番外編 迷子の子猫と一緒に
ある日の夕暮れ、ユメは夢の世界の森を歩いていた。
春の光がやさしく差し込み、冬の寒さが少しずつ消え去った後、森は新しい命を感じさせる景色で溢れていた。
枝からこぼれ落ちる小さな花々が足元に広がり、その中をユメの尾の光が静かに照らし出していた。
ユメの光が森の中に踊り、葉が風に揺れる音が心地よく響く。
「ん……?」
ユメはふと立ち止まり、耳を澄ませた。
微かな声が風に混ざり、どこからともなく「ニャ……」と呼ぶ音が聞こえてくる。
ユメは尾を揺らし、その光を一層強くして、声のする方向へ歩き始めた。
踏みしめる草の感触と、尾の光が森の中を照らす温かな道を作る。
やがて、木々の茂みの中に小さな子猫がうずくまっているのを見つけた。
その目は大きく不安そうで、体は小刻みに震えている。
子猫は雪解け水の小さな池のほとりに足を浸し、冷たい水にふやけた毛を濡らしていた。
ユメは尾を優しく揺らし、ゆっくりと近づいた。
子猫はその光を見て、少し驚いた様子で身を引いたが、ユメは穏やかに声をかけた。
「大丈夫、怖くないよ。私が一緒にいてあげる」
ユメの言葉に、子猫は少しずつ尾を揺らしながら、茂みの中から出てきた。
その小さな体がユメの光に導かれるように動き、少しずつ歩き始める。
「よし、こっちだよ。」
ユメは自分の尾の光をさらに明るくし、子猫が前に進むための道を作る。
光が二匹の間に柔らかく広がり、森の中に新たな小道ができたように感じられた。
「さあ、どこからでも行けるんだ。道は光でできているから」
ユメの言葉に、子猫は安心した表情を浮かべ、少しずつ前に進む。
ユメも後ろからついて行き、二匹は一緒に森を歩き始めた。
春の花々がユメの尾の光に反応してゆらゆらと揺れる。
ユメが一歩踏み出すたびに、花々はその美しい色を強め、森が生命の息吹に満ちていく。
「見て。花が私たちを歓迎してくれているよ」
子猫はその光景に驚き、目を大きく開けたまま花を見つめる。
小さな声で「わぁ……」と呟くと、尾を小さく揺らしてその美しさを楽しむ。
その後、二匹は小川に辿り着いた。
水面はきらきらと輝き、春の光が水の中に反射している。
ユメは尾を揺らして水面に触れると、そこに光の橋が現れる。
水面に映る光の小道が、二匹を新たな場所へと導いてくれるようだった。
「こっちだよ。渡ってみよう」
ユメが先に足を踏み入れると、水面の光が揺れて虹色の橋を作り出す。
子猫もそれに誘われるように、尾を揺らして橋を渡り始めた。
そのたびに水面がきらきらと光り、二匹の足元を照らしていく。
「すごい! 光の道だ!」
子猫の声に、ユメも嬉しそうに笑う。
二匹は橋を渡り終え、次の景色へと進んだ。
そこは夏の丘で、空気が一層温かく、風が心地よく吹いていた。
空には光の虫たちが舞い上がり、その光がユメの尾と混ざり合って、まるで星々が地上に降りてきたかのように輝いていた。
子猫はその美しさに目を奪われ、尾を揺らして喜びを表現した。
「これ、ほんとうにきれい……」
ユメも尾を揺らして光と遊び、二匹は光の虫たちの中で一緒に跳ね回った。
まるで夢の中で過ごしているような、不思議で美しい瞬間だった。
次に、二匹は秋の森に差し掛かった。
木々の葉が色づき、赤や黄色、オレンジの葉が舞い散る小径が広がっていた。
ユメは尾を揺らしてその葉を舞い上げ、子猫と一緒に遊んだ。
葉はユメの光を受けて輝き、空気が秋の香りで満たされていった。
「こんなにきれいな落ち葉、見たことある?」
ユメは楽しそうに尾を揺らし、葉が舞い上がるのを見つめた。
子猫もその美しさに心を奪われ、尾を揺らしながら葉の舞いを追いかけた。
「一緒に、もっと遊ぼう!」
ユメが言うと、子猫は嬉しそうに笑いながら、葉の中で跳ね回る。
二匹の光がその葉を照らし、森全体が二匹の笑顔に応えるように揺れ動いた。
やがて冬の湖に辿り着いた。
湖面は凍り、静けさが辺りを包んでいる。
ユメは尾を揺らして光を湖面に映し出すと、二匹の姿が輝く鏡のように反射した。
子猫は少し不安そうに氷を見つめたが、ユメはその不安を感じ取り、優しく微笑んだ。
「怖がらないで。大丈夫、私がいるから」
ユメは尾を大きく揺らして光の橋を作り、子猫を誘うように歩き始めた。子猫はそれに続き、氷の上を慎重に歩いた。足元の氷は冷たくても、ユメの光が道を照らし、安全に進むことができる。
「ほら、怖くないでしょ?」
ユメの言葉に、子猫は少し安心した様子で尾を揺らし、小さくうなずいた。
二匹は凍った湖を渡り終え、湖の向こう岸へと進んだ。
その先には、子猫の家らしい小屋が見えた。
尾を揺らしながら歩く二匹は、森の小道を光で照らしながら、迷うことなく目的地へと向かう。
小屋からは暖かい光が漏れ、そこに待っている家族の気配が感じられた。
「ありがとう、ユメ!」
子猫は尾を小さく揺らし、ユメに感謝の気持ちを伝える。
ユメも尾を揺らして応え、胸の中に優しい満足感が広がった。
迷子だった子猫を無事に家まで連れて来られたことが、ユメにとっても大きな喜びとなった。
その後、二匹は森を抜け、丘の上に登ると、夜空に輝く星々がユメの尾の光に応えるように輝きを増していた。
ユメは尾を揺らしながら思った。
「迷子を助けることは、自分自身を知り、優しさを確かめることでもあるんだ」
そう、迷子の子猫と一緒に過ごした四季のような時間が、ユメにとっての大きな成長を意味していた。
星空の下で深呼吸をし、ユメはもう一度空を見上げた。
夢の世界には希望と友情が溢れていることを実感しながら、ユメは静かにその夜を楽しんだ。




