第22話「精霊たちのクロックアップ!?捨て身の最終奥義が今、解き放たれる!!」
物理も魔法も通じない、しかも完全無敵のチート属性のモリガン。
でも、彼女を操るティアラなら……?
まきぽんたちの、命をかけたモリガン救出作戦が始まります!
エリアスが切り札として呼び出したのは、三人組の精霊たち。
でも三人は、あまあま幼馴染に、小悪魔後輩、毒舌いいんちょで……
始まった会話は、まるでラブコメ?
彼女たちの協力で発動する、伝説級の結界術《地護絶環》!
そしていよいよ解放される、《終焉の光》……
姉妹と仲間たちの想いを乗せて、最後の一撃へ——!!
エリアスは虚空に杖を掲げると、突如耳慣れない呪文を唱え始めた。
「……root access, scope=0x3F——
(演算領域スコープ:全展開)
《assume dev.admin.compute.burst》——
(演算補助プロトコル、起動)」
「えっ、何語!?」
すると上空に金色に光る魔法陣が現れ、そこから三体の小さな精霊が舞い降りてきた。
その姿は大人の女性のようだけど、手のひらに収まるほどに小さい。
炎のように揺らめく赤髪の精霊は、射抜くような深紅の瞳でこちらを見据え……
稲光を纏う金髪の精霊は、威圧的な金色の瞳でいたずらめいた微笑みを浮かべる。
そして、水のように流れる青髪の精霊は、澄んだ瞳で心を見透かすように静かに佇んでいた。
三人は色とりどりの光を纏って軽やかに舞い、私たちの周囲をくるくると巡った。
やがて、ふわりと舞い上がると、上空から私たちを見下ろした。
だが、美しい精霊たちが醸し出す神々しい雰囲気は……
そのひとりがため息混じりに口を開いた瞬間、打ち砕かれた。
「もー、また私たちの出番ですか?」
青い髪の精霊が肩をすくめる。
「私たちが呼ばれたってことは、またオーバースペックな呪文使おうとしてるんだよね?
そんなんじゃ、身体持たないよ〜?」
金髪の精霊が腰に手を当てて怒鳴る。
……んっ? 喋り方、親しげ!?
「しょうがないなぁ、えーくんは私たちがいないとダメなんだよ……ねっ♡」
赤髪の精霊は、炎を散らしながらウインクをした。
「え、えーくん!?」
……って、エリアスのことだよね?
な……なんか喋るとめっちゃイメージ違うんですけど!?
「あなたたち、余計な口を挟まないでください……今回は本当に危機なんです!」
エリアスは必死に制したが、金髪の精霊がニヤリと笑った。
「ペン子もオバサンなんだからさ、あんまり酷使させないであげてよねー」
「……ちょっと、誰がオバサンですって!? アス子、あんた焼き鳥にされたいの?」
青髪の精霊がピシャリと返す。
【ちょw精霊、喋り方ラブコメかよw】
【エリアスの周りだけギャルゲー始まってて草】
【てか俺、名前の元ネタわかった気がするww】
「はぁ……だから呼びたくなかったんですよ」
こめかみを押さえたエリアスが、深いため息を吐く。
だが彼は、すぐに真剣な面持ちに戻った。
「けれど今は、あなたたちの力が必要です。協力してください」
「あの……エリアス様、この者たちは……?」
ブランがオズオズと聞いてくる。
「私の詠唱を補助してくれる精霊たちです。
私一人では、到底『演算』が間に合わないので」
三人の精霊は顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめる。
「ま、今回も付き合ってあげよっか♡」
「えーくん一人で、無理させられないですからね」
「はいはい、始めよっ……ライ子、ペン子——行くよ。クロックアップ!」
金色の精霊……アス子がパチンと指を鳴らして合図をすると、三人はボフンと煙に包まれて、人間の大きさになった。
そして、ライ子はエリアスの右肩に腕を絡めて挑発的に微笑み、アス子は頬を寄せながら左肩に手を置く。
最後に、頭上から舞い降りたペン子が首に手を回し、抱きつくように覆いかぶさり、四人でピッタリと寄り添うように陣取った。
【おい待てよ、何だよこのハーレム状態!?】
【俺たちはいつからラブコメラノベ読まされてたんだ……】
【やっぱりムッツリメガネ許さねえwww】
次の瞬間、赤・青・黄の三色の光が絡み合い、エリアスの杖の先で渦を巻いた。
空気が震え、地面が低く唸りを上げる。
「三つの魂よ、我が身と響け——」
エリアスの声が低く戦場に響く。
「いまこそ解除せよ、魂の制御……《四魂連環》——!」
……とたんに、空気が変わった。
エリアスに続くように、真顔になった三人の精霊たちが詠唱を始める。
「……炎よ、怒れるごとく燃え上がれ!」
0と1とでできた炎の文字列が魔法陣となり、素早く波紋のように広がる。
「……雷よ、限界を超えて駆け巡れ!」
稲光が迸り、光の魔法陣が幾重にも立体的に層を成す。
「……氷よ、調和と安定をもたらせ!」
青く光る魔法陣と共に、鋭い氷の刃が舞い降り、炎と雷を冷却するかのように取り囲んだ。
【うわ何これ、めっちゃカッコいいんだけど!?】
【この三人、何者!?】
【エリアス……この人どんだけ重課金してるんだ……】
【いやこれ課金で手に入る装備じゃねーだろww】
「——母なる大地よ、揺るぎなき厳となりて我らを護れ。
遍く全ての命を束ね、絶対の守護を顕現せよ」
エリアスの瞳が見開かれると、緑色に光る呪文が魔法陣を制御するかのように縦横無尽に走り出した。
「《地護絶環》!!」
四つの光がゆっくりと重なり合い、幾何学の構造体のように層を成していく。
まずは足元から光の円環が生まれ、次に上方へと柱のように光が伸びる。
さらに、縦横無尽に走る光のラインが空間を縫い合わせ、格子状に組み上がり……
少しずつ——だが確実に巨大な防壁を形作っていった。
それはまるで、無数の魔法陣を積み重ねて、堅牢な神殿を築き上げる儀式のように——。
地鳴りのような音と共に、空間全体が震えている。
【うおおおお! これが伝説の奥義!?】
【えーくんが本気だ!】
エリアスは魔力の限界を迎えたのか、彼の表情には苦悶の色が浮かんでいる。
「バルガン……あとは頼みました」
「へいへい、また“いつもの”だな? 安心しな!」
「……いつもの?」
私は小声でつぶやいたが、答えは返ってこなかった。
「ノエル、皆を鼓舞する音色を……」
「大丈夫、任せて〜!」
「リゼ、黒翼乱舞でモリガンの注意を引いて——その隙に、姉妹による同時攻撃を仕掛けます!」
「わかった!」
「はい!」
「やるでち!」
「必ず……みんなで勝って帰ろう!!」
私の声に、みきぽんが大きく頷き、仲間たちの目にも決意の光が宿った。
「……まきぽん、みきぽん……信じています」
それだけ言い残すと、エリアスは目を閉じて呪文の詠唱に集中し始めた。
呼応するように、光に包まれたペン子、アス子、ライ子の三人は、人の耳では聞き取れない早さで何かの言語を唱えている。
「こ、これが伝説に語られる……ガイア・アブソリュート……!」
「本当に……上位結界術を、この速度で……」
ブランとセルマは愕然として、脅威の速さで組み上がっていく結界を見上げている。
確かに、この魔法陣が何層にも積み重ねられた結界、安心感が違う……!
バルガンは大盾を構え、リゼの前に仁王立ちになる。
「団長さんよ、あんたが気を引いてる間は、俺が盾になる! 心配すんな!」
「……バルガン、すまない」
「おう! 思いっきりぶちかませ!」
リゼの胸に複雑な感情がよぎる。
だが次の瞬間、迷いを断ち切り、眼差しに決意を宿した。
「モリガン様! 必ず……必ずや、あなたをお救いいたします!!」
彼女の剣が唸りを上げ、風を巻き起こす。
空気が震えるほどの気迫を込めて、リゼは跳躍した。
「うぉぉぉぉぉぉっ! 黒翼乱舞——ッ!」
渾身の叫びと共に放たれた剣技は、鋭い軌跡となってモリガンに襲いかかる。
案の定、攻撃は障壁によって止められた。
しかし黒い羽は嵐のごとく舞い、女神の視界を覆い尽くした。
【黒翼乱舞きたあああ!】
【来たぞ団長の見せ場!!】
【リゼ姐かっけぇぇ!】
【やっぱりリゼ姐さん……最っ高!!】
モリガンが黒い羽を振り払おうと気を取られている隙に、私とみきぽんは並び立った。
「みんなー! ここからがキメどころだよ、応援よろしく!!」
【応援ならまかせとけえええ!】
【まきぽん! みきぽん! 全力でいけーーーッ!!】
【お前らの一撃で、この闇ごと吹っ飛ばせ!】
【俺らが、全員背中押してるからな!!】
【ここで決めなきゃ主人公じゃねぇ!!】
【姉妹の絆、見せつけてやれーーーッ!!!】
滝のように流れる膨大なコメントは、次々と魔力に変換されて光にかわっていく。
その度にモーニングスターは輝きを増し、私の杖には魔力が集束する。
——これが、みんなの力。私たちの『絆』なんだ。
私は狙いを定めるべく、キッとモリガンを見据えた。
私たちの全て——この一撃にかける!
今回も最後まで読んでくださりありがとうございます!
エリアスが呪文の詠唱の補助として呼び出した三人の精霊たち、いきなりラブコメアニメみたいなノリでびっくりされたかもしれませんが……w
なぜそんな口調なのか、そしてその正体は…
『いもモー裏話』第12話で細かい設定資料を公開していますので、そちらもぜひ楽しんでいただければ嬉しいです♡
https://ncode.syosetu.com/n4405lb/12/
そして次回は——ついに姉妹の必殺コンボ、炸裂です!!
第一章のラストを飾る決戦を、ぜひ最後まで見届けてくださいね!




