第13話 光の悪魔
※コマンダー・レイ視点です。
【シリオード大陸 左の道(コマンダー・モル、コマンダー・レイ)】
私は必死に走っていた。あんな魔獣に勝てるワケないっ! 無理だ! 殺されに行くようなものじゃないか!
私はチラリと後ろを振り返る。誰も指揮をする人がいない私たちの部隊は総崩れになっていた。容赦なくシリオード兵によって姉妹たちが殺されていく。
ごめんね! ごめんね! 私、指揮官だけど、死にたくない! みんな、ごめんねっ!
「や、やぁッ!」
「いやああぁ!」
「助けて、助けて、コマンダー・レイ少将!」
誰かが私の仲間を名前を呼ぶ。私は心を痛めつつも無視して走る。だって、勝てない! シリオードの大将があんなに強いなんて聞いてないよっ!
私たちは待ち伏せされていた。敵指揮官はニュクス。光のパーフェクター。ああ、なんであんな強敵っ……! 風や毒よりも遥かに強い! 光なんて勝てるワケないじゃない! 無理よ!
「ひ、ひぃ!」
「いやぁーーっ!」
ニュクスは光の速度で動き、レーザーを飛ばして攻撃してくる。魔法系パーフェクターでも間違いなく最強クラスだ。数多くのパーフェクターのデータを見てきたけど、あんなに強いのは見たことがない。
ここのシリオード軍はほとんどアイツ1人で戦ってる。傘下の兵士は逃れた姉妹を殺す為にいるようなものだ。
「ハァッハッハッハ! 女を痛ぶるのは楽しいねぇ!」
黒い服に白い防弾チョッキを纏ったニュクスは笑いながら、姉妹の1人の髪の毛を掴む。泣き叫ぶ彼女の腕に握ると、彼は自身の手を光の速度で動かす。彼女の腕は肩から引きちぎれる。
「あああああ!!!」
あまりの痛さで絶叫する彼女。私は震えあがり、慌てて方向を変える。見ていられない。パラックルやティワードよりも恐ろしい男だ! 早く逃げないと!
だが、私は誰かとぶつかってその場に転がる。
「誰よ! どきなさ――」
私はぶつかった人間を見て驚愕する。そこにいたのはさっき姉妹の腕を引き抜いたニュクス=シリオードだった。
白銀の髪の毛に黄色い瞳をした彼は葉巻を加え、何事もなかったかのように突っ立っていた。だが、白い防弾チョッキには大量の血が付いていた。
私は後ろを振り返る。四肢を引き抜かれた姉妹が転がっていた。引き抜かれた四肢は投げ捨てられていた。
「よう、今日は寒いな」
「あ、ああああ!!」
私は悲鳴を上げながらその場を這うようにして逃げ出す。あまりの恐怖で腰が抜けた。股から温かい液体が流れ出る。私は失禁しながらも必死で這う。
「あ~あ、漏らすなよ」
「ひ、ひぃぃ」
ニュクスは蒸気の出る股に手をやり、私の秘所を触る。ペロリと私の耳たぶが舐められる。私は泣きながら、その場にうずくまる。死にたくない! 死にたくない! 死にたくない!!
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんさないぃッ!!」
「ん?」
「お願いです! い、命だけは助けてください! 殺さないでぇッ!」
私はニュクスに土下座し、泣きながら命乞いをする。もう何でもありだ! この際、助かる為だったらなんだってする!
その時、誰かが目の前の光のパーフェクターを撃つ! だが、銃弾は彼の身体を突き抜ける。彼に物理ダメージは効かない。
「てめぇぇ! 余計なことするんじゃない!!」
私は私を助けようとした姉妹に向かって怒鳴り散らすと、ハンドガンを引き抜き、彼女を射殺する。銃弾はクローンの額を貫いた。
「か、閣下! ニュクス閣下を殺そうとした愚か者を処刑しましたっ! ど、どうか、私だけは殺さないでください!!」
やってることは最低だと思うけど、何が何でも死にたくなかった。私はプライドも何もかも捨てて土下座し、命を乞う。
ニュクスは近寄ってきたシリオード軍、女性将校と何か言葉を交わすと、手をつなぎ、光に包まれ、一瞬の眩しい閃光と共に姿を変える。その姿は黄色をした巨大なチェスの駒だった。
――聞け、人工の魔女たちよ。
頭の中に声が響く。私は巨大なチェスの駒にひれ伏す。まだ死にたくない! 一生、奴隷のままでいるなんてイヤだ! 楽しい事もいっぱいやりたいんだ!
――優れた命を助けよう。それぞれ、同じ魔女の手足を合計で4つ、余に奉げよ。されば命を助けよう。
さっきまで私たちの姉妹を虐殺していた時とは違って落ち着いた神々しい声でニュクスは言う。やった! それなら簡単だ! 私は強いから少将の地位にいる。すぐに出来る。
ニュクスの命令は単純かつ簡単だ。姉妹の手足を斬り、4つ持っていけばいいんだ。つまり、最低1人を抑え込み、四肢を切断すればいい。
「は、はい、ニュクス閣下!」
私は素早く辺りを見渡す。いた! 私はおどおどしているクローンに飛びかかる。
「あなた、私の為に手足を頂戴!」
「コ、コマンダー・レイ少将!? わ、私イヤです!」
「うるさい! 私は少将よ!?」
私はアサルトソードと呼ばれる軍用剣を引き抜き、彼女の腕を切断しようとする。だが、その時、私の身体は別のクローンによって押し倒される。な、なに……?
「ざけんじゃねーよ! 敵に命乞いしたテメェに少将を名乗る資格はねぇよ!」
「そうよそうよ!」
「あんた、真っ先に逃げたでしょ!?」
「コイツからまず四肢を切ってやる!」
「アタシたちを置いて逃げた君に指揮官の資格はないよ!」
え、ええっ……!? いつの間にか私の周りには10人以上の姉妹が立っていた。私は震え、その場から逃げ出そうと必死で暴れるが、彼女たちは私の身体を完全に押さえつけてしまう。
そして、右腕をひっぱられ、しっかりと握られる。1人が剣を引き抜く。
「い、いや……! いやああああ!」
「うるさい泣き虫!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! 斬らないでください! 右腕斬らないでぇッ!!」
私は泣きながら叫ぶ。必死に彼女たちに斬らないでと訴えるが、無情にもクローンの1人は右腕を肩で切断する。激しい痛みが全身を貫く。私は血を吐くような勢いで叫ぶ。痛い痛い痛い!!
だが、クローンたちは私の悲鳴を無視して、同じようにして左腕も斬り落とす。そして、脚をも斬ろうとする。
「も、もう許してぇッ! これ以上、痛いことしないでくださいッ! 脚斬らないでください! なんでもするからああぁあーーっ!!」
全部、言い終わらない内に足を斬り落とされ、私は絶叫する。姉妹たちは構わずに片方の脚も斬る。私は激痛の地獄で叫び、悶える。
だが、もう誰も助けてはくれなかった。四肢を失った私はその価値を失い、ほっとかれた。私の瞳の光が消えゆく。
涙でぼやけ、激痛でバラバラになりそうな意識で見たものは、姉妹たちが恐ろしい形相でお互いの四肢を斬り合う地獄の同士討ちだった――。




