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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 †人造† ――シリオード大陸――
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第15話 コマンダー・アレイシアの黒い夢

 私は大きくジャンプし、空中に浮かぶ怪物を大きく斜めに斬りつける。反撃のチャンスを与えず、何度も素早い動きで斬る!


「痛くなったらいつでも降伏しろっ!」


 着地しながら私は言う。当然、イプシロンは降伏しない。言うだけ無駄だな。コイツを降伏させるのは至難の業だ。殺した方が早い!

 イプシロンは大きな鋼の腕を振りかぶる。鋭い爪が私を狙っていた。その爪からは毒が染み出していた。私はそれが振り下ろされると同時に跳ぶ。その腕を踏み台にし、黒い鋼の頬を斬り付ける。一方、地面には大きな斬り痕が出来ていた。そこからは煙が上がる。猛毒のようだ。


「毒も当らなきゃ意味がない!」


 私は彼女の身体を何度も斬る。彼女も反撃する。だが、大きな腕と手じゃ小さな私をなかなか攻撃できない。今の彼女には機動力が欠けていた。さっきのゼリーの時の方がまだ厄介だったな。

 毒の怪物は次第に動きが遅くなってきた。身体の至る所から血が流れ出ていた。硬い身体の装甲にヒビが入っていた。


「痛いか? 降伏してもいいんだぞ?」


 爪が振り下ろされる。私はそれを剣で防ぐが、押され、地面に叩き付けられる。イプシロンは爪で地面に転がった私を突き殺そうとする。私は素早く避ける。爪は地面に刺さる。私は剣でその爪を斬る!


――クッ……!


 爪というより、指なのだろうか? 血を垂らしながら、彼女は苦しそうな声を上げる。私は構わずに彼女の腹部を大きく斬る。腹部から胸へ。胸から首。首から顔。次々と斬っていく。

 私は着地する。その時、怪物は口を大きく開け、紫色のゼリーを飛ばす。それは信じられないようなスピードで、まるでバルカン砲のごとく飛んでくる。


「きゃああっ!」

「痛い!」

「あぐぅっ!」


 無数の毒弾の雨は周りのクローンを撃ち倒していく。私は素早くシールドを張り、攻撃を回避しようとした。だが、数秒の差で毒弾の1つが左腕を貫いた! 撃たれた左腕に鋭い痛みと、焼けるような感覚が広がる。毒か……!


――1発でも当たれば致死の猛毒よ? さようなら、アレイシア。あなたは人工の魔女にしてはよくやったわ。


 うるさい! 私は最後の力を振り絞って黒い怪物の元に跳ぶ。油断していた彼女はさっき弾丸の雨を飛ばしていた口をまだ僅かに開けていた。その中に、ハンドボムを放り込む。ハンドボムはイプシロンの腹の中で爆発した。口から煙が上がる。

 私はヘリポートに倒れ込む。毒が全身に回ってきたらしい。頭痛と高熱が身体を襲う。ま、まさか、私はここで死ぬのか……? そんな、こと……! 私は自身に解毒魔法と回復魔法を浴びせる。

 その時、口から大量の血を垂らしながら、怪物が腕を振り上げる。ああ、ヤバい……!


――死、ね……!


 怨みと憎しみの籠ったテレパシー。腕が振り下ろされようとしたとき、突然、イプシロンの顔に何かが当たって爆発した。今のは、ロケット弾……!?

 私は飛んできた方向を見る。そこにいたのは1人のクローンだった。彼女は煙の上がるロケットランチャーを持っていた。さっきの攻撃で私と同じように解毒魔法と回復魔法を使って耐え伸びたのだろう。


「だ、大丈夫ですか、コマンダー・アレイシア中将……」

「すまない、助かった」


 私は笑みを浮かべながら言った。今のは本当に危なかった。彼女が助けてくれなかったら本当に殺されていたかも知れない。

 一方、攻撃を喰らった怪物はフラフラと高度を下げ、ヘリポートの上に倒れ込む。融合が解け、気を失った2人の男女に戻る。


「クッ、イプシロン、閣下……」


 スペードの方はまだ気を失っていなかった。私は彼の前に立ちはだかる。


「スペード、とか言ったか?」

「……こ、殺せっ」

「お前は私たちが捕えたここのシリオード兵と共に解放してやる」

「な、なに?」

「生き残ったシリオードの三王に伝えろ。軍を撤収させろ。さもなくば、シリオードの元帥の命はない、と」

「…………!」





 【シリオード前哨基地 最高司令室】


 シリオードの緒戦は終わった。エレボス、カリュプソ、ニュクスの3将軍は軍をシリオード東国まで撤収させ、私たち連合軍はシリオード大陸での拠点の確保に成功。

 だが、犠牲も大きかった。この戦いでクローン兵10万人が死亡した。あれだけ強い姉妹たちが強力なシリオード軍とシリオード将軍たちによって無残に殺された。


「ふむ、今度はタナトス自らが大軍を引き連れてやってくる。それまでにシリオードの東国を陥落させ、シリオード南国に進出するのだ。分かったな?」

「……はい、パラックル閣下」


 パラックルは私たちに休息を与えない。戦いが終わったばかりなのに、慰みの言葉もなしに、すぐに出撃せよ、という。無茶な注文だった。でも、やらなくちゃならない。少しでも反発すれば、すぐにきつい罰を受けることになる。


「コマンダー・アレイシア、この戦いが終わったら、私たちはどうなりますか? いや、このラグナロク大戦が終わったら、私たちはどうなるんです?」


 コマンダー・ログが不安そうな声で聞いてくる。戦争中だから私もログも価値がある。でも、それが終われば……? 私たちは生体実験の実験台にでもされるのだろうか?


「……この戦いに勝てば、希望があるさ」

「…………? どういう意味ですか?」

「…………」


 私はログの質問に答えず、チラリとケイレイトの方を見る。この戦争に勝てば、こっちのものだ。ケイレイトと共に“新しい国家”を造る。

 パラックルを殺し、ケイレイトを王とした国家を造る。旧シリオード軍とクローン軍を合わせれば、強大な軍事力となる。連合政府も、連合政府加盟国の1つとするのなら、認めるだろう。

 サキュバス王国の分離・独立。国際政府の反撃。二重苦に陥ってる連合政府は必ず認める。それが、自らを更なる破滅に追いやるとも知らずに。


 私には夢があった。黒い夢だ。私は連合政府を乗っ取り、ティワードとその他のリーダーを皆殺しにするつもりだった――。

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