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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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第4話「初めて、なのに懐かしい街——王都リアンナハ」

バロールとの死闘を越えたその先にあったのは——

ゲームで何度も見た、でも『現実』として歩くのは初めての街、王都リアンナハ。

不安もあるけれど、ふたりなら——きっと、大丈夫!


そんな想いを胸に、二人は冒険者ギルドを目指します。

果たして魔法少女(物理)は、仲間として受け入れてもらえるの——?


凸凹姉妹の新生活が、ここから本格スタートです!

ぜひ、最後まで読んでいってくださいね♪

「……ふぅ……」

私は思わず深いため息をついた。


バロールが姿を消してからしばらく経つけど、バクバクしていた心臓はまだ落ち着かない。

それでも、こうして草原の風を受けながら歩いていると——

少しだけ現実感が戻ってきた。


「おねーたん♪」

隣を歩く『妹』のみきぽんが、私の手をぎゅっと握りしめてくる。


こんなに幼く小さな体で、巨大なバロールに立ち向かって、私を守ってくれた……。

あの時の姿を思い出すと、胸がじんと熱くなる。


「ねぇみきぽん、あなたはどこから来たの?」


私はそっと問いかけた。

みきぽんは一瞬きょとんとした顔をすると、

わからない、とでもいうようにふるふると首を振った。


「……お家は?」


「……みきぽん、おうちないでち。ずっとここで、おねーたんをまってたでち」

小さな声でそう言うと、迷子の子犬のように寂しそうに俯いた。


「えっ……」

胸がきゅっと締めつけられる。

この子は、本当に……異世界で私を待っていた?


それが何を意味しているのかは、わからない。

でも、確かなのは——この子に行く場所はない、ということ。

(このまま放っておけるわけないよね……)

私は少しだけ空を仰ぎ、決意を固めた。


「じゃあさ、私のギルドにおいでよ。

『白銀の角笛団』のみんななら、きっと受け入れてくれると思う」


「ぎるど?」

「うん、おねーたんのお友達、だよ!」

「……おともだち!?」


みきぽんの顔がぱぁっと明るくなった。

その笑顔に、不安で曇っていた私の心は少し晴れた。


——でも。

みきぽんには笑顔を見せているけど、心の奥では、もっと強い不安が渦を巻いていた。


(私……ほんとに、異世界に来ちゃったんだよね……?)


学校は? 友達は? おかーさんは?

私……このまま、帰れなくなっちゃうの?


そんな気持ちに潰されそうになりながらも、私はみきぽんの小さな手を握り返した。


もしここが本当に『ティルナノ』なら、

この草原の近くには王都リアンナハがあるはずだ。

そして、そこには私たちのギルドハウスがあり、仲間たちが待っている——はず。


私たちは柔らかな草を踏みしめながら、草原の向こうに見える石の城壁を目指した。


 * * *


「……やっぱり、あったんだ……」


ゲームの中では毎日くぐっていた、見慣れた石造りの城壁。

それが今、暮れかけた空を背景にして、目の前に高くそびえ立っている。

初めて見るのに懐かしい……ちょっと奇妙な感覚。


ここは 王都リアンナハ——

女神ブリギッドの血を引く偉大なる女王に守護された、この世界の中心。

そして、私たち冒険者が最初に立ち寄る拠点となっている街だ。


「うわぁー!」

みきぽんは目をまんまるにして、初めて見る大きな城門を見上げている。

石壁に刻まれた古代文字、鉄で補強された頑丈な木製の大扉、

そして門を守護する角笛を抱えた衛兵たち。


「いつもの街」は、私たちを迎え入れるかのように静かに佇んでいた。


 * * *


城門を抜けると、まっすぐに伸びた大通りの脇には露店や

建物がぎっしりと並び、街は今日も人々の活気と笑い声であふれていた。


竪琴を奏でる吟遊詩人、パン屋から漂う香ばしい匂い、子どもたちのはしゃぎ声……

賑やかで、心が弾む。


「おねーたん! あれみて! きらきらでち!」

みきぽんは宝石を並べた商人の露店に釘づけになっている。


「こっちはおっきいパン! あ、あっちはなんでち? およーふくでちか!?」

目に映るもの全てが珍しいのか、みきぽんは大きな瞳を星みたいにきらめかせて、

メインストリートをまるでテーマパークのように楽しんでいる。


大通りを抜けると、そこにはこの街の象徴でもある、大きな噴水の広場が広がっていた。


女神ブリギッドの像が水を湛える『えにしの泉』。

水を汲んだり、旅の無事を祈って手を合わせる人々の姿が見える。


「おねーたん! おみず! きらきらでち!」

「……ほんとだね。すごく、綺麗」


夕日を受けて噴水に虹がかかる。

その輝きに、胸がじんわり熱くなった。

街の中でもお気に入りの景色を、誰かと共有できる日が来るなんて。


でも——ふと、不安がよぎる。

友達やおかーさん、心配してないかな……?


「……おねーたん?」

みきぽんが心配そうに見上げてきた。私は慌てて笑顔を作る。

「ううん、なんでもない! さ、行こっか」


噴水を後にすると、さらににぎやかな市場通りにたどり着いた。


果物屋の前に来た瞬間、みきぽんの瞳がこれ以上ないくらいに見開かれた。

「おっきなりんご! まっかでち! おねーたん、たべよ!」

「ちょ、ちょっと声大きいって……」

「んー! おねーたんといっしょにたべたいでち〜!」

はしゃぐみきぽんに、通りすがりの人々も温かな笑顔を送る。


ほんの少し前に出会ったばかりなのに、もう当たり前のように隣にいる。

……みきぽんって、不思議な子だ。


「おねーたーん、はやくー!」

小さな手をぶんぶんと振って、一生懸命に私を呼ぶみきぽんの姿に、

気づけば私も自然と笑顔になっていた。


 * * *


市場を抜けると、いよいよ城下町だ。


石畳の大通りを進むと、真っ先に目に入るのは銀の角笛を掲げた館だった。

白い石壁に青い屋根瓦、分厚い木の扉。

そして窓からこぼれる灯りと、笑い声と、肉を焼く香ばしい匂い——。


ここが私たちのギルド、信頼できる仲間たちが待っている『白銀の角笛団』の拠点だ。


(みきぽん、みんなに受け入れてもらえるかな……)

私は決意を固めてキィ、と扉を押し開けた。


「ただいまー……誰かいる〜?」

初日ランクインを果たすことができました!

これも皆さんにたくさん読んでいただいたおかげです……

本当に、本当にありがとうございます!


さて、初めての大ピンチをなんとか切り抜け、ようやくたどり着いた王都リアンナハ。

でも本当の冒険はここから——!


次回、第5話ではいよいよ『白銀の角笛団』の仲間たちが登場!

剣士? 詩人? それとも……お料理好きの戦士!?

個性豊かなギルドメンバーと、まきぽん&みきぽんがどんなドタバタを繰り広げるのか……ぜひお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
みきぽんに癒やされるぅ   ▲∞∧    ▲∞∧   (*・∀・) (・∀・*)  ⊂(   ⊃⊂(   ⊃    ⊂ーJ… ⊂ーJ...テチテチ♪ 次も楽しみにしてます
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