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チェスの国  作者: テープコーン
2戦目 白の領
57/85

2-26

 


「改めてクソだな。あの男・・・」


「嗚呼、俺も国の事が無ければ兄さんを手伝いたいくらいだ」


「あのポーション漬けに適応出来た人間も、あの時はラトガルドだけだったようだしな・・・ノルの奴が三年かけて矯正してた意味も理解できたわ・・・」


「だからあの期間のラトは兄さんとじゃないと眠れないんだ。俺では、ラトは安心出来ないらしい」



そう言って苦笑するレオポルト。

だが、アッシュはソレを聞いて心の中で否定した。


例の期間はラトガルドがノルベルトに拾われる迄の日の一定期間を指す。

ラトガルドは人間兵器としての実験体として身体能力を向上させる為、躊躇なく相手を倒せるようにする為のバーサーカー的な思考を誘引させるための言わば薬付け状態にされていた。

馬鹿ではない彼女がソレの正体を知って拒否をしてた事もあるらしいが、最終的に無理矢理飲まされたこともあるため完全には防ぎきれなかったらしい。


そのせいか、代償が十年たった今でも残っており、記憶の欠落、無理矢理に増やされた膨大な魔力が時折彼女の制御を離れ暴走する事がある事、普段はあまり見せる事のない暴力的思考などである。



他にもあるが、主なものはこの辺だろう。



傍から見て感じるラトガルドのレオポルトにへの思いと、先の話をノルベルトから聞かされているアッシュは思ったのだ。



例の期間中にラトガルドがノルベルトでないと眠れないのは、レオポルトでは安心出来ないからではなく、万が一に何かが起こったとき、自身を殺せる程の力を持った相手がノルベルトしか居ない事を知っているからだと。


 

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