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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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第16話「対決、闇の配信者!底辺と呼ばれた配信者はリスナーゼロから這い上がります!!」

コウモリの大群を抜けた先に待っていたのは、闇を味方につけた配信者、リヒト。

彼と彼のリスナーたちの攻撃は、心を蝕む刃となって、まきぽんに襲いかかる……!


ただの戦いではなく、『配信者』としての在り方そのものをぶつけ合う回です。

そして最後には、みきぽんに新たな変化が……?


物語的にも大きな転機を迎える回ですので、ぜひカタルシスを楽しんでくださいね!

漆黒の翼を持つ悪魔と化したリヒト——。

彼は高みから私たちを見下すと、満足そうに口角を吊り上げた。


「いい顔だな……恐怖に染まる『観客リスナー』ほど、俺の『配信ライブ』を盛り上げてくれる」


巨大な翼が軽く羽ばたいただけで、激しい風圧が私たちを襲う。


「俺の可愛いコウモリ達は、十分楽しんでもらえたかな?」

リヒトはニヤリと嗤うと、素早くノートパソコンを操作した。


「なら、これはどうだ!

もっと盛り上がってくれよ、俺の観客どもォ!」


オオオーーーン……


どこからともなく、不気味な遠吠えが響いた。

黒いコメントがリヒトの背後で渦を巻くと、一文字一文字が歪んで砕けていき、やがてそれは牙を剥いた狼の形となって再構成された。


「なっ……狼だと!?」

「ばかな、こんな大きな狼がいるか!」


魔狼は緑色の炎を纏い、私たちを射抜くように睨みつけていた。

燃え盛るように光る瞳は、思わず目を背けたくなるような禍々しさだ。


「こ、これは……クー・シー……!?」

兵士が叫ぶ。


冥界の番犬、クー・シー。

死者の魂を冥界へ連れ去ると伝えられる妖獣だ。


その咆哮を三度聞いた者は、生きて還れない……。

そう語り継がれてきた「死の使い」が、今まさに目の前に立ちはだかっていた。


仲間たちには、ただの巨大な魔獣が現れたようにしか映っていない。

けれど——私には分かる。


その魔物を形作っているのは、リヒトのリスナーが投げつけた、あのどす黒いコメントの数々だ。


《消えろ、負け犬》

《雑魚はリヒトの前に跪け!》


(……やだ、また……!)


クー・シーの群れは咆哮と共に飛びかかってくる。

私は鋭い爪を防ごうと、咄嗟に杖を掲げた。

すると衝撃と同時に、心にも直接、鋭い棘が突き刺さるように痛みが走った。


《はい、終了www》

《お前なんて、いてもいなくても変わらないな》


「う……ッ!」


膝が震え、視界がにじむ。

思わず地面に手をついた私を見て、リゼが叫ぶ。

「まきぽん!?  どうした、やられたか!?」

「違うの……でも……体が、動かなくて……」


洞窟内にはリヒトの高笑いが響き渡った。


「……なるほど」

ただ一人状況を理解していたエリアスは、配信が見えない仲間にも状況が伝わるよう、落ち着いた声で告げた。


「これは、リヒトの呼び出した『悪意の言霊』です。

 彼女の心を直接、呪いで蝕んでいるのです」


「なんだと……」

バルガンが戦斧を構え直し、苦々しく唸る。

「クソッ、俺たちには手の出せねぇ呪いってわけかよ……!」


「おねーたん……!」

みきぽんの目にも涙が滲む。

魔物を前にしながら、攻撃を封じられた焦りと怒りで、悔しくてたまらないのだろう。


その潤んだ瞳の中に、ふと見えた気がした——


ベッドの上で膝を抱えて泣いていた、かつての私の姿が。


挿絵(By みてみん)


セピア色の記憶。

誰もいない部屋で、一人の視聴者もいないままに配信を切った夜。

無力感に押し潰されて、声が震えた日。


どうすればいいの……?

私を必要としてくれる人なんて、本当にいるの……?


それでも——私は配信をやめなかった。

歯を食いしばって、ひとりで頑張り続けた。


やがて、少しずつ。

集まる人が増えて、何度も見にきてくれる人ができるようになって。


私の世界には、徐々に鮮やかな色が付いていった。

喜びの気持ちは、心がまんまるになる赤い色。

焦った時は、一瞬ヒヤッとする青い色。

みんなと一緒に笑った時は、キラキラする黄色……。

セピアから、フルカラーへ。


そして今は——。


ノエルは私の肩を抱きながら、必死に声をかけてくれた。

「大丈夫よ、まきぽん!

 あなたの笑顔に、私たちは何度も元気をもらったわ!」

心から信じられる仲間、角笛団のみんながいる。


「俺たちが防ぎます、下がっていて!」

背中を預けられる黒翼団の戦士たちがいる。


【しっかりしろ!】

【がんばれ、まきぽん!】

いつも見守ってくれてたリスナーのみんながいる。


そして——。


「おねーたんには、みきぽんがいるでち!」

小さな手が、ぎゅっと私の指を握りしめる。


その瞬間、ぱあっと胸の奥に光が差しこんだ。


……なによりも大切な家族、命をかけてでも守りたい存在が、ここにいる。

そうだ、私はもう……一人じゃない!


私は震える手でスマホを握りしめ、リヒトを真っ直ぐに睨んだ。


「私は、あなたになんて負けない!

 例え今は底辺だろうと……一緒に戦ってくれる仲間がいるから!」


だが、リヒトは不敵な笑みを崩さない。

「……へぇ? やれるもんならやってみろよ」


【まきぽん、俺もいるぞ!】

【”俺”……? 違うだろ、“俺たち”だ!】

【そうだぞ、負けるな!】


ポジティブなリスナーの声が光の矢となって、クー・シーに次々と突き刺さっていく。

「……そうか、みんなも一緒に、戦ってくれてるんだね!」


【まきぽん、ファイア・ボルト撃って!】


一人のリスナーが叫んだ。

「……ファイア・ボルト!?」

見ると、スマホから湧き出した光のコメントが、杖の先に魔力となって集まり始めていた。


「……うん、わかった!」

反射的に覚えたての詠唱を始めると、杖の先に炎の光が宿る。


私が使える、唯一の火炎魔法。

なけなしの所持金で買った、初心者向けの安い魔導書。

それは小さな火の玉——のはずだった。


(……えぇっ!?)


無数のコメントが魔力を増幅してくれているせいか、火球は想像を超えて一気に肥大化していった。


【まきぽん、いけぇぇぇッ!!】


私の瞳に炎が宿る。

胸の奥から燃え上がるような思いがあふれ出す。

その熱を杖に託し、みんなの思いを重ねて——。


「ファイア・ボル……きゃああっ!?」


火球が放たれる瞬間、あまりの魔力の反動に、制御しきれずに後退りしてしまった。

杖の先から迸った炎は、轟音を立て狼の群れをまとめて焼き払う。

……洞窟が一瞬、真昼のように明るくなった。


え!? これ本当に、ファイア・ボルト……!?


【まきぽん覚醒キタ━━(゜∀゜)━━!!】

【これは余のメラ……ゲフンゲフン】


「すごい……すごいよみんな! ありがとう!!」

私はリスナーたちの力をもらって、次々と杖に魔力を込めていった。


【がんばれまきぽん!】

【うおおおお! 激アツ展開!!】

【配信、最後まで見届けるよ!】


「みんなの応援、届いてる!

いくよ! ファイア……ボルトォッ――!!」


グオオオーーーン!

火球に燃やされたクー・シーたちは、絶叫とともに次々と闇へと還っていく。


そして——

最後の一匹を倒したその時、場の”空気”が変わった。


《……へえ、あの子なかなかやるじゃん》

《本当だな、つえーわ》


「……なっ!?」

リヒトの顔に、初めて焦りが浮かんだ。

彼の視線の先を見ると、同接人数の表示が、みるみるうちに減っていた。


「お、おいお前ら、どういうことだ!」


《うるせーよ、リヒトだっさ》

《アタシもカッコいい方応援すっかな、キャハハッ》


それと同時に……。


「えっ!?」

私の視聴者数が……400……500……!?

どんどん増えていく。

うそうそ、こんな数見たことないよ!?


「バカな……俺のリスナーが……!?」


【これからはアンタのこと推させてもらうわ】

【まーきぽん、よろしくっ! キャハハッ】


リヒトのリスナーだった人たちが、次々と私の味方になっていく。

そして——。


ピコンッ!


スマホの画面に、見慣れぬシステムウィンドウが弾けるように表示された。


『Congratulations!!』

『視聴者数——1000人突破!!』


派手なファンファーレと同時に、巨大な数字が宙に浮かび上がり、洞窟全体を眩しく照らす。


「な、なんだぁ……!? この光は……!」

バルガンは思わず声を上げ、戦いの手を止めた。


数字は炎のように揺らめき……

やがて、無数の光の粒となって砕け散った。


『配信ボーナス:新フォーム解放条件達成』


ナレーションが洞窟に響き渡り、星屑のような輝きが頭上から降り注ぐ。

それは柔らかな波紋のように広がり、闇に沈んでいた空間をジワジワと塗り替えていった。


(……あったかい……)


降り注ぐ光に、私は心を包み込むような温もりを感じていた。


リヒトが目を見開く。

「バカな……配信の『場』そのものが、反応してるだと……!?」


私を包んだ光は、ローブの裾を優しく撫で、髪をふわりと揺らす。

視界いっぱいに広がるその輝きは、確かに告げていた。

みんなの声が、私たちを祝福しているのだ、と。


「おねーたん……!?」

同じように光に包まれていたみきぽんが、ぱちりと目を見開いた。

胸のブローチが、虹色に煌めき始める。

そして、まるで心臓の鼓動に合わせて脈打つように、色とりどりの光が洞窟を照らし出した。


リヒトも圧倒されて、目を見開く。

「……なんだ……何が起こってるんだ!?」


仲間たちも息を呑んだ。


洞窟全体を包み込む七色の輝きの中心で、みきぽんの小さな体が、光に抱き上げられるようにふわりと浮かび上がった。


(……みきぽん……!)


その瞬間、全員が確信した。

これはただの光じゃない。

みきぽんの中で、新しい『力』が目覚めようとしている——!

ここまで読んでくださってありがとうございます!

まきぽん、リスナーゼロの暗黒時代の記憶を乗り越えて……ついに1000人突破!!

これは私自身の、YouTubeを始めたばかりの頃に味わった苦悩も元になっています。


てか……なろうを始めたばかりの今の心境もこれですね(笑)。

まだまだ無名の駆け出しですが、ブクマ、評価、コメントで応援していただき、本当にありがとうございます!

皆さんの応援を力に、ファイア・ボルト(更新)打ち続けます!


さて、まだまだ戦いは終わりじゃありません。

虹色に輝くみきぽんのブローチ、そして始まろうとする新たな変身——

次回、『覚醒イベント』開幕!

どうぞご期待ください!!

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― 新着の感想 ―
大魔王まきバーンご降臨でしたかぁぁ((((;゜Д゜))))
 ∧_∧  ∧_∧   ∧_∧ (´・ω・) (・ω・`) (・ω・`)誰だって (⌒丶ー⌒丶⌒ー-ィ⌒) ⌒ー-ィ⌒)最初は筋肉が 丶 ⌒ン⌒)⌒ン⌒ ノ ⌒ン⌒ ノ  不足している  丶ー-^ーイ…
 まきぽんが覚醒だと!? しかもみきぽんに新たな力まで――。  いったいどんな力なんでしょう。そして応援ブーストの「ファイアボルト」の溜め具合が某アニメの主人公と重なり、最後の虹の光でとあるラノベの主…
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