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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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第6話「異世界市場は大パニック!?鉄球をぶん回す魔法少女(物理)が全部解決します!」

市場襲撃——魔法少女(物理)が街を救う!?


街一番の市場は、今日も活気でいっぱい——のはずが!?

突如として現れた魔物の群れに、屋台も人々も大パニック!

立ち向かうのは、プリンで変身する魔法少女(物理)と、クセ強ギルド仲間たち!

……って、包丁で戦う戦士とか、配信アプリ起動で必殺技とか、ツッコミどころ多すぎ!?


笑って燃えて、最後はちょっぴり胸が熱くなる第6話!

市場は、夕飯時を前にして、焼きたてのパンや果物の甘い匂いであふれていた。


「おねーたん! みてみて!

 あのおじたん、なんかつくってまちよ! おいちそうでち〜!」

みきぽんは目を輝かせて、屋台に向かって走り出そうとする。


慌てて私は手をつかんで引き戻した。

「ちょっと待って! 勝手に走ったら迷子になるでしょ!」

「えへへ〜……ごめんでち」


にぎやかな笑い声と、商人たちの呼び込みが市場に溢れる。

——だがその平穏は、鋭い悲鳴と共に消え去った。


「ぎゃああああっ!」

「た、助けてくれーーーーっ!」


路地から慌てた様子で、街人たちが逃げ出してきた。


それを追うように、黒い影のような小鬼の群れが飛び込んでくる。


灰色の肌はどす黒く、濁った黄色の眼がぎらついている。

口を裂くほどに伸びた牙からは涎が垂れ、

手にした粗末な槍には乾ききらぬ血がこびりついていた。


ケルトの伝承に語られる、ファル・グラス——『灰色の民』。

人間の死肉を好み、夜陰に紛れて村を襲ったという忌まわしい怪物だ。


「市場が魔物に襲われてる! 冒険者を呼べ!」

「くそっ、——警備兵はまだ来ないのか!」


商人たちが商品を抱えて逃げ惑い、子どもたちが泣き叫ぶ。

ほんの数刻前まで賑やかだった市場は、一瞬で修羅場と化した。


その騒ぎの中、私たちの前に飛び出してきたファル・グラスが、

ぎらぎらとした目で睨みつけながら槍を振り上げた。


「……みきぽん!」

「まかせるでち!」

私たちは目と目で合図をする。


するとみきぽんの胸のブローチが、ぱあっと光を放った。


次の瞬間、どこからともなく出現したプリンがふわっと宙に浮かび、

これまたどこから出てきた状態の銀のスプーンが手元に収まる。


「プリンを食べて、華麗に変身!

 魔法少女——マジカル☆みきぽん!!」


パクッとひと口食べると、甘い香りとともに光のリボンがみきぽんを包み込んでいく。

ツインテールがふわりと舞い、ワンピースはフリルやリボンをまとって

『魔法少女ドレス』へと変化した。


(てか……やっぱり敵さん、変身が終わるの待っててくれてるのね……)


最後に鉄球付きのステッキが「ガシャーン!」と音を立てて顕現し……


「いっくよーー☆」

みきぽんはゆめかわ空間の中心で、キラーンとポーズを決めた!


目の前で何が起きているのか理解できずに、敵も味方もみんなポカーンとしてる。

……わかる。わかるわー、その気持ち。


ギギギギギッ!

痺れを切らしたファル・グラスが襲いかかってくる。


私はすかさず杖を構えて、覚えたてのファイア・ボルトを唱えた。


ギャギャアアアッ!


でも一匹を倒しても、すぐにまた次のファル・グラスが飛びかかってくる。

呪文は効いているんだけど、とにかく数が多すぎる!

これはやばいかも……


——その時。


「よっしゃあ、ここは俺に任せろ!」

野太い声とともに、屋台の向こうから飛び出してきたのはバルガンだった。


両手には……大きな包丁!?

「な、なんで包丁なの!?」

「ダーッハッハッ! 斧を取りに帰るのがめんどくさくてな……

 つーか、こいつらにはこれで十分だ!」


包丁をブンブンと振り回しながら、ファル・グラスを豪快になぎ倒していく。


「オラァァッ……ファル・グラスのみじん切り、カブの葉のローストを添えてッ!!」

「待って食材扱い——っ!?」


「カブは葉っぱまで食えよ! 食事は栄養バランスが命だ! ダーッハッハッ!」

……と、なぜか説教までしている。


バルガンの豪快で自由奔放な包丁捌き。

それは自己流ながら、数多くの闘いを経て磨き上げられてきた重みを感じさせる。


「待たせたな——下がれ、私が終わらせる!」


先に店の中に入り込んでいた小鬼を退治していたリゼは、私たちに合流すると、鋭く叫んで剣を構えた。


「女神モリガンの名にかけて——

 黒翼連舞(こくよくれんぶ)ッ!」


次の瞬間、流れるような剣舞と共に黒い羽根が舞い散り、小鬼たちは一瞬で地に這いつくばった——!


王立軍の中でも精鋭揃いと名高い『黒翼戦士団』の団長を務めているリゼは、

目にも止まらぬ剣捌きでファル・グラスを次々と薙ぎ払った。


彼女の冷徹な剣技に一瞬で戦意を失った小鬼たちは、

ギイギイと悲鳴を上げながら逃げていった。


「ふふっ……流れは決まったようね」


ノエルが一歩踏み出て優雅に竪琴を爪弾き始めると、優しい光が仲間たちを包み込んだ。


不思議と疲れが消えて、体が軽くなっていく。

それは吟遊詩人バードの、まるで歌うように紡がれる癒しの魔法だ。


「……ありがてぇ、疲れが吹っ飛ぶぜ!」

「どうしたバルガン、あれしきの戦いで音を上げるお前ではあるまい」

「ちげーよ、その前の大鍋を振るってた疲れだっつーの、ダーッハッハッ!」


しかし、余裕を見せられたのはほんの一瞬だけだった。

次の瞬間、路地の奥から——ぞろぞろと、影のように小鬼たちが湧き出してきた。


「な、なんでこんな数……!?」


十、二十……いや、数えるのが間に合わないほどの早さで増えていく。

黒い波のように市場へ雪崩れ込み、瓦礫を蹴散らし、逃げ遅れた人々を狙って牙を剥いた。


暗がりにぎらりと光る無数の赤い瞳。

その異様な光景に、背筋が凍る。


「くっ……これじゃキリがない!」


気付けば、私たちは完全に取り囲まれていた。

槍の穂先を突きつけながら、ファル・グラスの大群がじりじりと間合いを詰めてくる——!


「おねーたん……!」

みきぽんが震える小さな手でステッキを握りしめる。

「オッケー!」

私はうなずくと、ローブからスマホを取り出して掲げた。


あの時のように配信アプリが立ち上がると、画面からあふれ出したコメントが、続々とホログラムのように私を取り囲んだ。


【うぉぉ、待ってました!今日の配信はこれか!?】

【待ってたよ、まきぽん!】


同時接続者数……300人!?

やば、新記録じゃん!!

「みんなー! 今日も見に来てくれて、ありがとー!」


【まきぽん、また戦ってるの? がんばれ!】

【ちびっこ魔法少女、いけぇ!】


コメントは光の呪文に変わり、渦を巻きながら私の周りを周りだす。


「みきぽん、みんなの声を……!」

「うん! ぜんぶ、ちょーだいでち!」


魔法のステッキから伸びた鉄球に、光の奔流が次々と吸い込まれていく。

一筋一筋が絡み合い、やがて渦を巻きながら収束すると——鉄球の表面に鋭い稲光が走った。


バチィッ! バチバチッ!


火花が四方に散って——

今にも爆発しそうなその迫力に、私は思わず息を呑んだ。


「ひっさつ! マジカル☆——」


【うおおおおおおお!】

【ぶちかませーーーーー!】


みきぽんが振りかぶる。

「シャイニング——モーニングスターーーーッ!!!」


ドッゴォォォォンッ!!!


雷をまとう鉄球が大地を砕き、残ったファル・グラスたちを根こそぎ吹き飛ばした!


……あ、建物もついでに2、3個吹っ飛んでる……ま、いっかw


辺りに舞い上がった土煙が静まり返ると……

そこには呆然とする人々と、誇らしげにポーズを決めるみきぽんの姿があった。


【や、やったぞーーーっ!】

【マジかwww】

【妹、もはやマップ兵器……】


「みきぽん、すっご……」

「えっへん! またまたおねーたんをまもったでち!」


私はその愛らしい笑顔に思わず笑ってしまった。

そしてどこからともなく拍手が巻き起こり、市場の人々が口々に叫び出した。


「助かったぞ、冒険者たち!」

「ありがとう! 魔法少女ちゃん!」


歓声と拍手が市場を揺らす中、胸の奥に引っかかるものがあった。

……そうだ、これだけは言わなきゃ。


「……あのっ!」

思わず声を張り上げる。

「お店、いっぱい壊しちゃって……ごめんなさい!」

頭を深く下げた私に、一瞬だけ場が静まり返る。


けれど、杖をついた市場の長老がゆっくりと歩み出てきて、穏やかな声で言った。


「フォフォフォ……いいんじゃよ。

人の命さえ無事なら、店などいくらでも建て直せる」


その言葉に、胸がじんと熱くなった。

「……ありがとうございます!」


涙がこぼれそうになるのをこらえた瞬間、再び大きな拍手と歓声が広がっていく。

あふれんばかりの温かさに包まれて、私は——

やっと、この異世界に『居場所』を見つけた気がした。


※今週は毎日更新予定です!

 次回もお楽しみに♪

読了ありがとうございます!

市場に現れたファル・グラスを、みきぽんの 「マジカル☆シャイニング・モーニングスター!!」 がド派手に吹き飛ばしましたね!

……ついでに建物も2、3軒ほど消えましたが(笑)


まきぽんが『ここで生きていい』と感じ始めた、大切な転機の回でした。


次回——

みきぽんの入団祝いは 異世界居酒屋で大騒ぎ!?

みんなでワイワイ、生配信も始まって——

酒場で繰り広げられるドタバタの陰で、まきぽんが感じた『違和感』とは……!?


評価・ブクマは、作者にとって最高のごほうびプリンです!

「推しキャラ」や「心に残った台詞」なども、ぜひお気軽に感想で聞かせてくださいね♪

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 誤字・脱字報告です。本文から引用させて貰いつつ言わせて頂きます。 (引用)最後に鉄球付きのステッキが「ガシャーン!」と音を立てて顕現し…… (引用)これはやばいかも…… (引用)火花が四方に散って…
かわゆさ♡/\ 破壊力!!/  \ ))    /   /   /100万t/  /   / /   /\ ∧_∧ \  /  ∩*´꒳`*) (( \/   \\⊂)        ) ) )   …
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