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黒い夢と赤い夢Ⅰ ――魔女狩り――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 †人造† ――シリオード大陸――
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第12話 氷の騎士

※前半はアレイシア視点です。

※後半はケイレイト視点です。

 私と100人ほどの兵士を率いて薄暗い森を進む。森には雪が少なく、これまでの雪原よりかは歩きやすかった。シリオード兵もおらず、順調に進んで行けていた。

 だが、遠くからは何度も爆音が鳴り響く。コマンダー・ログやコマンダー・モル、ケイレイトの軍勢が激しい戦闘を繰り広げているのだろう。


「コマンダー・アレイシア中将」

「なんだ?」


 近くにいたデミ・フィルド=トルーパーの1人が不意に声をかけてくる。私は歩きながら返事をする。まだまだ前線基地には遠い。


「シリオード軍の大将たちは何者ですか?」

「……イプシロンやカリュプソらはパーフェクターだが、パーフェクターの中でも強大な魔法を操ると聞いている」


 イプシロン、カリュプソ、エレボス、ニュクスといったシリオードの四大将たちは全員、パーフェクターだ。全員が強大な魔法を操るらしい。

 しかも、操るだけではない。カリュプソのように自身の身体をそれぞれの魔法で覆って魔獣化する。しかも、噂では彼らはパーフェクターの最強能力である“融合”を使うともされる。心を通じ合わせた者と融合して凄まじい破壊力を誇る魔獣と化せるらしい。


「……怯えるな。ただの魔法使いだ。十分勝機はある」


 私は軽く彼女にそう言った。魔獣化のウワサなど聞かせるだけ無意味だ。恐怖と不安を煽るだけだ。私たちはシリオードの大将と戦いに来たわけじゃない。あくまでシリオード軍と戦っているんだ。



◆◇◆



 【シリオード大陸 右の道(ケイレイト、クナ侵攻方向)】


 私は雪の上に吹き飛ばされる。その周りには無数のクローンたちの死体。エレボス率いるシリオード軍は私たちを待ち伏せにしていた。彼らはここまで兵を回していたんだ……!


「ハハッ、女クローンを皆殺しにせよ!」


 若い男が叫ぶ。シリオード兵たちはハンドガンの銃口を向け、緑色の燃料弾を撃ちまくる。轟音が何度も鳴り響き、雪で覆われた地面が揺れる。


「クッ……!」


 私は立ち上がると、腰に装備していた鋭い刃を持つブーメランを握り、エレボスの方に向かって走る。あの男さえ殺せれば……! エレボス=シリオード。白銀の髪の毛に緑色の瞳を持つ男。シリオード四大将の1人にして四王の1人!


「連合政府七将軍のケイレイト。わたしの側室にしてやろう。毎晩声が枯れるまで可愛がってやるぞ?」

「黙れっ!」


 私はブーメランを飛ばす。風を操り、ブーメランの速度を急速に速めていく。ブーメランは空中で大きく弧を描きながらエレボスの首を狙う。


「風のパーフェクター。風使いだな。だが、わたしもパーフェクターなのだよ」


 エレボスはブーメランに向かって手をかざす。その瞬間、分厚く大きな氷のシールドが現れる。ブーメランは氷のシールドに突き刺さる。氷のパーフェクター……!

 彼はブーメランを防ぐと、今度は戦場の方に向かって手をかざす。小さなつぶてが飛んでいく。白いつぶてはクローンがたくさんいる所に落ちる。その瞬間、鋭く尖った角を持つ大きな氷の塊が勢いよく現れる。


「うぐっ!?」

「あぅっ!」

「きゃぁっ!」


 何十人ものクローンが、突きだした氷の先端にお腹や胸や頭を貫かれ、絶命した。氷には赤い血が滴る。


「血の氷祭。美しいものだな」

「お前……! 許さない!」


 私は両手を勢いよく突きだす。その瞬間、紫色の電撃がほとばしり、それはスピーダー・バイクに乗ったエレボスの身体を吹き飛ばす。

 だが、彼の身体を1人の女が抱き止める。黒い服に白い防弾チョッキを着た女性。シリオード軍の人間だろう。


「エレボス閣下、大丈夫ですか?」

「ダ、ダイヤ……! 今のはヤバかった……」


 息を荒げながらエレボスはそう言う。彼も着ているシリオード軍特有の黒い服と白い防弾チョッキからは煙が上がっていた。


「よ、よし、融合するぞ」

「はい、西王」


 融合? なにそれ?

 エレボスとダイヤとかいう将は共に空高く飛び上がる。空中でお互いが抱きしめ合おうとしたその瞬間、2人の身体は光に包まれ、一瞬の閃光と共に、巨大な硬い装甲で出来た怪物が現れる。


「なっ……!?」


 人型をした蒼色の目立つ巨大な怪物。全長10メートルはあるだろうか。その片手には大きな太い刃を持つ鎌を持っていた。鎌の色も白だった。

 無表情の顔に緑色の目を光らせる。それは私を捉えていた。私は睨まれ、その場で動けなくなる。圧倒的な覇気を感じていた。


「ママ逃げてっ!!」


 大鎌を振り上げた時だった。小さな女の子が私の目の前に飛び込んでくる! クナだ! 彼女は強力なシールド――キャンセル・シールド張り、大鎌を防ぐ。


――ほう? キャンセル・シールドか。やるじゃないか。……だが、わたしの前には無意味。


 頭の中に冷たく不気味な声が響く。分かる。これはエレボスとダイヤの混声だ。アイツ、テレパシーまで使えるのか……!


「ママぁッ!!」


 クナの声で私ははっと我に返る。怪物化したエレボスはその巨体からは考えられないような素早い動きで何度も鎌を激しく振り下ろしていた。クナは必死でキャンセル・シールドを張って耐える。

 私は両手を突き出し、暴れるエレボスに向かって紫色の電撃を解き放つ。両手からほとばしる電撃は再びシリオードの大将を襲う。だが、今度はビクともしなかった。


「ママ逃げてぇッ!」


 クナは泣きそうな声で叫ぶ。イヤだ、イヤだ! クナを置いて行けない! クナが殺されちゃう! そんなのイヤだ!

 私は力を振り絞り、電撃を放つ。だが、エレボスは倒れない。動きはかなり鈍っているが、それでも倒れなさそうだった。

 だが、突然、大きな爆音と共に怪物化した彼は倒れる。クローンの1人がロケットランチャーを持っていた。それでアイツの頭を撃ったんだ!


「逃げるよ!」

「ママっ……!」


 私はクナを抱き抱えるようにしてその場から走り出す。でも、クローンたちはアサルトライフルの銃口を倒れたエレボスに向けて一斉に射撃し始める。ダメだっ、逃げてっ!

 しばらくの間倒れていたシリオードの将軍は起き上がる。再び鎌を握り、近くのクローンを4、5人まとめて斬り裂いた! みんな上半身と下半身で真っ二つに斬られる。その切り口は凍り付いていた。


「う、うそ……?」


 エレボスは更に近くにいたクローンたちに口から息を吹きかける。その瞬間、それを浴びた彼女たちは全身が凍り付いた。

 私はそこまで見ると、全速力で走る。クローンたちも同じだった。だが、シリオード軍は私たちの背中に燃料弾を浴びせる。追撃だった。無数の若い女性兵士の命が消えていく。


 結局、追撃が終わる頃には私は大勢の兵士を失っていた。右道からの攻撃は完全に失敗に終わった――。

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