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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
番外編 〜はじまりの物語たち〜

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番外編「いつもの。」〜バルガンとエリアスの出会いの物語〜

第一章『魂の帰る道』を読んでくださった皆さまへ。

まきぽんたちの長い夜が明けたあと——

今度は少しだけ時間を遡って、《白銀の角笛団》が結成される前のお話です。


それはまだ、バルガンとエリアスが「仲間」になる前の夜。

豪快な戦士と、生真面目な魔導士。

性格も生き方もまるで違う二人が、はじめて出会った日のこと。


角笛団の『原点』を描く、ちょっと笑えて、ちょっと熱い物語をどうぞ。

白銀の角笛をかたどった紋章が、ゆらめくロウソクの灯を受けて輝いている。


ギルドハウスの食堂は、今夜も盛況だった。

大鍋で煮込まれたシチューの香りが漂い、テーブルには肉汁したたる鹿肉のグリルと、香ばしい焼き立てのパン。

ジョッキに注がれたエールからは、シュワシュワと泡が弾けている……。


長テーブルにはいつもの仲間たちが集まり、バルガンが腕によりをかけた料理の数々に舌鼓を打っていた。


【うひょー、今日も美味そう!】

【バルガンって、ほんと料理上手いよな】

【俺も食いてぇ……バルガン、俺の嫁に……】

【おいお前w 血迷うなww】

スマホの配信は、今日も飯テロライブに早変わりだ。


「ねえねえ、バルガン」

まきぽんは食事の手を止め、興味津々といった顔で尋ねた。

「そういえばさ、バルガンとエリアスって、どうやって出会ったの?」

「おお?」


バルガンはエールをぐいと飲み干し、豪快に笑った。

「ダーッハッハッ! やっぱり気になるか!

 よし、教えてやろうじゃねえか!」


エリアスは隣で静かにパンをちぎりながら、わずかに眉をひそめる。


「……バルガン、あまり脚色はしないでくださいね」

「心配すんな! 真実を十倍くらい面白く盛って話してやる!」

「その時点で、すでに真実ではないと思いますが……」


そんな二人のやり取りに、みきぽんが目をきらきらさせる。

「おとぎばなしでちか?」

「うん、角笛団の『むかしばなし』だね」

「わぁ……みきぽん、ききたいでち〜!」


みきぽんが身を乗り出すと、バルガンは大きな手をどんと机に置き、語り出した。

「よっしゃ! みんな、聞いてくれ!」


。*❅┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❅*。


——あれは、俺がまだ各地を気ままに放浪していた頃のことだ。


とある村の酒場で、俺はジョッキを片手にのんびりとくつろいでいた。

そこへ血相を変えた村人が飛び込んできたんだ。


「た、助けてくれ! 湖からケルピーが現れた!」


酒場は一気に静まり返った。


「ケルピーだと!?」

「水辺の悪霊か……」


酒場のマスターが店内を見渡す。

「……誰か、討伐を名乗り出るものは?」


冒険者たちは顔を見合わせたが、誰も腰を上げようとしない。


「俺たちにゃ手に負えねぇ……みすみす死にに行くようなもんだ」

「いくら報酬が高くても、命には替えられねぇからな」


その場の重苦しい空気を振り払うように、俺はジョッキをドン、と置いて立ち上がった。


「いいだろう! ちょうど退屈してたとこだ、俺が行ってやろうじゃねーか!」


皆がどよめく。

「あんた、見かけない顔だが……腕は確かなのか?」

「おうよ、どんな魔物でも料理してやるぜ! ダーッハッハッ!」


すると、隣で静かに立ち上がる若者がいた。

「あなた、お一人で行くというのですか?」

「ん? まあな」


濃紺のローブに身を包んだ、黒髪の青年。

落ち着いた雰囲気をまとい、すっと伸びた背筋が清廉な性格を物語っている。


「私もご一緒しましょう。

 視察の途中ですが、このまま見過ごすわけにはいきません」


「……あんた、名前は?」

「エリアスです」

「俺はバルガン——いいぜ、勝手についてきな」


——それが、俺とエリアスとの出会いだった。


。*❅┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❅*。


ジョッキを置いたまま、俺たちはその足で討伐に向かうことにした。


村外れまで歩くと、風に湿気と、生臭い匂いが混じり始めてきた。

ここが魔物が現れた湖か……。

そんなに大きな湖じゃなかったが、そこ知れぬ闇と繋がっているような、不気味な雰囲気に包まれている。


辺りは静まり返り、聞こえるのはかすかな波音だけだった。


俺たちのことを新たな獲物が近寄ってきたと察したのか、水面のざわめきと共に、蒼白い馬の姿が浮かび上がってきた。

赤い瞳が闇夜の中でギラリと光り、濡れたたてがみは水草のように蠢いている。

蹄が湖水を叩くたび、水飛沫が激しく飛んだ。


「ほう……こいつは料理しがいがありそうだな」

戦斧を担ぐ俺の口元に笑みが浮かぶ。


「油断は禁物です。ケルピーに水中に引きずり込まれたら最後——二度と戻れないと言われています」

銀縁眼鏡の奥でエリアスが目を細め、低く呟いた。


ケルピーは大きくひとつ嘶くと、俺たちに向かって突進してきた。


俺は大地を踏み締め、真正面から受け止めた。

衝撃が骨まで響く。


「ぐおっ! いい突進だ!」

力任せに押し返し、戦斧を振り抜いたが、水飛沫に遮られて刃は浅くしか入らない。


ヒヒィィィン!


ケルピーは怒り狂い、口から水を奔流のように吐き出した。

「くそっ、水鉄砲か!」


俺は咄嗟に斧を泥に突き立てて体を支えた。

しかし勢いは激しく、水流に押されてよろめいてしまう。


「下がってください!」


エリアスの声と共に、突き出した杖の先から魔法陣が広がった。

奔流は魔法陣にぶつかると、火花のように飛び散った。


「へえ、魔法ってのは便利なもんだな!」

「何を呑気な……。

 あなたの無鉄砲さを補うので精一杯ですよ!」


再びケルピーが突進してくる。

俺は盾を投げ捨てると、その首に両腕を回した。


「おらぁっ!」


豪快にヘッドロックをかける。

凶馬は暴れ狂い、俺は泥の中を引きずり回された。


「ぬおおお!? じゃじゃ馬め!」


そのまま俺はそいつの背に飛び乗った。

たてがみを掴んで踏ん張り、力任せに戦斧を振り下ろす。

刃がケルピーの肩口を裂き、辺りに赤黒い血が散った。


だが、その程度では魔物の勢いを止めることはできなかった。

振り落とされた俺は、強かに肩を打ちつけた。

「いってぇな!」


「離れて!」


間髪入れずにエリアスの放った雷撃が水面を走る。

俺は急いで水から上がった。

次の瞬間、電流がケルピーの体を襲い、その動きを鈍らせる。


「よっしゃ、いいぞ兄ちゃん!」


俺は再び魔物に飛びかかると、戦斧を叩きつけた。

ケルピーは悲鳴を上げたが、まだ倒れない。

水に身を沈め、不気味にこちらをうかがっている。


「くっそ、しぶてぇな……!」


斧を構え直す俺に、エリアスが真剣な声色で話しかけてきた。


「この魔物は、どうやら水がある限り、無限に回復し続けるようです」

「なっ!? んじゃどうすりゃいんだよ」


「私に策があります。そこで……あの、あなたにお願いがあるのですが」

「お? どうした」

「私は、これから上位魔法を使います。それで……」

「それで?」


エリアスは顔を赤らめ、恥ずかしそうに小声で呟いた。

「もし、私が動けなくなってしまったら、村まで運んでもらえないでしょうか……」


「……はあ??」


しばらく考えて、ようやく何を言われたのか理解できた。

……なるほど、大技をぶっ放すが、その後自分がどうなるかわからねえってことか。


こんなことを頼んでくるやつは、初めてだ。

だが、……面白ぇ!


「おーしわかった! 後のことは俺に任しとけ!」

「お願いします。

 ……では、いきます!」


エリアスは湖畔に片膝をつくと、杖を置き、両手を地面に押し当てた。

すると、指先から淡い光がほとばしり、紋章が幾重にも浮かび上がる。

やがてそれは波紋のように広がっていき、湖全体がすっぽり入るほどの巨大な魔法陣となっていった。


「なっ、なんだ? このでっけぇ魔法陣は!?」


ここまでの規模の魔法を、人が操れるものなのか……。

古代文字が連なり、光の輪のようにどこまでも広がっていく。


「沈黙せし大地よ 眠りより目覚めよ

 荒ぶる雲よ 雷を抱きて集え」


湖水が渦を巻き始めた。

エリアスが腕を掲げると同時に、渦は天へと昇り、蒸気となって空を覆っていく。

冷たい夜風が巻き起こり、頭上には瞬く間に暗雲が立ち込めた。


先ほどまで月明かりが照らしていた空は、たちまち黒雲に覆われ、世界は陰りを帯びる。


「おいおい……マジかよ……」

俺は思わず息を呑んだ。

こいつ——湖の水から雷雲を作り出しやがった!


「……水で回復するなら、湖ごと消し去ろうってことか!?」


「水よ、風よ、我が呼び声に応えよ

 雷の刃となりて 我が敵を撃て——」


雲の中で稲妻が閃き、吹きすさぶ風が大地を揺らした。

湖から立ち昇った雲は一つの巨大な嵐となり、ケルピーの頭上に集束していく。


恐れを知らぬ魔物の赤い瞳に、初めて怯えの色が浮かんだ。


エリアスは叫び、両手を振り下ろした。

「——《嵐天招雷テンペスト・カリドゥム》!!」


その瞬間、雲の裂け目から白銀の雷が奔り、辺りは昼間のように明るくなった。


ドォォォォォン!!


天罰のごとき轟音と閃光が巻き起こる。

雷はケルピーの体を貫き、その血と肉とを沸騰させながら、爆発的な蒸気を巻き上げる。


ヒヒィィィィン——!!


悲鳴が夜に響き渡り、凶馬は水泡のように蒸発していった。


「……う、嘘だろ……」


この男は『天候』を操ってみせたのだ。

それは俺が今までに見た中で、一番ド派手で最強の魔法だった。


飽和した湖水は、土砂降りとなって俺たちの上に叩きつけるように降り注いできた。

「これで……村は……」

肩で息をしていたかと思うと、エリアスはかすかに微笑み、雨の中で力尽きて崩れ落ちた。

顔色は青ざめていたが、その表情はどこか満足げだった。


「お、おい! しっかりしろ!」

駆け寄った俺は、その体を背負い上げて驚いた。


「……あんた、魔法はクソ強えーくせに、身体はひょろひょろだな!?」


エリアスは俺の背中でかすかに笑った。

「すみません……でも、あなたのおかげで全力を出し切れました」

「帰りの体力まで使い果たすやつがあるかよ!!」


……まったく、こんな無鉄砲なやつは見たことねぇ。


「しゃーねーな……ほら、帰って飲み直すぞ!」

「ありがとう……ございま……」


エリアスはそのまま気を失ったようだ。

こんな危なっかしいやつ、ほっとけるかよ……。


 * * *


歩き始めたら雨は止み、いつの間にか空には星空が広がっていた。

行きよりもずっと綺麗な、いつまでも眺めていたくなるような星空だ。


満天の星々に見守られながら——。

俺たちの長い長い旅路は、この夜から始まったんだ。


。*❅┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❅*。


「……てなワケだ!」


バルガンはドンとエリアスの肩を叩き、「ダーッハッハッ!」と大笑いした。

「結局、エリアスは俺の背中におぶさって村まで帰ったんだよ!」


食堂は一瞬の静寂のあと、爆笑の渦に包まれた。


【おんぶwww】

【バルガンやっぱりみんなの父ちゃん】

【エリアスもかわいいところあるじゃんw】

【角笛団はここから始まったのか……胸熱】


エリアスは苦笑を浮かべ、パンをかじる。

「……あの時は本当に助かりました。改めて感謝しています」

「ダーッハッハッ! 気にすんな!

 ま、出会っちまったのも何かの縁だ……だろ?」


ノエルは口元に手を当てて微笑み、リゼは肩を揺らして笑っている。


「なるほどね……それが『いつもの』ってやつだったんだ!」

まきぽんは洞窟遠征の夜のことを思い出したのか、しみじみと呟いた。


「みきぽんも、おねーたんがたおれたら、おんぶしてあげまち!」

「えっ、逆じゃないの〜!?」

焦る姉を尻目に、みきぽんは鹿肉を頬張りながら無邪気に笑っていた。


こうして角笛団の夜は、今日も笑い声と温かな灯火に包まれながら更けていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

本編では描けなかったバルガンとエリアスの過去を、少しノスタルジックにお届けしました。

第1章22話でバルガンが言ってた

「また『いつもの』だな?」

も、何のことだったか、おわかりいただけたかと思います(笑)。


そして明日は、『いもモー裏話』に、今度はエリアスの側から見た、「あの夜」のお話を掲載します。

その時、エリアスは何を考えていたのか。

そしてバルガンの話はどこまで盛られていたのか……!?

お楽しみに♪


次回は、まきぽんが角笛団に迎えられるまでのお話をお届けしますので、どうぞお楽しみに!

感想や評価、ブクマなどもいただけると大変励みになります♪

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― 新着の感想 ―
お疲れさんまさんしたぁm(._.)m ディャアハハハハハハハハハハハハwww
(*´ω`*)  n  いつもの野菜だな ⌒`γ´⌒`ヽ( E)   任せろ ( .人 .人 γ ノ  今日も採れたてを ミ(こノこノ `ー´  揃えておくぞ )にノこ( みきぽんが鹿肉を食べている…
 バルガンとエリアスの裏話面白かったです。  番外編の開幕で群像劇風になっていきそうですね。エリアスサイドも楽しみにしてます。リゼやノエルの話も公開予定ありますか?
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