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黒の領 その1
ー 黒の領 黒の城ー
「ノルっ!何処に行った⁈ノルベルトォオオ‼」
黒の城に響く怒声。
黒の王族を示す紋章の入った軍服を身に着けた、長身、金髪の男がぐしゃりと握りつぶした紙を片手に探し人の名を廊下で叫んでいた。
彼の名前はレオポルト。
レオポルト・シュヴァルツ。
黒の王様の弟で黒の領の女王、因みにチェスの駒に準えた軍の役職名である。
そして彼が名前を叫んでいる人物こそ、彼の探し人であり、兄であり、このチェスの国の王様の1人であり、黒の軍の最高責任者であるノルベルト・シュヴァルツ。
鬼の形相で城中を探し回るレオポルトが手にしている紙には、『現在お出かけ中。今日の午後の会議はレオポルトに一任する☆(デフォルメされ、ウィンク&サムズアップしてるノルベルトの絵)』と書かれていた。
ようは黒の王様、ノルベルトは会議が面倒で弟に押し付けて逃げ出したのである。
レオポルトはそんな彼を説教するためと、会議に出席させる為に探し回っているのだ。
「あんの、クソ兄貴がぁああっ‼」