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「あ?馬鹿言え。ちげーよ。俺が向こうに居たのはここ一週間だよ。お前だって俺とラトが喧嘩を買った件、報告書見たろ?」
肩を竦めて言うノルベルトに、アッシュはそうだったと思い出す。
「・・・嗚呼、そうだった。そう言えば例の事件があったな・・・あまりにもぶっ飛んだ内容だったから見なかったことにしときたかったぜ・・・」
「まぁ、気持ちは分かる。写真見ただろうが、ラトのお仕置きは容赦無かったな・・・」
あれでも実力は確かにB級冒険者だったんだがな・・・とノルベルトが付け足したところで、彼らの向かう先の方から歌詞のない歌が聞こえてきた。
「ん?」
「この声は『ぐー』だな」
「聞き覚えの無いメロディーだな」
順にノルベルト、アッシュ、レオポルトのセリフ。
それ迄王達の会話の邪魔にならぬよう、空気に徹していたレオポルトも思わず口を開いた。
綺麗な澄んだ声はアッシュの言う通り、グレイのものである。
その歌詞のない歌は彼らの目的地であるラトガルドの部屋から聞こえてきた。




