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冬の湖の鏡

 秋の庭を抜けたユメとハルは、季節の移ろいと共に冬の森へと足を踏み入れた。

 木々の葉はほとんど落ち、枝だけが冬の空に黒く浮かんでいる。

 足元には真っ白な雪が積もり、冷たい空気が鼻先に触れると、冬独特の澄んだ匂いが鼻孔をくすぐった。

「わあ……寒いけど、空気が澄んでるね」

 ハルは尾を揺らしながら息を白くして言った。

 ユメも尾を揺らし、鼻先で雪を嗅ぐ。

 冷たい空気は心地よく、雪に包まれた世界はまるで静けさと美しさが広がる夢の中のようだった。

「本当に。冬はなんだか、静かで落ち着くよね」

 ユメは少し歩きながら、しんとした空気の中でふと思った。

 雪がしんしんと降る森は、昼間でもまるで夜のように静かだった。

 雪の上に映る空の淡い青、枝先の霜、そして風の音がひときわ遠くに響いて、二匹の足元でサクサクと音を立てる。


 二匹が進んでいくと、森の奥からふと光が差し込み、雪原が明るく輝いて見えた。

 そこには、小さな湖が広がっていた。

 湖面はすでに薄く氷に覆われ、冬の光を受けて淡い銀色に輝いている。

 雪が湖の周囲に積もり、木々の影が水面に映る。

「見て、ハル。湖が鏡みたいになってる」

 ユメは尾を揺らしながら、氷の上に映る自分たちの姿を見つめた。

 湖面は穏やかで、まるで現実と夢がひとつになったかのように感じられる。

 空の淡い青、雪に覆われた森、そして遠くの丘……すべてが鏡に映り、二匹の尾の光も静かに重なり合っている。

 ハルも尾を揺らし、氷の上に映る自分たちの姿を見つめて言った。

「迷子だったけど……ここは怖くないね」

 ユメは頷きながら、静かな湖を見つめる。

 湖の鏡のような面は、まるで時間がゆっくり流れているかのように感じられた。

 冬の静寂は、迷子の心を落ち着かせる魔法のようだった。

「うん。ここにいると、安心するよね」

 ユメはその言葉を胸に、湖の周囲をゆっくりと歩き始めた。

 ハルもそれに続き、氷の上を慎重に歩く。

 冷たい空気が肌を刺すが、その冷たさが心地よくも感じられる。

 二匹の影が氷の上で柔らかく揺れ、幻想的な光景を作り上げていた。

 二匹が歩くと、氷の裂け目から小さな光の粒が漂い上がってきた。

 それはまるで、湖の底から湧き出たかのように輝く光で、冷たい空気の中でほのかに温かさを放っていた。

 ユメはその光に近づき、尾を揺らしながら触れてみると、氷の上に小さな波紋が広がった。

「光って……冬でも温かく見えるんだね」

 ユメは感心して言った。

 ハルも尾を揺らし、光に合わせて歩く。

 二匹の尾と光の粒が共鳴し合うように、湖面は静かに揺れ、幻想的な模様を作り出していた。

「うん、冬でもこんなに美しいんだね」

 ハルは少し遠くを見つめながら、心が温かくなるのを感じていた。

 光の粒は冷たく輝く湖と雪を、まるで温かな色で包み込むようだった。


 湖の中央には、小さな凍った島が浮かんでいる。

 氷の上に積もった雪が柔らかく光り、二匹を誘うかのように輝いていた。

 ユメは慎重に尾を揺らしながら氷の上を歩き、ハルもそれに従って進んだ。

 氷は冷たく固いが、尾の揺れでバランスを取りながら二匹は安定して歩くことができた。

 島の上に立つと、湖全体が見渡せた。

 氷の鏡に映る森、雪原、遠くの丘……すべてが静かに光る冬の世界。

 ユメは尾を揺らしながら深呼吸をし、冷たい空気と冬の光を全身で感じた。

「冬って、少し寂しいけど、美しいね」

 ハルは小さく尾を揺らしながら言った。ユメもその言葉に頷き、静かな湖を見つめた。

「うん。でも、冬の景色って、どこか心が落ち着くよね」

 二匹は静かに湖面を見つめ、冷たい風を感じながら、しばらくその場所に座った。

 心の中で、冬の静けさと美しさが少しずつ深くなっていくのを感じた。

「この湖、まるで鏡みたいだね」

 ユメがつぶやくと、ハルもその言葉にうなずいた。

「うん。鏡のように、自分たちを見つめることができる気がする」

 二匹はしばらく自分たちの姿を湖面で見つめていた。

 迷子だったけれど、ここでは自分たちの存在を確かめることができた。

 どんなに遠くに迷い込んでも、この冬の湖のように、自分たちを映し出してくれる場所は必ずある。

 それを二匹は心に刻み込んでいた。


 湖の周囲には雪に包まれた小道が現れ、二匹は尾を揺らしてその道を進んだ。

 風の音、雪の匂い、氷の光がすべて一体となり、冬の森の静けさと美しさを感じさせてくれた。

「迷子でも、こうしてユメと一緒にいると、どこでも自由に歩ける気がする」

 ハルはその思いを胸に秘めながら、ユメとともに歩き続けた。

「うん、どこにいても、怖くないよ」

 ユメは尾を揺らしながら言った。

 二匹は足音を立てながら進み、冬の湖の光を浴びながら心の中で新たな決意を固めた。

 夕暮れが訪れ、湖面は淡いピンク色に染まり、氷の上に映る空の色も変わり始めた。

 冬の夜が静かに訪れ、二匹はその静寂を感じながら、ゆっくりと湖を後にした。

「冬の湖は、やっぱり美しいね」

 ユメは尾を揺らしながら言った。

「うん、静かで、少し寂しいけど、心が温かくなる場所だね」

 ハルも尾を揺らして頷き、二匹はそのまま森の中へと足を踏み入れた。


 冬の静けさと美しさの中で、二匹の心はしっかりと繋がり、次なる季節の冒険を待ち望んでいた。

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