ニール一族の娘
「ずっと探していたんだ。ニールの一族でありながら、ニールの力を持たない君をーー」
一握りの人間のみ魔力を持つ世界。
その中で唯一、他者や動物に姿を変える「変姿」の魔術を使う事ができる一族がいた。
ニールの一族と呼ばれる彼らは、魔術師にも見破れない変姿の力によってたびたび権力闘争に巻き込まれた結果、深い山奥に自ら姿を隠し、歴史からその名を消すべくひっそりと生きている。
そんな一族の長の末娘として生まれたものの、一族の特徴である紫の瞳を持たず、変姿の魔術も使えない少女・エリネ。
落ちこぼれながらも大切に育てられてきた彼女だったが、ある出来事をきっかけに里を飛び出し、外の世界で生きていくことを決意する。
しかし、市井の人々に紛れて生活を始めたのも束の間、突然現れた魔術師の青年によってニールの一族であることを見破られ、拐われてしまう。
ニールの魔術は、変姿以外なんでもできる魔術師には不要。
ましてや落ちこぼれの力などまるで役にも立たないにもかかわらず、彼はエリネを屋敷に閉じ込め、嫌がる彼女に「必要だから」と魔力を分け与えてくる。
その目に浮かぶのは恋情ではない。
むしろ嫌悪さえ浮かべているにも関わらず、絶えず向けられる執着の色。
彼の目的もわからないまま抗うエリネだったが、魔力を与えられるうちに彼女自身に奇妙な変化が現れ始める。
「ニールの里でも、この屋敷に来てからも、どこかでずっと感じてた。私だけが私のことを知らないような、何かからそっと遠ざけられているような妙な感覚。みんな一体、何を隠しているの?」
協力者の助けを借りて青年の手から逃れたエリネは、なおも追ってくる彼から身を隠しつつ、今まで感じていた違和感の正体を探し始める。
全ては、自分自身を知るため。
ろくに魔術が扱えないせいで『何か』から遠ざけられてきた自分が、誰にも迷惑をかけず、一族の足も引っ張らず、己の力で生きていくため。
そう思っていたエリネだったが、彼女は次第に自身に関する秘密と一族が背負ってきた恐ろしい宿命を知り、国をも揺るがす大きな策略に巻き込まれていくーー
「私が一番私のことを知らないなんて、そんなのは嫌。
何も知らず、言われるままに生きてきたから、何が起こっても誰かのせいにして泣くことしかできない。そんな自分にはもううんざりなの。無知で無力な私なんて、今すぐ殺してやるわ!」
一握りの人間のみ魔力を持つ世界。
その中で唯一、他者や動物に姿を変える「変姿」の魔術を使う事ができる一族がいた。
ニールの一族と呼ばれる彼らは、魔術師にも見破れない変姿の力によってたびたび権力闘争に巻き込まれた結果、深い山奥に自ら姿を隠し、歴史からその名を消すべくひっそりと生きている。
そんな一族の長の末娘として生まれたものの、一族の特徴である紫の瞳を持たず、変姿の魔術も使えない少女・エリネ。
落ちこぼれながらも大切に育てられてきた彼女だったが、ある出来事をきっかけに里を飛び出し、外の世界で生きていくことを決意する。
しかし、市井の人々に紛れて生活を始めたのも束の間、突然現れた魔術師の青年によってニールの一族であることを見破られ、拐われてしまう。
ニールの魔術は、変姿以外なんでもできる魔術師には不要。
ましてや落ちこぼれの力などまるで役にも立たないにもかかわらず、彼はエリネを屋敷に閉じ込め、嫌がる彼女に「必要だから」と魔力を分け与えてくる。
その目に浮かぶのは恋情ではない。
むしろ嫌悪さえ浮かべているにも関わらず、絶えず向けられる執着の色。
彼の目的もわからないまま抗うエリネだったが、魔力を与えられるうちに彼女自身に奇妙な変化が現れ始める。
「ニールの里でも、この屋敷に来てからも、どこかでずっと感じてた。私だけが私のことを知らないような、何かからそっと遠ざけられているような妙な感覚。みんな一体、何を隠しているの?」
協力者の助けを借りて青年の手から逃れたエリネは、なおも追ってくる彼から身を隠しつつ、今まで感じていた違和感の正体を探し始める。
全ては、自分自身を知るため。
ろくに魔術が扱えないせいで『何か』から遠ざけられてきた自分が、誰にも迷惑をかけず、一族の足も引っ張らず、己の力で生きていくため。
そう思っていたエリネだったが、彼女は次第に自身に関する秘密と一族が背負ってきた恐ろしい宿命を知り、国をも揺るがす大きな策略に巻き込まれていくーー
「私が一番私のことを知らないなんて、そんなのは嫌。
何も知らず、言われるままに生きてきたから、何が起こっても誰かのせいにして泣くことしかできない。そんな自分にはもううんざりなの。無知で無力な私なんて、今すぐ殺してやるわ!」