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異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

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第29話「涙の日——エリアスの『罪』と、この世界の秘密って……?」

縁の泉に映った現実を垣間見て、ショックを受けたまきぽん。

今回は、ギルドに戻ってからのお話です。

初めて招かれたエリアスの書斎で、まきぽんは世界の秘密と、彼の「罪」と向き合う決断を迫られることに——!?

私は泣き腫らした顔のまま、

ノエルとみきぽんに支えられるようにしながら、ギルドハウスへと帰ってきた。


ギィ、と重厚な木の扉を押し開けると、

テーブルではエリアスが遅めの昼食を摂っていて、

バルガンは木のお玉を片手に、その様子を満足そうに眺めていた。


「おぅ、おかえ……おいおい! どうしたんだよ!?」


「まきぽん、何があったのですか……?」


二人とも、只事ではない私の様子を見てギョッとしている。


「それがね……」


ノエルは私をエリアスの隣の席に座らせると、

縁の泉であった出来事を、自分にわかる範囲で説明した。


「まきぽんちゃん、泉を覗き込んだ途端に顔色が真っ青になって……

 そのまま膝から崩れ落ちて、ずっと泣いていたのよ」


その間にも、みきぽんは私の手をギュッと握っていてくれた。


「うーん、あの泉には不思議な言い伝えがあるもんな。

 そいつが一番知りたいと思っていることを、見せてくれるとか……」


「そうね、まきぽんちゃん、一体何を見ちゃったのかしら……」


エリアスの眼差しからも、私を心配してくれていることが伝わってくる。


「……とにかくよ、みんな座れ」


バルガンはそう言って厨房に戻ると、しばらくして私たちに熱々のスープを持ってきてくれた。


「まぁ、これでも飲めよ。落ち着くぜ」


ごろっと野菜の入ったスープ。

手に渡されたカップから、じんわりと温かみが伝わってくると

それだけでまた涙がこぼれそうだった。


「おいちーでち♪」


「ほんとね、お腹の底からあったまるわぁ」


「そうだろうよ、なんせこのにんじんは、ちびっ子が丁寧に洗ってくれた特別なヤツだからな!

 ダーッハッハッ!」


「えへへ」


バルガンの豪快な笑い声と、みきぽんの無邪気な笑顔が、

ギルドの食堂を春風が吹き抜けたみたいにあたためてくれる。


しばらくして、呼吸がようやく整った頃。


「……まきぽん」


エリアスが、優しい声で語りかけてきた。


「後で、私の書斎で少し話しませんか?

 ……落ち着いたらで構いませんので」


私は黙って頷くと、残りのスープを飲み干した。


 * * *


書斎に行く前に、さすがにちょっと身だしなみを整えようか。


洗面所の青銅製の鏡を見つめて、ため息をついた。

真っ赤に充血した目に、乱れた髪。


私は慌てて顔を洗った。

……でも。


(おかーさんは、もっとやつれてたな……)


あの様子を思い出すたびに、胸がズキズキと痛くなる。


 * * *


エリアスの書斎はギルドハウスの二階、北側の一番奥にある。


——コンコン。


ノックをすると、中から「どうぞ」という声が聞こえてきた。


「失礼しまーす……」


ここはエリアスの私室になっていて、中に招かれるのは私も初めてだ。

なんだか、職員室に呼び出されたみたいで、ちょっと緊張しちゃう。


(うわぁ……)


扉を開けた瞬間、インクと古い紙の匂いが鼻をくすぐった。


正面には大きな木の机があり、その後ろは壁一面の本棚。

机の上には書きかけの地図のようなものと、インク壺に刺さった羽ペン。


部屋の中は時が止まったように静かで、ここだけ空気の温度が違う気がする。

なんか……エリアスの頭の中って、きっとこんな感じなんだろうな。


エリアスは私の姿を見ると、ふと作業の手を止めた。

立ち上がると、私に窓際のソファをすすめ、自分はその向かいに座った。


そして、仕事の疲れを取るかのように、眼鏡を外して目頭を揉んだ。


あ、これは……


「……瑛士、さん?」


「……はい」


北の洞窟でも見せた、エリアスの素顔。

彼は今、ティルナノこのゲームの開発者、榊原瑛士なんだ。


「……見たんだね、泉で」


「うん」


私はうなずいた。

そして、胸に刺さったままの言葉を少しずつ、少しずつ伝えた。


現実の私の姿。


泣いていた母。


帰らなきゃいけないと思ったこと。


言葉にするたびに胸が痛くて、ちゃんと伝えられたかどうかわからなかったけど……

瑛士さんは一度も遮らずに、最後まで黙って聞いてくれた。


挿絵(By みてみん)


「そうか……辛かったね」


その眼差しはとても柔らかくて、また目頭に涙が溢れてきそうになった。


瑛士さんはしばらく黙り込んだ。

机上の書きかけの地図に視線を落とし、何かを考えているようだ。


そして少しだけ目を伏せてから、

彼は意を決したように、ゆっくりと語った。


「やっぱり、君には話さなくちゃいけないようだ。

 この世界の秘密と——


 僕の罪を、全部」


「……えっ?」


罪……? 

瑛士さんは、確かにそう言った。


「明日、王城に来てくれる?」


「……お城に?」


「ああ、君に——見せたいものがある」


胸の奥が、ぎゅっとなった。


「えと、みきぽんは……?」


瑛士さんは、微笑んだ。

それは、ほんの少し不器用で、でも優しい笑みだった。


「そうだね、みきぽんも一緒に」


私は、少し掠れた声で答えた。


「……わかった」


それだけで精一杯だった。

瑛士さんがまた眼鏡をかけたのを合図に、私は彼の部屋を後にした。


 * * *


自分の部屋に戻り、ドアを開けると

みきぽんは、ベッドの上で膝を抱えて待っていた。


ハッとして私を見た大きな瞳は、涙に濡れていた。


「おねーたん……」


私はかける言葉もなくて、ただ、みきぽんを抱きしめた。


ぎゅっ……。


心臓に近いところが、じんじんと熱く痛んだ。


「ねぇ……どうしたら、いいの……」


声を震わせる私に、みきぽんはそっと寄り添い、小さな腕を背中に回してくれた。


「みきぽん……どこにもいかないでち。

 おねーたんのとなりに、いるでちよ」


みきぽんの温もりが伝わってくる。


「……うん、ありがとう……」


そうだ、今日はもう何も決めなくていい。


明日、聞こう。


明日、向き合おう。


今はただ——

このぬくもりを離さないでいよう……。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

まきぽんの、二つの世界の間で引き裂かれる思いが、じわじわと形になってきた回でもあります。


さて、次回からはいよいよ王城パートに突入します!


もし印象に残った場面や、まきぽんやみきぽんへの一言などあれば、

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