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異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

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第39話「二つの前線——守りたいものがあるから」

境界の聖域に向かう決意を固めたまきぽんに、瑛士が声をかけます。


彼がまきぽんに授ける秘策とは……?

「——それから、もう一つ」


決意を固めた私たちの前で、瑛士さんはブリギッドへと視線を向けた。


「ブリギッド。まきぽんのアカウント権限を、戦闘系に限って一時的にフルアンロックしてくれないか」


「全てを……解放するというのですか?」


ブリギッドの顔が不安に曇る。


「マスター、それは推奨できません。

 高位魔術は、適切な訓練と段階的な解放が前提で——」


「わかってる。でも、今は時間がない」


彼は固い決意を示すように続ける。


「本来なら、きちんと適正試験をしてから渡すべき力なんだろうけど……

 今はそんな悠長なことを言っていられないからね」


「げっ、試験?」


試験、という言葉に拒絶反応を示した私に、

クスッと笑うと、今度はまっすぐに見つめてきた。


「今から君を、この世界の魔法呪文を全て使えるようにしてあげるよ」


「全て……?」


その言葉が脳に浸透するまで、時間がかかった。


「……えっ、ええぇぇっ!?」


待って待って待って!?

何百時間もレベル上げをして、強い敵をたくさん倒して、めっちゃ高い巻物を買わなきゃいけないような高位呪文……


それが、一気に全部!?


「ああ、多少乱暴な免許皆伝だけど——

 君なら、きっと使いこなせる」


「……免許、皆伝……?」


瑛士さんはゆっくりと頷いてくれた。


「それって……私、認めてもらった……ってことかな?」


胸の奥がじんわり熱くなり、思わず涙がこぼれてしまった。


「おねーたん、また、なきむしたんでち?」


みきぽんが心配そうに見上げている。


「ううん、違うんだよみきぽん。……私、嬉しいの」


そして瑛士さんに向かって、晴れやかな笑顔を向けた。


「……ありがとう。私、『エリアス先生』の自慢の弟子になれるよう、頑張る……!」


「先生?」


一瞬きょとんとしたあと、瑛士さんは照れくさそうにはにかんだ。


「それは光栄だな。——ブリギッド、実行を」


「了解しました。

 まきぽんの詠唱権限を、管理者監督下で一時的に全解放します」


ブリギッドが指先をひらりと振ると、私の目の前に半透明のウィンドウが開いた。


《SYSTEM:ユーザー【makipon】の魔術権限を更新しました》

《使用可能スキルリスト:上級・禁術カテゴリを一時解放》

《注意:高位魔術の連続使用は、精神負荷および魂への反動を伴う可能性があります》


「へ!? 『禁術』って書いてあるんですけど!?」


「だから乱暴って言ったんだよ」


瑛士さんは、真面目な顔に戻って言った。


「いいかい、まきぽん。

 全部使えるからって、闇雲にぶっ放していいわけじゃない」


「うん……」


「君のスキルで無尽蔵に魔力が供給されるとはいえ、強力な魔法は、時に精神や魂へ反動を伴う恐れがある。

 ——この僕が、ルーグ・ラスターを使えないようにね」


「じゃあ、どうすれば……?」


「ここぞという時に、君が有効だと思う魔法だけを撃つんだ。

 今の君なら、それがわかるはずだ」


これからは、戦闘で瑛士さんのサポートは受けられない。

全部、自分で考えて戦わなくちゃいけないんだ。


判断を間違えたら現実世界の身体だって危ない——

それはもちろん、死を意味している。


事の重大さに押しつぶされそうになったけど、それでも、私は前を見据えて強く頷いた。


挿絵(By みてみん)


「……うん、わかった。

 私、ちゃんと先生の期待に応えてみせるよ!」


瑛士さんは、満足そうに目を細めた。


「よく出来ました。それでこそ、僕の自慢の生徒だ」


私は、スマホと、目の前のウィンドウをぎゅっと見つめた。


(大丈夫、私にはみんなの力がある——)


そう心の中で呟き、私はウィンドウを閉じた。そして——

隣にいる、誰よりも頼もしい妹の手を握りしめた。


「私……やってみせる」


声が自然と震えた。


もちろん恐怖もあるけど、

期待と責任感が、複雑に混じった気持ちが押し寄せてくる。


(だって、ここまで来ちゃったしね)


今さら、運命を前にして震えているだけの私には、もう戻れない。


 * * *


その時、コアルームの扉が開いて——


「女王陛下の召集を受けて、黒翼戦士団長、参上いたしました」


凛とよく通る声が、石壁の室内に響いた。

振り向くと、漆黒のマントを翻しながら、勇ましい影がこちらへ歩いてきていた。


黒い軽鎧に、闇の翼のようにたなびく長髪。


「……リゼ!」


彼女は軽く顎を引いて挨拶すると、ブリギッドと瑛士さんの間まで歩み出た。


「状況は把握した。

 リアンナハ周辺に、イービルアイの群れが迫っているんだな」


「はい。現在、十数体を確認して、

 王立軍と、有力ギルドの冒険者たちが迎撃に向かっています」


瑛士さん——いや、リアンナハの軍師、エリアスが簡潔に応じる。

リゼは、壁に貼られた地図を見据えた。


「了解した。黒翼団は、王立軍と共に防衛線を張る。

 コアルームへのルートは、我らが死守する」


「心強いです、リゼ」


エリアスは、真剣な表情で頷いた。


「この部屋と、ルグの繭がある限り、希望は残りつづける。

 ……頼みましたよ」


「承知した」


リゼの返事は短く、それだけ。

でもその一言には、揺るぎない決意が宿っていた。


「……まきぽん」


私の方を振り返ったリゼの瞳は、相変わらず真っ直ぐだ。


「お前は、お前の戦場へ行け」


「……私の、戦場?」


「ああ、境界の聖域は任せた」


リゼは、口元にほんの少し、笑みを浮かべた。


「お前ならできる。

 お前とみきぽんは……

 普通の女の子みたいな顔をして、いつもとんでもないことをしてくれるからな」


「な、なによそれ……」


「頼んだ」


言葉は短く、それだけだったが、

その信頼の重さに、思わず背筋が伸びた。


「ノエルとバルガンにも、よろしくな」


「……わかった」


ノエルの微笑みと、バルガンの笑い声が脳裏に浮かぶ。


「——では、作戦を確認します」


エリアスが、一同を見渡した。


「第一戦場。王都リアンナハ防衛線。

 黒翼団・王立軍・各ギルドが迎撃に当たります」


リゼが頷く。


「第二戦場。境界の聖域。

 バルガン、ノエル、まきぽん、みきぽんからなる小隊が向かい、

 ルグの繭を守ります」


今度は、私が小さく頷いた。


「そしてコアルームは陛下と私が。

 全体指揮と、ルグの構築はここで続行します」


エリアスは一度目を閉じてから、静かに言葉を結んだ。


「これは、私たち全員の『帰る場所』を守るための戦いです」


胸の奥で、心臓がトクンと高鳴る音がした。


怖いけれど、逃げたくない。

泣きたいけれど、前を向きたい。


(そうだよ。これは——)


私とみきぽんの、ギルドのみんなの。

瑛士さんの——そしてリヒトだって、きっと本当は求めていた……


『帰る場所』を守る戦いなんだ。


「……行こう、みきぽん」


「あい! おねーたんといっしょなら、どこでもいけるでち!」


小さな手が、ぎゅっと私の手を握り返す。


「まきぽん」


最後に、エリアスが私を呼び止めた。

振り向くと、彼は限りなく温かい笑みを浮かべていた。


「——必ず、帰ってきてください」


短い言葉なのに、その中にどれだけの想いが込められているのか。

それが伝わってきて、また目頭がじんわりと熱くなる。


「もちろん。だって——」


私は、涙を払って笑ってみせた。


「私たちは『帰る場所』を守るために、行ってくるんだから!」


瑛士さんは、眼鏡の奥で優しく目を細めた。


「うん……いってらっしゃい」


 * * *


リアンナハの街に戻ると、すでにあちこちで警鐘の音が鳴り響いていた。

見上げた空には、暗雲が立ち込めている。


私は一度だけ振り返り、王城の塔の上に目を向けた。


そこに、コアルームへ続く窓がある。

きっと今も、あの部屋で——。


(エリアス、ブリギッド、リゼ……)


胸の奥で名前を呼び、

私は、みきぽんと手をつないだまま、ギルドハウスへと駆け出した。


そこには、バルガンとノエルが待っている。

そして、私たちの『第二戦場』への遥かな旅が始まるんだ——。

いよいよ次回から、戦場を二つに分けてのドラマが始まります!


なお、それまで軍師エリアスとして皆に指示を出していた瑛士ですが、最後の

「いってらっしゃい」

だけは「瑛士」のセリフとして書いています。

気づいていただけたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
・・・防衛戦、集団戦闘、禁術。 心躍る魅惑の言葉。 これは久々にモーニングスターが火を吹く予感(*´∀`)
    /⌒ヽ    / ´ ω ` \  我々も貯蔵された  _ノ ヽ ノ \_   食材達を `/ `/ ⌒Y⌒ Y ヽ  フルアンロックするぞ (  (三ヽ人  /   | | ノ⌒\  ̄ ̄…
 突如、リゼのもとに使いの者が現れて緊急事態を告げる。 「以上、女王陛下からの勅命である。なお黒翼戦士団・団長リゼは至急、○○の間へ来られたし!」  なーんてやり取りが起きてそうですね。これは完全に…
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