私の腹部を狙っていた! 私は間一髪、剣でそれを防ぐ。
「みんな、セイレーンを助けるんだ!」
「連合軍をやっつけろ!」
テティスやアルテミスに率いられた、たくさんのサキュバスが一斉に突っ込んでくる。ここに両軍入り乱れての大乱闘になる。だけど、最新鋭の機械軍とサキュバス軍。勝敗は決まっていた。
「全部隊、魔女を一掃せよ!」
戦車に乗った連合軍中将の男が叫ぶ。また顔見知り。アクセラ中将だ。彼の号令の下、艦内から次々とバトル=アルファやバトル=ベータ、更には小型空中戦闘機バトル=デルタやバトル=スカイまで現れる。
無数の黒い機械兵器軍団が仲間を殺していく。黒い軍団は無情に仲間を殺す。私は歯を噛み締める。私のせいで……!
「絶望か? だが、これが生存競争だ。セイレーン」
私の目の前まで戦車を進めてきたアクセラは勝ち誇ったような顔で言う。私はその場に膝を着く。周りは仲間の悲鳴と血の臭いで満ち溢れていた。その時、私の側で誰かが倒れる。
「……に、逃げ、ろっ……!」
「…………!」
そこにいたのはアルテミスだった。片腕がなくなっていた。見れば蒼い鉄扇を真っ赤にしたアヴァナプタがそこにいた。彼女は次々と襲い掛かって来るサキュバスを相手にしていた。
アルテミスはそれだけ言うと、そのまま息絶える。力を失い、その場で動かなくなった。命が消えた。サキュバスの……。
「ふん、魔物がまた1人死んだか」
「…………!」
アクセラが軽く言う。私はその言葉が耳に入ると同時に持っていた剣を彼に向かって投げつけた! 剣は勢いよく飛び、愚かな中将の肩を貫いた。
私はトドメを刺そうと、戦車の上まで飛ぶ。だけど、アクセラを守る騎士型護衛ロボット――バトル=パラディンは私の槍で肩を貫く。
「ぐぅッ!」
銀色の鎧で覆われたバトル=パラディンは槍をぐるぐる回し、私の頭を貫こうと、大きく振りかぶる。だが、その身体が突然、弾き飛ばされる。
「…………!?」
「セイレーン、逃げよう!」
テティス! 彼女は空中から弓でバトル=パラディンを勢いよく射た。私は肩の痛みに耐え、空に飛び上がる。
「ひとまず聖地に……」
「ダメっ! 聖地はもう――」
私は聖地の方を見る。そこには球状をした2隻の大型飛空艇が着陸していた。コア・シップだ。1隻で1万体もの軍用兵器が載せられる大型飛空艇だ。
コア・シップから出ていく無数の軍用兵器。彼らが火を放ったのだろうか? 聖地はすでに炎上していた。
「ひとまずサキュバス王国中央から離れよう」
「……分かった」
私とテティスはまだ連合軍の勢いが及んでいない遥か遠くの森へ行こうと思った。そこまで行けばまだ他のサキュバスがいる。体制を立て直せる!
煙と火の粉が舞い上がるサキュバス王国の上空を飛んで逃げようとした時だった。突然、連合軍のガンシップが現れる。左右にプロペラを持つ黒い機体の戦闘ヘリだ。
「マズイ、一回森に隠れよう!」
テティスに先導され、私たちは赤い炎の上がる森へと身を潜める。ガンシップはそのまま素早い動きで通り過ぎていく。でも、その時だった。
「…………! セイレーン!」
後ろにいたテティスが叫ぶ。私は素早く後ろを振り返る。その時、木から次々と機械兵が飛び降りてくる。その手にはアサルトライフル!
「バトル=メシェディっ!」
バトル=メシェディはバトル=アルファやバトル=ベータよりも機動性が高く、柔軟な動きが可能な軍用兵器だ。私は慌てて魔法で6体ものバトル=メシェディを吹き飛ばそうとする。だけど、――。
「や、やだぁっ! セイレーン、助け、――!」
「――――ッ!」
バトル=メシェディの持つアサルトライフル。その銃口から放たれた鉛が、彼女の身体を貫いた――!
「――――!」
私は、また友達を守れなかった――……。




