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異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

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序章3「祝宴の夜、あたたかな光に包まれて」

リアンナハに帰還して、歓迎のパレードやフィブラ授与の栄誉を受けた遠征隊。

いよいよ今回は、その功績を称えられ、女王主催の祝宴が開かれるお話です。

謁見の間を後にして大理石の廊下を進むと、私たちは小さな控えの間へと案内された。


「祝宴の準備が整うまで、こちらで少しお待ちくださいませ」


女官がそう言い残して扉を閉めると、一行はほっと肩の力を抜く。


「ふぅ……やっと終わったなぁ」


「緊張しましたね〜」


バルガンはノエルと顔を見合わせると、一つ大きく伸びをした。


私はみきぽんの勲章が曲がっていないか直してあげていたが——ふと気づいた。


(……あれ、エリアスどこ行ったのかな?)


廊下の奥で控えめな音がして、振り返ると……

扉が静かに開き、エリアスが姿を現した。


「お待たせしました」


つい先ほどまで、いつもの深い青のローブだった彼は、

銀の刺繍が施された祝祭用の白いクローク(外套)に身を包んでいた。


「エリアス、着替えてきたんだね!」


「おう……お前、なかなか似合ってるじゃねぇか!」


驚いた私たちの声に、彼はわずかに照れ笑いを浮かべた。


雪のような純白のクロークは、灯火を受けてほのかに光り、

彼の佇まいに静かな気品を添えていた。


「祝宴には、式典用の装いをする決まりでして。

 普段はあまり着ないのですが……今日は特別ですから」


「特別かぁ……なんか、余計に緊張してきたかも!」


そう呟く私に、彼は微笑んだ。


「大丈夫ですよ。皆、あなたが来るのを楽しみに待っています」


エリアスが踵を返すと、白いクロークの裾がふわりと揺れた。

その後ろ姿には、王都を導く賢者としての威厳が宿っていた。


私の魔術の先生でもあり、ギルマスとして近くにいてくれるけど……

こうして見ると、やっぱり彼はこの国を背負う

どこか遠い存在なんだと感じてしまう。


そして私たちは、再び歩き出した。

これから始まる祝宴に、期待と少しの不安を感じながら——。


 * * *


王城の大広間は、今が夜であることを忘れさせるほど、穏やかな光に満ちていた。


壁には銀の燭台が並び、ゆらゆら揺れる炎が石造りの空気に柔らかく影を落としている。

天井近くの梁からは、リアンナハの紋章が施されたタペストリーが揺れ、

その元には多くの兵士や貴族、職人たちが集まり、祝祭はいよいよ熱を帯びはじめていた。


「わぁ……すごい……!」


華やかな祝典の様子を目の当たりにして、ノエルは頬を両手で包み、瞳を輝かせた。


「すげえな、こりゃあ見ただけで腹が鳴るぜ……!」


バルガンの視線は、すでにテーブルの豪華な料理の数々に釘付けだ。


リゼは黒翼団の精鋭たちを率い、

玉座の右前——王を守護する者の定位置に静かに控えていた。


彼女も祝宴の主役であることに変わりはないのに、

鋭い眼差しで、周囲の気配を一瞬たりとも見逃さない姿勢からは、戦士としての矜持が滲み出ている。


「おねーたん、みてみて! おっきいおにくでち!!」


みきぽんは、手を繋いでいないと今にもテーブルに突撃しそうな勢いだ。


「みきぽんっ……まだ始まってないから我慢して……!」


そんな私たちを迎えるように——

ポロン、と柔らかく澄んだ音が大広間に広がった。


すると——

ハープから、泉のさざめきのように細やかな音色が流れ出し、

続いてティンホイッスルが、風のように高く軽やかな旋律を乗せる。

最後にバウロンが トン、タッ と大地の鼓動のような低音で包み込んだ。


それぞれの音が重なった瞬間、

ケルトの古い伝承を思わせる、どこか懐かしいメロディが広間の隅々まで満ちていく。


その旋律は、そっと毛布で包み込まれるかのように暖かく、

私は、胸の奥の緊張が少しずつ溶けていくのを感じた。


「——では、始めよう」


宰相が歩み出て、堂々たる声で宣言する。


「白銀の角笛団、ならびに黒翼戦士団。

 このたびの大遠征の功績を称え、ここに女王陛下主催の祝宴を開く!」


その声を合図に、大広間が一気に明るく沸いた。

沸き起こる拍手、声援、笑顔。

先ほどの荘厳な謁見の間とはまた違う、あたたかな祝福の空気が広がった。


そして最初に名を呼ばれたのは、やはり我らがギルマスだった。


「王宮付きドルイド——エリアス殿!」


エリアスが一歩前へ進む。

けれど壇上に向かう直前、彼は静かに振り返った。


「——その前に、ひとつだけ」


宰相が驚いたように瞬く。

大広間のざわめきが、潮のようにすっと引いていった。


「私から皆さまに、お伝えしたいことがあります」


エリアスの穏やかな視線が私と、

こっそりテーブルのパンに手を伸ばそうとしていたみきぽんへと向けられる。


「北の洞窟で、最も勇敢に戦ったのは……私ではありません」


エリアスの唐突な告白に人々はどよめいた。

そのざわめきを破るように、毅然としたエリアスの声が響く。


「——この二人です」


「……えっ?」


という声が、震えて喉にひっかかった。

私と、みきぽん……?


「お、おねーたん……よばれたでち……?」


「……うそ、でしょ……?」


トクン、と心臓が震えた。

皆の視線が、一斉に私たちに集まる。


「まきぽんの魔法がなければ、我々は洞窟で進む道を失っていた。

 そして、闇に囚われた者を救えなかった」


大広間が再び、しん……と静まる。


「そして——みきぽん。

 この幼子は、仲間を守るために小さな体で鉄球を振るい、

 誰よりも勇敢に戦いました」


みきぽんが、パチクリと目を丸くする。


「恐れながらも立ち向かったその心に、

 ……私は深く救われました。

 ——私ではなく、この二人こそが王都リアンナハを救った真の英雄です」


——ぱち。


一人の拍手が、静寂を破った。

続いて、もう一人。

そして……


ぱち、ぱち、ぱちぱちぱちぱちぱちぱち——!


大広間は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。


「おねーたん……! すごいでち……!!」


「え、エリアス……わたし……っ」


みきぽんが私を見上げながら、手をぎゅっと握ってくれている。

その笑顔が眩しくて……


涙、出ちゃう……

ダメだ……

ここで泣いたら……。


でも女王が前へ進んだ瞬間、

こらえていた涙が、私の視界を静かに滲ませた。


「まきぽん。みきぽん」


女王フィオナの瞳は、冬の陽だまりみたいに優しかった。


「あなたたちの勇気を、私は忘れません。

 ——王都リアンナハは、あなたたちに救われました」


その言葉は、私の胸に詰まっていた塊をそっと溶かした。


「さあ……前へ」


エリアスが私に向かって小さくうなずいた。


バルガンも、ノエルも、そしてリゼと黒翼団の皆さんも、

私に向かって、あたたかな笑顔と惜しみない拍手を送ってくれていた。


私は涙を拭うと、震える足で一歩前に出た。

みきぽんは飛び跳ねるようにその隣へ。


大広間の中央には、私たち姉妹に向けられた祝福の光が満ちていた。


その中心に立った瞬間——

胸の奥に、温かい感情がふわっと溢れた。


挿絵(By みてみん)


(……ああ。

 私、ここに来てよかったんだ)


音楽が再び奏でられ、祝宴は最高潮へ。


今夜だけは——

涙も、笑顔も、全部そのまま受け入れてもらえた気がした。


みきぽんはにっこりと笑って、私の手を強く握り返した。

王城の大広間は——そしてこの世界は、最初から私たちの居場所だった。

読んでくださりありがとうございます。

祝宴のシーンは、ケルト文化の「共同体の祝福」を意識して描きました。


ケルトの伝承では、

「英雄が帰ってきた夜、村人は火を囲んで歌い、太鼓バウロンで大地の鼓動を響かせる」

と言われています。

その文化を元に、王城の祝宴にもハープ、ティンホイッスル、バウロンの三重奏を取り入れました。


そして、まきぽんとみきぽんが「この世界に迎えられた」と感じる瞬間は、

今後の物語の核心に繋がっていきます。

これからの展開も、どうぞお見逃しなく!

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    ^✿✿^    ( ・ω・)お肉と野菜は  _ノ ヽ ノ \_      1:3 `/ `/ ⌒Y⌒ Y ヽ これが (   |三ヽ人  /  |  ゴールデンマッスル | ノ⌒\ …
 大きなお肉に目を輝かせるみきぽんに不思議な声が囁く。  野菜神バルガン「みきぽん、お肉の前に野菜を食べるのだ。つやつやの野菜を」  余談ですが、エリアスの外見の雰囲気が「時空の絵旅人」に登場するシ…
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