81話 招待客
81話目投稿します。
少女との再会は小さな決意を胸に宿す。
招かれた客と、予想だにしなかった姿、いずれも宴に添える華に違いはない。
『イヴ!』
馬車の到着を聞くや否や、急ぎ飛び出た屋敷の前。
車内から飛び出してきた幼い少女を抱きしめる。
「おねぇちゃん!!」
これでもかと言う程に強く力が籠もってしまうが、痛がる様子もなく、少女もまた、ありったけの力で私を強く掴む。
『ごめん、ごめんね?』
「ううん、いいの。会えるって解ってたから…」
後に続き姿を見せた叔父、
「連絡は聞いていたが、本当に無事で良かったよ。フィル。」
その後ろからもう一人、姿を見せたのは、
「フィル様、ご無事で何よりです。」
マリアン=オストルこと、マリーだ。
『叔父様、それにマリーさんも。』
曰く東領の救世主となった人物の帰還となれば、賛辞の意を示すのが義というものだ。と東領主の名代として同行したらしい。
『ご迷惑と心配をかけました。』
結局、成したことより掛けられた心配の方が余程大きい。
とはいえ、マリーと会えたことは予想してなかった分、一層嬉しい。
その後、屋敷の従者総出で主と同行者の帰還受け入れの流れとなり、私の寝室に運ばれたイヴはさして時間を掛けない内にベッドの上で寝息を立て始めた。
『まだ小さいのに強行軍は大変だったよね。』
眠る姿、その顔を改めてじっくりと確認する。
それ程時間が経っているわけでもないはずなのだが、記憶の中にあるはずの少女の顔は靄が掛かったようにはっきりしない。
『似てる…と思うんだけど、門の影響なのかしら…』
イヴが喰らう影が闇魔法の一種とするなら、二つの世界の狭間に居るはずの少女の1人とイヴに類似点がいくつかある。
「おねぇちゃん。」
その頬を撫でていたせいか、起こしてしまったようだ。
『イヴちゃん…起こしちゃたかな?、ごめんね。』
「ううん、いいの。でもぎゅってしてほしい。」
寝転んだまま、両手をこちらに向けて広げる。
『うん。いいよ。』
抱きしめたイヴが私の耳元にで呟く。
「またあえた。なんどでも、どこでも。イヴはそれがうれしいの。」
あの姉妹は世界の果てで一緒になれたと言っては居たものの、私の中で消しされない悔やみ。
せめて、メルとどこか似ているこの少女には、已む無く選ばざるを得ないような歩みをさせないように、と、そう心に決める。
いつもの食堂に置かれている大きなテーブルは部屋の中央から動かされ、今は立食形式の宴に合うようなテーブルがいくつか用意され、料理人が腕に縒りをかけたであろう数々が部屋の脇に置かれたテーブルに並びつつあった。
「フィル様。ご友人がいらっしゃいました。」
執事に声をかけられ、カイルを伴ってロビーに出向くと、可愛らしい服を身にまとったパーシィの姿を見つけた。
『カイル。エスコート頼めるかな?』
こういった屋敷に招かれる事に縁が無いと言っていたパーシィは、落ち着かない様子が見て取れる。
「俺にとっても友人だしな。任せろ。」
二の腕を叩く。
こういう場合は恭しくするほうが様になるんだけどなぁ…と心の中で呟くものの、カイルらしいな、とも思うわけで、ついつい笑ってしまう。
それなりの正装姿のカイルに手を引かれ、こちらに向けて歩くパーシィ。
私の姿を捉えたようで「うわぁ…」と驚き口に手を当てている。
「お、オマネキいただき、えと…あ、ありがとうごじゃ!…いま、す。」
噛んだ。
『緊張しすぎだよ、パーシィ。私の友人で招待したんだからそんなに畏まらないでいいよぉ。』
ゴメン、といいつつも笑ってしまう。
「いや、でも…ホントに私、こんなの初めてので…それに、フィル、様?すっごい綺麗だし…」
『様はいいって。』
「おや、これは…可愛らしいお嬢さんだね?」
突然、私たちの後ろから掛けられた声。向き直った先に立っていたのは叔父、アイン=スタットロードの姿だった。
まぁ、するな、という方が無理な話ではあるが、叔父の姿を見るやいなやパーシィはより一層その身を固くしてしまった。
彼女の緊張を知ってか、微笑み近づく叔父は彼女の目の前で跪き右手を求めた。
パーシィは戸惑いつつも右手を差し出し、叔父は口元にその手を近づけ、離した。
『カイル、アンタも見習いなさい?』
「経験値が違うって。」
顔を真っ赤にしてるパーシィ。
『真面目に取ると疲れるよ?パーシィ。叔父様、あまり私の友人を苛めないでほしいんですけど?』
「おやおや、これは手痛いね…でも可愛らしいというのは冗談でもないよ。むしろレオネシアに捕まらないようにね?」
『あぁ〜それは言えますね。』
では後ほど、と私たちを残して叔父は姿を消す。
案の定、パーシィはその身を甲冑でも纏っているかのように固めている。
『何ヶ月か前の私みたい。』
「確かに。」
相槌を打つカイルの横腹を小突く。
『アンタも一緒でしょうよ。』
うぇっへっへ、と笑うカイルはその変な笑い方も父に似始めているような気がした。
しかし、そのやり取りはパーシィの緊張を解す一役を買ったようで、
「ふふっ、あははっ!」
と笑い声を上げるパーシィに一先ず胸を撫で下ろした。
再び彼女のエスコートを任せ、食卓へと向かわせた所にもう一人、私の招待客の到着が告げられた。
「いやぁ、これは思ってたより豪華だねぇ?。あ、フィル発見!」
こちらは緊張感など持ち合わせていない様子だ。
小走りに私に駆け寄り、抱きつこうとした直前、何者かに割って入られる。
「こら!ロニー。アンタは相変わらず…」
ロニーを遮ったのは、彼女の姉であり、東領主の名代として馳せ参じたマリーだった。
「わ、わわっ!って何でマリーが居るのさ!」
『私を心配して来てくれたんですよ。』
「き、聞いてないよぉー!」
首根っこを掴まれ、半ば引きずられるように連れて行かれたロニー。
「フィル様、不肖の妹は私にお任せください。」
マリーの笑顔はどこか怖い気もするが、とりあえず姉妹での話もあるだろう、とお任せする。
少々額に浮かんだ冷や汗を感じつつ2人の姿を見送る私に、三度目となる執事からの連絡。
それは僅かに焦りを感じる物だった。
「フィル様!、申し訳ありませんが、しばしのお相手をお願いします。私は当主様をお呼びして参りますので!」
急ぎロビーを後にした執事に気圧されるように『ええ。』と応えた私に、更なる招待客の声が届く。
「フィル=スタット。無事な姿が見れて俺も嬉しいよ。」
恐らく、レオネシアの計らいとは思うが…本宅屋敷に招かれた今宵最後の招待客は、私に『まさか…』と言わせる程に予想外の人物だった。
『ラグリア様…』
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予期せぬ巡り合わせが生み出す旅の絵図。
静かな月夜に語られる歴史が示すは何か?
次回もお楽しみに!




