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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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第21話「女神モリガンの涙!?姉妹の絆で闇の呪いを打ち破れ!」

バロールとリヒトの策に嵌められて、モリガンがまさかの『闇』の根元に……!?

黒翼戦士団にとっては信仰の対象である女神を前に、リゼは怒りと絶望の狭間でもがきます。


しかし、八方塞がりの中——

まきぽんは、とある『奇策』を思いつきます。

果たして女神を呪縛から解き放てるのか!?


緊迫の第21話——姉妹の絆が『女神を救う鍵』となる……!?

挿絵(By みてみん)


「誰だッ! 誰がモリガン様をこのようなお姿に……!!」

腹の底から絞り出されるようなリゼの怒号に、その場が凍りついた。


普段は毅然とした団長の顔しか見せない彼女が、ここまで感情を剥き出しにするのは初めてだった。


「なんてことだ……私は……。

 ああ……よりによって、我らの神に刃を向けてしまうとは……!」


リゼは拳を岩肌に叩きつけた。

血が滲んでも止めようとしない彼女を、バルガンが慌てて後ろから羽交い締めにする。

「やめろよ! おめーも知らなかったんだし、仕方ねぇだろ」

「離せ!  私は……なんてことを……」

「団長、お気を確かに!」

「リゼ……落ち着いて!」


【リゼ姐、おいたわしい……】

【姐さん手から血出てるって! やめろおおお!】


私たちの声も、今のリゼには届かない。


その間にも、モリガンは瘴気の向こうからこちらを見据えていた。

長い黒髪から水が滴るたびに、呪われた蛇が生まれて鎌首をもたげる。


——しかし、もう《黒翼戦士団》の一団は、すっかり戦意を喪失していた。


それも仕方ないだろう。

彼らにとって、モリガンは信仰の対象。

絶対的な精神の支柱だったのだから……。


「もう……打つ手が……」

ノエルの竪琴を弾く手も止まってしまった。

帰る道を塞がれ、全ての希望が闇の中に沈んだ。


その時——。


『……助けて……』


夢で聞いたあの声……

心に直接響くように、か細い女性の声が響いてきた。


私のローブをしっかりとつかんでいたみきぽんは、モリガンを見つめてこう言った。

「おねーたん……あのひと、ないてまち……」


泣いてる?

……モリガンが?


「ウウ……」

苦痛に顔を歪ませるモリガン。

——その瞳に一瞬だけ、涙が輝いたように見えた。

ひとかけらの理性が、まだ残っている……?


だが次の瞬間、額に煌めくティアラが無慈悲な光を放つ。


ティアラの正面には、紅く大きな宝石が埋め込まれている。

宝石の怪しい光を浴びると……

モリガンは再び瞳に邪悪な意思を宿して、こちらに殺意を向けてきた。


エリアスが呟く。

「……モリガンは戦女神。

 あのような華奢なティアラなど、戦場で身につけるでしょうか」


私はハッとしてモリガンを見た。

女神に似つかわしくない、コウモリと髑髏の禍々しい銀細工。

確かにそのティアラは、そこだけ異質で彼女の装いからは浮いて見える。


「……あれは彼女のものではない。

 おそらく、あの巨大な魔石には、精神的支配を受ける呪いが込められているのでしょう」

「じゃあ……モリガンは、だれかに操られて……?」


不意に、リヒトの去り際のセリフが蘇った。

『——このまま帰れると思うなよ』

つまりあいつは、このことを知っていた……?


「まさか……リヒト!?」

「そうですね、彼はバロールの命により動いていたようですから」

「う、うん!」

「彼は、何らかの方法でモリガンに近づき、そしてバロールの意のままに操るため、あのティアラを嵌めさせた……」


「女神の尊厳を踏みにじりやがって……あの外道がッ!」

バルガンは憤りを露わにする。


バロールの呪いで、高潔な女神は、ひたすら呪詛を振りまく『闇の根源』へと成り下がってしまった。


「下衆が……このような仕打ち、絶対に許せん!」

リゼは、バルガンとノエルになだめられて、少し落ち着きを取り戻したようだ。


エリアスは静かに頷いた。

「彼女は囚われています。

 ならば——勇者の役目は『倒すこと』ではなく、『救うこと』」

「救う……?」

リゼは弱々しく顔を上げた。


「そうです。まきぽん、みきぽん——

 あなたがたの力で、女神を解放して差し上げるのです!」


【エリアス、いいこと言った!】

【勇者姉妹キターーー!!】

【そうだ、まきぽんとみきぽんならできる!!】


「だけどよ、問題はあのヘンテコな壁だろ?」


バルガンの言葉に、エリアスは杖を掲げて魔力の揺らぎを見極めるように目を細めた。

「物理には物理障壁、魔法には魔法障壁……

 どちらかで攻撃した瞬間に、その攻撃を無効化する障壁が展開されます」

「そんなの、無理ゲーじゃん……」


全身にまとわりつく圧迫感、息が詰まりそうな瘴気。

——どこにも勝ち目なんてない、そんな気がした。


だけど……、私はふと気づいた。


「ね、物理と魔法って……もし全く同時に攻撃したらどうなるの?」


その場が静まり返る。

エリアスが驚いたようにこちらを振り返り、眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた。


「……そうか! 物理障壁と魔法障壁は同時には展開できない。

 必ず一方にラグが生じる……!」


心臓がトクン、と強く脈打つ。


「じゃあ……同時に攻撃を叩き込めば……!?」

自分でも驚くほど大きな声が、暗い洞窟に響き渡る。


リゼがはっと顔を上げ、兵士たちもざわめき始めた。

絶望で沈んでいた空気が、わずかに揺らぎ、光を取り戻す。


エリアスは口元に微笑を浮かべ、力強く頷いた。

「まきぽん……あなたの閃きが、未来を開いたかもしれません」


「だが、全く同時に攻撃を当てるなど……

 厳しい訓練を積んだ兵士でも難しいことだ。そんなことができるのか?」

リゼが疑問を投じる。


みきぽんは一歩前に出ると、むふんと胸を張って笑顔を見せた。

「まかせるでち! おねーたんとなら、できるでち!」

「……みきぽん!」


私はゴクリと唾を飲み込んだ。

そうだ。

この子と私となら、きっと——。


【まきぽん冴えてる、主人公ムーブ!】

【姉妹のタッグで世界救うの、熱すぎだろ……】

【これ絶対アニメ化したら神回だな】


私はみきぽんの手をきゅっと握った。


「あの魔石の属性は『闇』、闇を打ち砕くことができるのは……」

「……光?」


エリアスは頷いた。


「そもそも《ステータス:神性》を持つものには、いかなる攻撃も通用しない。

 ですが、あのティアラはその限りではありません。

 光の攻撃を与えれば、打ち砕くことができるかもしれません」

「そうか……!」


「……まきぽん、今こそルーグ・ラスターを解放するのです」

「えっ!!」

「そしてみきぽん、あなたは光の物理攻撃を。

 マジカル☆シャイニング・モーニングスターをお願いします」


「……まほーでちよ?」

不服そうな顔のみきぽん。

「わ、わかりました……『魔法』ですね」

「あい!」

みきぽんは強く頷いた。


「でもそれじゃこの洞窟が……」

「構いません。モリガンは全力でティアラを守ろうとするでしょう。

 ならば、こちらも全力で挑むしかない」


エリアスはきっぱりと言い切ると、仲間たちを見渡した。

「安心してください。守りは我々が固めます。

 あなたたちは気にせず、全力で解き放てばいい」


角笛団のみんな、黒翼団のみんな、そしてコメントで背中を押してくれるリスナーたち。

最後に、みきぽんの希望に満ちた視線が私に注がれる。

「わかった……やってみる!」

私はぎゅっと杖を握りしめた。


「まきぽん、みきぽん。あなたたちならきっと光を届けられる……私、信じてるわ」

ノエルは竪琴を抱き寄せながら、優しく微笑んだ。


「私に策があります……リゼ、あなたにも協力してほしい」


リゼはなおも剣を握りしめ、悔しそうに唇を噛みしめていた。

「わっ、私が……我らの女神に刃を向けるなど……!」


エリアスは冷静に言葉を重ねる。

「リゼ、これは攻撃ではありません。救済です」

「……っ!」

彼女の瞳が揺れる。


「そうだよ、女神様……助けてって言ってた!」

「モリガン様が……?」

「リゼたん、あのひと、ないてまちた!」


「このままでは、自らの吐き出す呪いでこの世界すら滅ぼしてしまう……

 あの涙は……神である彼女が、自身を責めて流していたのかもしれないわ」

ノエルはモリガンを憐れみを込めて眺めた。


リゼの瞳に迷いと苦悩が渦巻く。

しかし次の瞬間、彼女は強く顔を上げた。

「わかった……私はかつて何度も、戦場でモリガン様に心を救われた。

 今こそそのご恩を返すため……この剣、迷わず振るう!」


「おお……団長……!」


その時、ついに湖上に飽和した黒い蛇が、群れを成して襲いかかってきた。


「ぐっ……来やがったな!」

兵士の一人が叫び、剣を振り抜いて立ち向かう。

「はぁっ!」

気合いと共に剣を振り下ろすと、黒い瘴気を撒き散らしながら蛇は地面に崩れ落ちた。

「見ろ、この蛇なら我らにも斬れるぞ!」

「リゼ様、どうかモリガン様を……! 蛇は我らにお任せください!」


「……ああ! 必ずやお救い申し上げる!」

リゼの瞳には、もはや迷いはなかった。


「みんな、ここが正念場よ〜!」

ノエルも竪琴を奏で、兵士たちを鼓舞するように勇ましい旋律を響かせる。

音色に背を押され、兵士たちは「おおお!」と鬨の声を上げながら、蛇の群れへと挑んでいった。


【モブが輝く瞬間、熱すぎる】

【勇者パーティだけじゃなく全員で戦うのいいよな】


次にエリアスは、黒翼団の戦術参謀ブランと、結界術師セルマに声をかけた。

「ブラン、セルマ、あなた方は《地護絶環ガイア・アブソリュート》は使えますか?」

「いえ……そのような上位結界術は、あなた様のように修行を積まれた方でないと、とても……」


「そうですか——」


エリアスは一つ大きなため息をつくと、決意を固めたかのように口を開いた。


「これからまきぽんが放つのは、人の身では本来触れられぬ『神話の領域』に属する最上位魔法。

その威力はあまりに苛烈……結界で守らねば、我らとて無事では済まないでしょう」

「この子が……そんな魔法を……!?」


「あなた方は中位結界術を敷いてください。

 私がその外側に、皆を守れるよう高位結界術を貼ります。二重の結界で守るのです」


「そ、そんなことができるのですか……!?」

「エリアス様、恐れながら……

地護絶環ガイア・アブソリュート》は、本来ならば何人もの祈祷師が一昼夜唱え続け、ようやく成立するような大規模魔法です。

それを……一人でなさるなどと……!」

ブランとセルマの顔が蒼白になる。


「おいエリアス、いくらなんでもそんなん無茶だろ!?」

バルガンも思わず声を荒げた。


「できるかできないか、ではない——

 今、この瞬間にやれることは全てやるのです」

冷徹に響く声。

しかしその瞳は強い覚悟を帯びていた。


そして彼は大きく息を吸い込み……

闇に立ち向かうかのごとく、長い詠唱を始めた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

今回のエピソードでは、『敵』と思っていた存在が、実は『救うべき存在』だった……という大きな転換を描きました。

そしてリゼの葛藤、エリアスの決意、みきぽん&まきぽんの絆。

それぞれの想いが重なり、物語はいよいよ第一章のクライマックスへ突入します。


次回からは——光と闇が激突する、決戦の瞬間!

ぜひ最後まで見届けていただければ嬉しいです♪

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マジカル☆ドレス(魔法)      〃 ΛΛ三Λミ       (ω・≡・ω)  ヾ(┓ε:)=oc ≡ oo=(:3ヾ)ノ      ミ三 =-彡 魔法と魔法(物理)が合わさってさいつおになる…
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