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第1話「女子高生がゲーム配信したら異世界転移しちゃいました!?」

《配信してたら、異世界転移しちゃいました――!?》


いつものゲーム配信のはずが、なぜかラスボスに襲われて異世界転移!?

ちょっと待って、これってバグじゃない〜!?


孤独な女子高生“まきぽん”が目覚めたのは、よく知っていたはずのゲームの世界。

でもそこで出会ったのは――鉄球を振り回す、魔法少女な最強妹!?


個性豊かな仲間たちと繰り広げる、ツッコミどころ満載の大冒険がここから始まります!

テンプレなのに新しい! 異世界×配信×妹バトルコメディ、開幕!!

学校って、一番キラキラしてるのは教室だよね。

友達と笑って、ふざけて、いつも誰かが隣にいる――そんな時間が、私は大好きだった。


でも。

放課後、帰りの電車に乗るとキラキラは一駅ごとに削がれていく。

駅に着くたび、友達が「じゃあね!」と手を振って降りていくと、気付けば最後に残ったのは私ひとりだけ。


窓の外の景色が、夕暮れのオレンジ色に染まっていくーー。


人がまばらな電車の中。

向かいに座ってるサラリーマンが、一生懸命パソコンで何かを打ち込んでる。

(でも私には気づいてない)


いつもの駅で降りる。

駅前のオシャレなカフェは、今日もお客さんでにぎやかだ。

(私はそれを眺めて通りすぎるだけ)


商店街を家までトボトボと歩く。

八百屋のおじさんが、お客さんたちを相手に元気に商売をしてる。

(そういえばおかーさんの手料理、最近食べてないな)


交番の前を通り過ぎる。

(私のことも見てるかな? ううん、きっと見てないよね)


マンションのドアを開けても、やっぱり真っ暗。

「……ただいま」

もちろん返事は返ってこない。


おかーさんは私が幼い頃に離婚して、それからずっと、私を養うために働いているから。

寂しいけど、仕方ない。

そんな寂しさを無理やり飲み込むと、胸の奥がきゅっと痛くなる。

「おかえり」

だから自分で自分に、そう言ってあげよう。


冷蔵庫を開けると、シャトレーゼのプリンがひとつ置いてあった。

おかーさんは忙しいけど、私のために、いつも何かを買ってきてくれる。

「……ありがとね」

それだけ言って扉を閉める。


今日もおかーさん、夜勤だから自分でご飯を作らなくっちゃ。

プリンはその後に食べようかな。


 * * *


お風呂上がり、濡れた髪をタオルで乾かしながら、ベッドにごろんと寝転んで、スマホを手に取った。


スマホを買ってもらってから、私は密かにアプリでの配信を始めた。

始めたばかりの頃は、誰にも見てもらえなかったけど、今ではこれでも、何人か常連さんがいる人気(?)配信者の端くれ。


アプリを立ち上げると、インカメラに自分の顔が映る。

茶色がかったロングヘアをゆるく巻いた、どこにでもいる女子高生。

ぱっと見はちょっと華やかそうに見えるかもしれない。

でも、私からすれば「普通の子」だ。


リスナーはよく「まきぽん、かわいい!」って言ってくれる。

……でもそれは、配信者補正ってやつ。

実際の私は特に目立つわけでもないし、クラスの中では空気に近い。

だけど、画面の向こうには、私を見てくれる人がいる。

それだけで「配信者・まきぽん」として笑顔を作れるんだ。


「こんばんはー! 今日も『ティルナノ』やっていきます、まきぽんでーす!」

明るい声を作って言うと、すぐにコメントが流れ始める。


【おかえり!】

【まきぽん、待ってたよ!】

【今日もよろしくー!】


……胸がじんわり温かくなる。

私を見てくれる人がいる。

待っててくれる人がいる。

そう思えただけで、さっきまでの孤独は少しずつ消えていった。

そうだ、私はひとりじゃない。


私が配信してるのは『ロード・トゥ・ティル・ナ・ノーグ』、通称『ティルナノ』。

ケルトをモチーフにしたファンタジーの世界観と、スマホで遊べる手軽さがウケて、今大人気のMMORPGだ。


「今日は、新しい魔導書をゲットしたので、早速これから検証していくよー!」

スマホの小さな画面には、ファンタジー世界『ティルナノ』の白い石造りの街並みが広がっている。

ローブ姿のマイキャラクターが、新しい魔導書を買えた喜びに、その場でクルクルと回って決めポーズをすると、チャット欄には次々とコメントが流れていく。


【新魔導書ゲット!? おめでとう!】

【火力どんな感じ?】

【お金カツカツじゃんw】


「えへへ……そうなの、これで残金ほぼゼロですからね!

次のクエストで稼がないと生きていけない~!」


【まきぽんヤバいwww】

【早速クエスト受けに行かないとね】


「そうだね、ギルドのみんなはまだインしてなさそうだったから、私一人でも倒せそうな雑魚狩りでもしてよっかな」


【いーね、新しい魔法のテストだ!】

【まきぽん、がんば!】


「ありがと〜! みんな応援しててね!」

リスナーとわいわい雑談しながら、画面の向こうに手を振る。


私は石畳の道を抜け、街の外の荒野に向かった。

少し離れた森になら、ソロ狩りにちょうどいいモンスターがいるはずだ。


 * * *


森に入ると、木陰にピンク色の光の明滅が見えた。ピクシーファングだ。

きらきら光る鱗粉を飛ばしながら襲いかかってくる、牙を持った羽妖精で、こいつを倒せば『ピクシーの羽粉』というドロップアイテムが手に入る。

これはポーションの材料になるので、薬屋に持っていけばそこそこの値段で売れる。

序盤の冒険者にはありがたいモンスターだ。


「じゃ、試し撃ち! いくよー、――ファイア・ボルト!」

杖からバレーボールくらいの火球が放たれ、ピクシーファングを撃ち落とす。

コメント欄がぱっと盛り上がった。


【ナイス!】

【おー、結構威力あるじゃん!】


「いい感じ!お財布すっからかんになったけど、その価値あったかも」


【www】

【まきぽんウケる!】


現実世界の私も、つられて笑顔になる。

うん、今日もリスナーのみんなに囲まれて、配信超楽しい♪


――その時だった。


風が止んだ。

森のざわめきが消えて、世界が息を潜める。

ピクシーファングたちは、突如として何かに怯えるように散り散りに逃げていき、その後ろから、枝を踏み折るバキバキっという足音が響いてきた。


「な、なに⁉︎」

杖を持つ手にぎゅっと力が入る。


すると、暗闇に沈む木立の向こうからおぞましい瘴気を纏いながら、不気味な気配が近づいてきた。

「……え?」

木々の間から現れたのは、禍々しい巨躯。

闇のように黒い鎧を身にまとい、兜から露出した片目だけが異様に肥大化し、真紅の光を放っていた。

「バ……バロール!?」


その外見には見覚えがあった。

――バロール・オブ・ザ・イービルアイ。

まだティルナノ配信者の攻略動画で見たことしかないけど、ガチ勢でさえ討伐にてこずる、最新最凶のボスのはず。

「あれ……これって、どっかのダンジョンのラスボスじゃなかったっけ?」


【え、何? ここバロール湧くとこだっけ?】

【んなワケあるかよ、ここ初期エリアだぞ!?】

【おいおいバグかよ? ヤバくね!?】


足元から凍りついていくように、動けなくなる。


【まきぽん、さっき買った魔導書は?】


「いや、無理無理! てかソロで太刀打ちできる相手じゃ……」


「……ミツケタ」


巨眼がぎらりと光り、私の姿をとらえた。

ひと睨みされただけで心臓を鷲掴みにされるような恐怖に支配される。

確実に――殺される!!


【やべぇ、バロールに捕捉されたぞ!】

【まきぽん、逃げろ!】


――ドォォォォンッ!!!


次の瞬間、バロールの邪眼から赤い閃光が迸った。

逃げる体勢をとる間もなく、画面が真っ赤に染まったと同時に、全身を衝撃が貫いた。


「きゃあああああっ!?」

同時に、ベッドの上でスマホを抱きしめる私の体にも、雷に打たれたかのような衝撃が襲いかかる。

これは――ゲームの中じゃない、現実の痛み?

スマホから波紋のように広がる光の玉が部屋を飲み込み、バロールの姿も、ゲーム画面も、コメントも視界から消えていった。


【まきぽん……おい、まきぽん!?】

【画面真っ白なんだけど!?】

【やばいやばいやばい】


「やだ、助け――!」

私の意識は闇へと落ちていき、喉から搾り出すように発した言葉は、光に呑まれて途切れた。


そして再び目覚めた時、――私は異世界にいた。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!

「ひとりじゃない」って思える瞬間って、胸の奥がじんわり温かくなりますよね。


さて次回、第2話では――なんとかわいい女の子が登場!

そしていきなりまきぽんが「おねーたん」に!?

……しかもその直後に、最強ボスが乱入してきてまきぽん大ピンチ!?

えっ、これもう完全に詰んでるやつじゃないですか……!?


今回は一挙3話公開ですので、続きもすぐにお楽しみいただけます♪


評価やブクマの一つひとつが、次の執筆の力になります。

少しでも楽しんでいただけたら、応援いただけると嬉しいです!

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