番外編 願いの庭
ある穏やかな夜、ユメは夢の世界の丘に立っていた。
月明かりが雪や草の上に柔らかく降り注ぎ、尾の光が小さく揺れている。
空には無数の星が瞬き、その光が遠くの森や川の水面に反射し、静かな美しさを映し出していた。
ユメはその光景を見ながら、心の中でふと思いついた。
「今日は、みんなの願いを集めてみようかな」
ユメは静かに尾を揺らしながら、ふっとつぶやく。
その声に応えるように、精霊の猫が尾を揺らして寄り添ってきた。
猫の尾の光もまた柔らかく舞い上がり、二匹はそのまま丘を歩きながら、ユメの思いつきを具現化しようと心に決めた。
「願いの庭か……」
ユメは歩きながら、夢の世界の小道を照らしていった。
これまで出会った動物たちや精霊たちが、どんな願いを抱えていたかを思い出す。
小さな花がもっと美しく咲きますように、雪の森に新しい友達ができますように、夜空に流れ星を届けたい……ユメは心の中でそれらの願いを集め、尾の光をゆっくりと揺らす。
すると、ひとつひとつの願いが光となって、ユメの周りに集まり始めた。
ユメはその光を集めながら、思った。
「こうして、みんなの願いがひとつの場所に集まるんだね。」
願いの光がひとつひとつ集まり、それがユメの尾の光に反応しながら、さらに輝きを増していく。
その光の粒たちは、まるで夢のようにきらめきながら、ユメの足元にゆっくりと広がり始めた。
次に、ユメは尾の光を使って、光の小道を作り出した。
小道は柔らかく光り、そこを歩くと花々がその光を受けて反応し、ゆっくりと開いていく。
葉が揺れ、光の粒がひとひらひとひら舞い散りながら、夢の世界全体が優しい光に包まれていった。
まるで願いそのものが生きているかのように、光が命を吹き込まれていくのを感じた。
「この庭には、みんなの願いが宿るんだ」
ユメは微笑みながら、尾の光を大きく揺らす。
すると、精霊の猫も嬉しそうに尾を揺らし、光の庭の中を跳ね回る。
その光の粒は花や草木に散らばり、庭全体を柔らかく照らしていく。
庭の中心に到達したユメは、さらに尾の光を回転させる。
その瞬間、光の小さな噴水が庭の中央に現れ、光の水が柔らかく周囲に広がっていった。
水が地面に触れると、その水面はまた光を反射し、さらに小さな光が花々や木々に染み込む。
小鳥や小さな動物たちが集まり、尾の光に呼応するように嬉しそうに遊び始めた。
「こんなにたくさんの願いが集まったんだね」
ユメは尾を揺らしながら光を散らす。
集まった願いの光は、花や葉に溶け込み、庭全体がまるで星空のように輝き出す。
光の中で、願いは小さな虹色の花や微かな光の蝶に変わり、それらは夢の世界の空気に溶け込んでいく。
「これが、みんなの願いが実る瞬間だ……」
ユメの心は温かく満たされていく。
願いが叶った瞬間を目の前で見届けることができたことが、ユメ自身の心にも深い安らぎを与えていた。
ユメは尾を大きく揺らして、光の中を歩き回る。
その足元の光は柔らかく揺れ、まるで歩くたびに新たな願いが生まれ、叶っていくかのようだった。
「迷子でも、願いがあれば道は開けるんだ……」
ユメは小さくつぶやく。
迷子だった自分も、今では他の誰かの願いを守る存在となり、光の道を照らすことができていることを実感した。
精霊の猫も尾を揺らして応え、その光の庭に小さな波紋のような輝きを広げていく。
夜が深まると、ユメは庭の中央で尾の光を揺らしながら深呼吸をする。
その瞬間、庭全体が静かに振動し、願いの光が一層強く輝く。
ユメはその光を感じながら、心の中で一つの確信を得た。
「私はもう迷子じゃない。ここが私の場所、そしてみんなの願いを守る場所だ」
光に包まれた夢の世界の温かさと豊かさを実感しながら、ユメは目を閉じた。
「願いの光があれば、どんな迷子も迷わずに帰れる」
その言葉がユメの心にしっかりと刻まれ、彼女の尾の光も微かに震えながら、集まったすべての願いと共鳴し、再び輝きを増していく。
丘の上から見下ろすと、願いの庭は星空のように輝き、四季の光や自然の色彩と重なり合って、まるで夢のような美しい景色を作り出していた。
ユメはその景色を静かに眺めながら、心から微笑んだ。
「迷子であった自分も、こんな素晴らしい世界で、誰かの願いを守れる存在になれたんだ……」
その思いがユメの胸に広がり、心に温かな光を灯した。
尾の光と願いの光が交わる中、ユメはそっと目を閉じた。
夢の世界には、迷子でも帰れる場所があり、願いと光がいつも道を照らしてくれる。
そんな幸せな夜だった。




