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【第二章開幕!】異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第1章 〜魂の帰る道〜

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第15話「闇堕ち配信者リヒト登場!聞いたことのある「あの」声って…!?」

無限湧きするコウモリに大苦戦の一行ですが、そこに現れたのは——!?


闇堕ち配信者リヒト——彼の『配信スタイル』は、まきぽんとは正反対。

ポジティブな応援じゃなくて、憎悪と悪意に満ちた言葉が力になる……!?


果たして、心を折られたまきぽんたちは、この戦いをどう切り抜けるのか!?

やがて——。

息苦しいほどの暗闇をかき分けて進んでいくと、やや大きな広間のような空間に辿り着いた。

それと同時に、不意にコウモリたちの羽音が途絶えた。


洞窟の空気が、ひやりとした冷気に変わる。


(……消えた?)


今まであれほど私たちを苦しめていた存在が、一瞬で姿を消すなんて……?

ホッとするより、逆に嫌な感覚に支配される。


「静かだな……」

先頭を進むリゼの声が低く響く。

だが、その声もすぐに底知れぬ闇に飲み込まれていく。


足音も、衣擦れの音も、炎の揺らめきさえも——。

まるで洞窟の暗闇が意識を持って、私たちの一挙手一投足を見張っているみたいだった。


喉が渇く。

息が浅くなって、胸がぎゅっと締め付けられる。


(やだ……この静けさ、気味が悪い……!)


「……妙ですね、気を緩めずに行きましょう」


——と、その時。


「……おい、あそこを見ろ!」

斥候兵の声がひときわ大きく響き、皆が一斉に顔を上げた。


ぼんやりと炎の明かりに浮かび上がる岩壁。

その先の暗がりに、黒い染みのような影がうずくまっていた。


(なに、あれ……?)


松明の明かりをかざすと、それが人の形をしていることが分かった。

黒いローブをまとい、地面に倒れ伏している。


「人間……? 冒険者かしら?」

ノエルが小さく呟く。


「う、うぅ……助けてください……」


倒れていたのは、若い男の人だった。

彼は私たちに気がつくと、弱々しく顔を上げた。

掠れた声で苦しそうに腹部を押さえ、どうやら怪我を負っているようだ。


みきぽんが心配そうに一歩踏み出す。

「おねーたん……このひと、かわいそうでち」


「……待って、みきぽん!」

私は慌ててみきぽんの腕を掴んで止めた。


——なに、この感じ。


確かに声は弱っているのに、耳にまとわりつくような嫌な響きが混ざっている。

背筋をなぞる寒気。息が詰まるような違和感。


「お願いします、どうか……助けて……」


(……ッ、この声……どこかで……)

聞いたことがある。これは……。


「私……この人の声、聞いたことある気がする……」

「まきぽんちゃんの知り合い?」


私は首を振った。


「ううん、違うの……でも、この人なんか変だよ……」


【え……誰?】

【あれ、俺もこの声聞いたことあるかも!】


「おい、あんた、どうしたんだ……」

「——待て」


助け起こそうとするバルガンを制し、リゼは一歩前に出ると、青年に剣の切先を向けた。


「その右手……少しでも動かしたらこの場で切り落とす」


リゼの声音は氷よりも冷たく、場の空気が一瞬で張り詰めた。

「……リ、リゼ!?」


「本当に弱い冒険者なら、こんな洞窟の奥深くまで生きて辿り着けるはずがない……そうだな?」


一瞬の沈黙ののち、男はゆっくりと立ち上がる。

彼が腹を押さえる手をわずかにずらした時、袖口の影で何かがかすかに光った。


あれは——ナイフ!?


不用意に近づけば、一撃で急所を突かれていたかもしれない。

あの時もし、みきぽんを止めなかったら……そう思うと、血の気が引いた。


そして彼はフードに手をかけると、おもむろに取り去った。


挿絵(By みてみん)


そこに現れたのは……

邪悪な意思を宿した赤銅色の眼と、不適な笑み、ブリーチし過ぎた金髪。

そしてネオングリーンの光を放つ、黒いゲーミングヘッドセット。


「フッ……バレちゃしょうがねーな」


男は不気味に口角を吊り上げた。

兵士たちは一斉にざわめき、武器を構えて後退する。


「俺の名は——リヒト。

 バロール様の命により、お前らをここで叩き潰す。

 ……つーか、俺の“見せ場"を横取りしてんじゃねーよ!」


彼が懐から取り出したのは、黒く光る魔導書……

違う、あれはノートパソコンだ!


ヘッドセット、ブリーチされた髪、ノートパソコン。

『ティルナノ』にあるはずもない物ばかり。

つまりそれは——


リヒトが私と同じ、転移者だということを表していた。


【思い出した、『ティルナノ』の配信やってたヤツだ!】

【え、ヨーチューバーのリヒト!?】

【まさか……コイツも転移してたのかよ!】


リヒト——。

同接人数を稼ぐためなら、他のプレイヤーを陥れたり、口汚く罵倒したりと、過激な内容も厭わない。

いわゆる迷惑系配信者というやつだ。

アンチも多く、いつの間にか消えたと思っていたけど……まさかコイツも『ティルナノ』に転移していたなんて。


「ここまで来れたことはほめてやるよ。

 だが……どっちが主役か、よーく思い知らせてやるッ!!」


リヒトの周りをコウモリが取り囲み、そこだけ闇の濃度が増していく。


「な、なんだコイツは!?」

「おねーたん……こえだけでわるいひとってわかったの、すごいでち!」


「さあ、俺のチャンネルにようこそ! 今日の目玉は——

『異世界ヒロイン公開処刑』だッ!」


リヒトがノートパソコンを開くと、キーを叩く乾いた音と共に、ザワザワと黒い文字が湧き出て宙を漂い始めた。


それは、私の配信で見慣れたホログラムにそっくりだった。

——けれど。


《底辺冒険者さん、ちーっす》


(……え?)

……心の奥に、ズキンとトゲが刺さった。


《消えろ、雑魚》


息が詰まる。鼓動が、ドクンと一つだけ強く打った。

……何なの、これは?


《お前なんて何やっても、どうせ失敗するんだよ》


——その一言に、私の心の中で何かが砕けた。

それは……もう封印してしまいたい記憶の中、どこかで私自身に投げかけられた、心無い言葉だった。


(……ううん、違う。違うよ……)


「いいぞお前ら! もっと盛り上げろ!!」


《は? まきぽん? 誰それww》

《お前なんか誰も必要としてないんだよ》


(やめて……)


……ひとつひとつの言葉が、心を抉られるように重く響く。

ただの悪口じゃない。

心の深い部分に封じ込めて、二度と目にしたくなかった不安をあぶり出すような……そんな言葉ばかり。


《応援してる奴らもすぐ飽きて消えるさ》

《必死なのが逆に痛々しいよな》

《頑張っても無駄無駄!》


「やめて……っ!」


ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほどに弱々しかった。

手が震えて、思わずスマホを落としそうになる。


そうだ……。

配信を始めても、誰も見に来てくれなかったあの頃。

リスナーゼロのまま、静かな部屋で配信を終えた日々——。


無力で、誰にも届かない声。

あの孤独を、思い出してしまった。


——このままじゃ、あの頃の苦しみに再び飲まれてしまう……!


負の感情に塗れた言葉の群れは、光を吸い込みながら渦を巻き、やがてリヒトの背後に集束していった。

一文字一文字が黒い羽根へと変貌し、音もなく折り重なり、巨大な翼を形作っていく。


「なんだ!? 黒い大きな翼が……」

リゼは見たこともない敵の姿におののきながらも、ノエルを庇うように前に踏み出した。


「これが……『闇』の正体……なの?」


バルガンも戦斧を握り直し、歯ぎしりしながら吐き捨てた。

「クソッ、コイツはやべぇ……ただの人間があんなモンを纏えるはずがねえだろ!」


配信のコメントが見えない者たちには、リヒトが巨大なコウモリの羽を纏った魔物に見えているようだ。


——バサァァッ!


重々しい羽ばたきが洞窟を揺らし、天井から砂がぱらぱらと落ちる。


——それは、質量を得た闇そのもの。

呪いで編まれた翼。

誰もが目を背けたくなるような、『言葉から生まれた悪魔』だった。


「ふふ……どうだ、これが俺の『配信』だ!」


リヒトの目が怪しく光り、声が洞窟全体に響き渡る。


《リヒト、やっちまえ!》

《あいつらに思い知らせてやれよ!》


「ふはははは……! リスナーたちが俺に力を与えてくれる……!

 お前らの甘ったるい『言葉』じゃ、勝ち目はねーんだよ!」


——悪意に満ちた囁きが、耳にまとわりつく。

胸の奥が、じわじわと黒い泥に沈んでいくように重くなる。


「おねーたん、だいじょーぶでち?」

青い顔で震え出した私を、みきぽんが心配そうに見上げている。

でも……


(……だめ、心が……折れそう……!)


「さあ、世界の主役は最初から"俺"なんだ。

どっちが上か思い知らせてやるよ、底辺配信者ァ!」


洞窟の奥深くにまで、リヒトの哄笑が響き渡った。

その声は心の闇を支配し、この場にいる全員を強制的に『観客』へと変えていく——。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


リヒトはまきぽんの『光のコメント』と対になる、『闇のコメント』を力に変える配信者です。

ネガティブな言葉って、読んでるこっちまで心を削られちゃいますよね……。


次回、第16話ではいよいよリヒトとの本格バトル!

みきぽんはこのまま、必殺技封印されてしまうのか……!?


評価・ブクマ・感想がめちゃくちゃ励みになります!

「リヒトの言葉で俺も瀕死w」とか「まきみき、負けないで!」とか、書いちゃってくれても全然おっけーです。全力で返信します!

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― 新着の感想 ―
出たな!病みの背信者ぁぁ大佐ぁぁ_(:3 」∠)_ シャ○大佐なりまして失礼しまうまぁぁ_(:3 」∠)_
  /フフ     ム`ヽ  / ノ) /⌒ヽ ( 丶、みんなも ゛/ | (^ω^)⌒ノ丶)野菜を食べて / ノ⌒ン  ヽー' 、| 闇さんバイバイ 丶_  ノ 。 ノ、 。 ノ     `ヽ…
 リヒト、闇の配信者なのに名前は光って個性強いですねぇ。  他にも転移者がいたとは驚きです。悪役の台詞って読む時にニュアンスとか想像するの辛いですね。まきぽん陣営、どうなっちゃうんだろう……。
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