第0話
僕はいつだって我侭だ
目の前にある函に
宝があると信じて疑わなかった
そして
期待に輝くその瞳で
箱の中を覗き込み
何もないと知ると
怒りに任せ
その函を壊すのだ
函は泣いた
「何かが入っている」
とは書いてなかったのに
誰もそんなこと言っていないのに
自分の期待したものが無くて
その函を壊したのだ
函は言った
「君のご期待には添えなかったかい?」
もちろんだと睨めば
函は笑った
「君の人生など、そんなものさ」
僕は
何も言わなかった
僕は
何も言えなかった
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とある国の小さな村。
その中の小さな家の小さな庭で、お姉さんは私に言った。
――『いい、美咲?人をね、憎んじゃ駄目よ。』
――『どうしてー?』
――『まだ、美咲には分からないかも知れないね……。でもね、そのうち、分かる日が来るわ。』
――『そのうち、っていつー?』
――『……その時が来たらね、教えてあげる。
こんな時代だから……人は誰かを愛することを忘れてしまうけど、それを忘れてはいけないの。』
――『なんでー?』
――『人はね、誰かを愛することを忘れてしまったら、人では無くなってしまうからよ。』
――『ふーん。変なの。』
――『そうだね、それって、とても可笑しいことだよね――……。』
“プロローグ”
まだ、この世界が荒れていた時代。
世界には大きく分けて三つの国が存在した。
一つは、ユートピア。
この国のものは全て美しく、汚れや争いが一切無かった。
ゴミ一つ無いこの国は治安も良く、また設備や医療も優れていて何不自由ない生活を送ることができた。
まさに、理想郷《ユートピア》である。
平和で統一されたこの国では、子供たちは皆良い環境の中やりたい学問を学ぶことができる。
誰もが羨むユートピア。それは汚れのない美しい国の様に見えて、この世で一番残虐だということを、この国の民の8割は知らない。
この国から出た、争い事やゴミは全て他の国に送られていた。
使えなくなった物、事、さらには人まで押し付けられた国、それがここ、ラベーシ・チップである。
巨大なスラム街があちこちに広がるこの国は、壊れた玩具箱のようだった。
大人たちはほとんどいない、子供の国。
そこには毎日山のようなゴミが運ばれてくるのだ。
子供たちは必死に生きた。
しかし、この国での死者は毎日数えられぬほど出た。
生まれたばかりの醜い子供、脳の病気を抱えて捨てられた子供、その数は悠々に100を超えた。
畑を耕し、布を織り、懸命に生きる子供たち。ユートピアの人間は、そんなラベーシの存在を知らないのだ。
10歳にも満たない子供ばかりが住むこの国で、どうやって生きられるというのか。
病人が出ても子供たちは対処法を知らず。
文字の読み書きを知らず。
そのうち感情さえも失ってしまうのだ。
そんな、感情すら持たなくなった人々の国が、バニティーである。
そこは“無”の国。
人々は感情を知らず、まるでロボットのように毎日を生きる。
喜びは愚か。苦しみや痛み、空腹すら感じないその人たちを、やはりユートピアの人間は知らないのだ。
犠牲の上に立つ理想郷を、地獄と呼ばずなんと呼べるだろう。
それこそ井戸の中の蛙。
ユートピアの人間は、生まれた事に喜びなど感じていない。
それが当たり前。自分が選ばれたのは必然と思っているのだ。
ラベーシの人間は、自分が生まれたことを憎んだ。
苦しんで死ぬなら何故生かした、と常に怒りに燃えていた。
バニティーの人間は、何も思わない。
生きることも死ぬことも感情には入らない。
この三つの国から成り立った世界が壊れたのは今から15年後。
とある戦争で大きく世界を変えた5人の英雄。
これは、その英雄達の物語である。




