プロローグ
夢も希望も失ったサラリーマンが高校時代に戻り、その時に起きたとてつもない出来事を徐々に解明していくミステリー、ラブコメ、タジー、が合わさった異色の小説、
5歳ぐらいの少女がその少女の母親らしき人と話している。
『これなんなの?』
少女がそう質問すると母親らしき人物は優しく微笑みながら答える。
『これはね、願いを叶えることが出来るんだよ。だから大切にしてね。』
その後も話は続いていたが、徐々に意識が遠のいていき、声が聞こえなくなった。
「夢か...」
布団から体を起こし、少し悲しむような声で呟いた。
「何なら、俺に願いを叶える力をくれよ。」
いつも通りぐだらないことを喋り、今日の日付を確認してみるが、特に変わっている様子は無い。
窓の外を見るといつも通り空は青く鳥も鳴いている。道路の方を見ても小学生が楽しそうに笑っていたり、サラリーマンが面倒くさそううに歩いていた。そんないつもと変わらない平和な日常の前にして僕は大きくため息をついた。
ここまでくればだいたい予想できるであろうが鈍感な人のために言っておく、僕はこの世界が嫌いである。
もちろん、最初からこの世界が嫌いな分けでは無かった。
高校時代には、彼女もいたし、友達も多くいた。自分で言うのもなんだが、顔も悪い方では無かったと思う。
あの、事件さえ無ければ僕は今でも幸せだったのかも知れない。
僕はあの事件のせいで、友人も家族もそして愛情までも失った。
何にも、やる気を無くし、美容に気を使っていたが、それも面倒になり、みるみるニキビが増えてきた。
一応仕事はしているが在宅ワークであり、外に出る機会が一切無いので、運動不足になり、今じゃ完全に中年太りのおっさんだ。
何か幸せを見つけたいと思い、マッチングアプリや競馬、パチンコなどもしてみたがどれも楽しいとは思えなかった。
「まじで、どうしよ...いっそのこと自殺とかしてみるか?」
普通の人が聞いたら格好つけているようにしか見えないが、僕はそんな考えは、微塵も無い。ただ、今死ぬかどうかを考えているだけだ。
何ならあの事件の直後に一度死のうとした。だが、僕は死ぬと言うことがどれだけ恐ろしく、周りの人が傷つくかを知ってしまっていたため、自殺することが出来なかった。
だが、大人になった今なら、簡単に死ぬことが出来ると思う。
テーブルに置いてある『自殺用!!』と書かれた
液体が入った瓶を取って蓋を開ける。
そのまま飲もうとした時ふと祖母の顔が浮かび、そっと瓶に蓋をする。
「やっぱまだ死ねねえな。」
僕が今まで死ななかった理由は祖母との約束のせいだ。僕は祖母と『祖母が死ぬまで僕は死なない』と言う約束、いや契約をしてしまったからだ。
今は、癌の病を患っており、もってあと一年ってところらしいが...何にせよ祖母が生きる以上僕も全力で生きていかないといけないらしい。本当に面倒な契約をした。
だが、たまには悪くないと思う時もある。
「さーて、仕事しますか。」
少し微笑んでいることに気づいた僕は頬をおもいっきり叩き、いつも通りpcを広げた。
仕事も終わり、今日の夢のことを思い返していると、ふと昔神に願ったことを思い出した。何百回、何千回と願ったが結局そんなことは叶わず、諦めるしかないと言う事実だけしか残らなかった。
今日は昔のことを良く思い出したな。と感慨深い気持ちに浸っていると、深夜まで仕事をしていたせいか急に睡魔が襲って来た。
体を起こし布団を敷こうとしても眠気で立つことすら出来ず、結局テーブルに顔を伏せたまま眠った。