第5話「ようこそ《白銀の角笛団》へ!妹と一緒に冒険者ライフ始めます!」
ギルド《白銀の角笛団》の拠点に、いよいよ到着!
個性豊かすぎる仲間たちと出会い、妹・みきぽんの新生活がスタート……
のはずが?
まさかの“ギルド入団試験”勃発!?
プリンで変身する魔法少女(物理)は、みんなに認めてもらえるのか――!
扉を開くと、にぎやかな笑い声が似合いそうな広い食堂と談話スペースが広がっていた。
長机が整然と並び、その奥の壁には、訪れる者を迎えるように《白銀の角笛》の紋章が掲げられている。
「お、おねーたん! ここが……おねーたんのおうちでちか!?」
「んー、ちょっと違うけど……お家……みたいなものかな」
「おっきいでちー!」
二階の天井まで吹き抜けになった、開放感のある大広間。
その真ん中で、みきぽんは目をキラキラ輝かせ、まるで新しいおもちゃを見つけた子どものようにキョロキョロとあたりを見回していた。
そのとき、奥から豪快な笑い声が響いた。
「ダーッハッハッ! ……おお、まきぽんじゃないか!」
厨房からのっそりと現れたのは、筋骨隆々の大男。
髭に覆われた顔は岩のようにいかついのに、エプロンを付けて手には包丁を握っている姿は、どこかユーモラスだ。
「ん? おチビちゃん、腹は減ってないか?
……肉、いや野菜だな! 野菜を食わんと大きくなれんぞ!」
「や、やさい……?」
みきぽんが首をかしげると、男は豪快に笑った。
「ダーッハッハッ! 待ってろ、すぐにうまい野菜スープを作ってやる!」
(見た目は完全に肉食系なのに……まさかの野菜推し!? 健康志向すぎでしょ!)
――その声に重なるように、今度は柔らかな声がした。
「まぁまぁ、バルガンさん。そんなに脅かさなくても〜」
近づいてきたのは、竪琴を抱えた若い女性だった。
蜂蜜色の長いウェーブヘアーに、体の線に合わせて優雅な曲線を描くローブ。
穏やかな微笑みは、場の空気を一気に和らげた。
「はじめまして、私はノエルよ。
まぁ ……なんて可愛い子なの〜? まきぽんちゃんの妹さん?」
「そ、そう……妹……多分……」
「みきぽんは、おねーたんのいもーとでち!」
「みきぽんちゃんっていうのね、よろしくね♡」
胸を張って自己紹介するみきぽん、ノエルはにっこり微笑んで頭を撫でた。
「ふふ……疲れてない〜?
あとであま〜い蜂蜜のお菓子を用意してあげるわね」
「はちみつ! わーい!」
みきぽんはぴょんぴょん跳ねて大喜びしている。
――だがその時、穏やかながらも鋭い声が響いた。
「……ノエル、子どもを甘やかしすぎだ」
振り返ると、銀色の鎧をまとった長身の女戦士が立っていた。
腰の剣に手を添えて、まっすぐな瞳でこちらを見据えている。
「私はリゼ……妹さん、ようこそ。
このギルドの皆は優しい……安心していい」
リゼの言葉はぶっきらぼうで、最初は少し怖く感じた。
けれど、その奥に優しさがあることを――今の私ならちゃんとわかる。
「リゼたん!」
みきぽんが思わず飛びつこうとしたので、私は慌てて止めた。
「こ、こらみきぽん! いきなり抱きついちゃダメ!」
リゼはわずかに咳払いしながら、照れ隠しのように呟いた。
「初対面で私を恐れないとは……まったく、元気な子だな」
(ふふっ)
私はそんなやりとりを見ながら、心が穏やかになっていくのを感じていた。
そうだ、ここに帰れば、いつも仲間たちが待っている――。
みきぽんも満面の笑みで、すっかり安心しているようだ。
「おねーたんのおともだち、みんなやさしいでち!」
そのにっこり笑顔につられるように、ギルドの仲間たちにも、自然と笑顔が広がっていった。
――そのときだった。
奥の扉が静かに開き、低く落ち着いた声が響いた。
「……随分と賑やかですね」
書斎から現れたのは、銀の刺繍が施された濃紺のローブをまとった長身の男性だった。
黒髪に銀縁の眼鏡。
その奥の瞳は、見た目の年齢よりも遥かに老成した落ち着きをたたえている。
この人こそ、ギルド《白銀の角笛団》のマスター。
そして宮廷付きのドルイドを務める、我らがリーダー、エリアスだ。
「あ、エリアス!」
私は思わず声を上げる。
「……その子は?」
「この子、名前はみきぽんっていうの。
さっき会ったばっかりなんだけど……帰る場所もないみたいで……」
私は胸の前でぎゅっと手を握りしめ、決意を込めて言った。
「この子を、ギルドに……私たちの仲間に入れてもいいかな?」
みきぽんはパッと笑顔になり、飛び跳ねながら声を上げる。
「おねーたんといっしょ! ギルドのみんなといっしょ! みきぽん、はいりたいでち!」
場がほっこりした雰囲気に包まれる……が。
「……ちょっと待て」
鋭い声が割り込んできた、リゼだ。
「子どもをギルドに入れるだと?
何を言っているんだ、戦いは遊びじゃないんだぞ」
ピリッとした空気が流れ、みきぽんが不安そうに私の袖を掴む。
「おねーたん……」
私は返す言葉に詰まった。たしかに、リゼの言うことは正しい。
ギルドは子どもの遊び場じゃない。
ましてや、危険と隣り合わせの戦場にこんな小さな子どもを連れて行くなんて――。
「うーん……リゼの意見ももっともなのよねぇ」
さっきまで乗り気だったノエルまで、顔を曇らせている。
雲行きが怪しくなってきた。
みきぽんは私のローブをきゅっと掴んで、私の後ろに隠れるように身を寄せた。
「でも、みきぽん――この子は、あのバロールをやっつけたんだよ!」
「なっ……!?」
「おいおいバロールだと? おチビちゃん本当か!?」
ギルドメンバーたちが一斉にざわめく。
私は、みんなにさっきの戦いの様子を説明した。
………………。
…………。
……。
「え?……ぷりん?」
「マホーショージョ……というのはなんだ?」
みんなの頭に巨大なハテナマークが浮かんでいるのが、目に見えるようだ。
……ですよねー! はぁ……あんなの信じてもらえるわけがないよ……。
重い空気がギルドハウスに流れる。
「分かりました――そこまで言うなら、その子の強さを我々に証明してみせてください」
沈黙を破るように、エリアスはゆっくりと言葉を紡いだ。
「……そ、そうよ、まきぽんは嘘をつくような子じゃないわ!」
ノエルも加勢してくれる。
証明? 一体どうやって――?
「先ほど、魔物の群れが街に近づいているとの知らせがありました。
ですが、あいにく警備兵は夕刻の見回りで出払ってしまっています――」
エリアスは、トレードマークの眼鏡をクイっと持ち上げた。
「その魔物を見事退けられたなら、その子を“仲間”として認めましょう」
「……なるほど、入団テストってことね」
ノエルがつぶやく。
リゼは渋い顔をしながらも、腕を組んで黙り込んでいる。
その時、バルガンの豪快な笑い声が、場の重い雰囲気を掻き消すように響き渡った。
「ダーッハッハッ! 面白いじゃねぇか、やってみろ!」
私はみきぽんの手を強く握りしめる。
「……わかった。やってみせる!」
みきぽんも負けじと胸を張って言う。
「あい! みきぽんやるでち!」
――こうして、私たち姉妹の『最初の試練』が始まろうとしていた。
街を襲う影が、すぐそこまで迫っていた――
※今週は毎日更新予定です!
次回もお楽しみに♪
ここまで読んでくださってありがとうございます!
個性強めなギルドの仲間たちに囲まれて、少しずつ居場所ができていく――
でも、みきぽんはまだ“一人前”とは認めてもらえなくて!?
次回、いきなり街が大ピンチ!?
魔法少女VSモンスターの本気バトルが始まる!
ド派手すぎる戦闘に、モンスターどころか街もピンチかも!?
次回第6話も、お楽しみに♪
ただいま《アーススターノベル大賞9》に応募中です!
もし「面白い! 続きが読みたい!」と思っていただけたら、
ブックマーク・評価で応援していただけると、とっても励みになります♪