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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第四章 異世界
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75話 開かれた門

75話目投稿します。


残された時で投げられる想い。

永久とも言えたかの時間は、己に課した理を食い破る程に膨らむ。

『ダンス…って…どういう、事…ですか?』


ダンスの相手なんて、カイルと…いや、そんなわけがない。

ここにあの御方が居るはずなんてありえない。

ゆっくりと振り返り、頭をポリポリと掻く姿は、私の知るグリム=ランドとはまったくの別人の空気を纏っている…いや、もしそうなら、私の知るグリムとその人は似ている…似ていたのだ。

『グリム様、全てを話してくれる、と言いましたね?』


「あまり時間がないのは本当なんだがな。口を滑らせてしまった俺も悪いか…」


やれやれ、と肩を揺らし、こちらに向き直るグリム。

ゆらりと動いたその姿を止める間もなく、私の体は一瞬で抱え上げられ、部屋に置かれた長椅子へ放り投げられる。

『きゃっ!っ…何を!?』

身を起こそうとするが、覆いかぶさるグリムに遮られ、私の両の手首は彼の手によって拘束された。

『グリム…様!』

開いたままの手を私の首元に当て、なぞった直後、その手は私の衣服を掴み…

『い、や、やだ!!』

一気に引き裂かれた。


ただの布切れに成り下がった私の衣服が床に舞い落ちる…時間を引き延ばしたかのように、ゆっくりと、ゆっくりと…

肌に触れる空気が冷たい…季節はもう夏に近いというのに。

腕を拘束され、押さえつけられたこの身を捩る事も儘ならない。


「…フィル。やはりキミは美しいな。」

『…な、なんで…こ、こんな…』

声が上擦る。むしろこんな状況でそうならない方が変だ。

グリムのこの行為が、何を示すのかくらい…私にでも解る。

でも…彼は動かない。

彼の片手は、私の頬に添えられたまま、動かない。

ただ、その目が、視線が、私の瞳を捕えて逃がしてくれない。


「あぃ…」

一言、口にしかけた言葉を止めた。

私の手首の拘束が解かれ、体を離す。

脇に開かれた鞄の中から、ライトプレート、鎧というには小綺麗すぎるソレと、丁寧に織られた白い装束が差し出された。

受け取り、袖に腕を通すが、体の震えはまだ収まらない。

でも彼は何を言いかけたのか?

『グリム様…今、貴方が言おうとした言葉も「全て」に含まれるはずです。』

諦めたように微笑むグリムは()()()()嫌味…いや負け惜しみを口にする。

()()()()()、とは言ったものの、これは一本取られたかな?」

そしてやはり、()()()()()()照れた表情で言った。


「――――――――」




広大な空間、その床に円状に描かれた魔法陣、中央の筒の上部に向かって渦巻き状に造られた回廊を駆け上がる。

辿り着いたその場所に待機していたニコラは、私の姿を見てホッと胸を撫で下ろした。

「よかった。間に合わないかと思ったよ。」

返事をする間もなく、手を取られ、光る筒の上部に浮かんでいる骨組みのような球体に押し込まれた。

『ちょ、っと!、何ですか?』

球体に押し込められた直後、私の体がフワリと浮く。

『わっ、わっ…っとと…』

バタバタと手足を動かし、何とか体勢を保つが…

そもそも浮かんでいるのなら、どちらを見てても関係ないか…

(いや、でも待って…この服だと…)

捲れはしないが、方向によっては中は見えてしまう。

それどころではないのは解るが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいのは間違いない。

何とか周囲に合わせて体勢を保つ。


「さて、フィル。そろそろ時間だ。準備は…と言ってもキミにできる事はないのだけれど。」

視界が揺れる。

いやこれは、視界というより私以外が揺れている、のか?

目に映る研究員の中には、床に伏せたり手摺に体を預けている者も居る。

「来たね…」

言いながらニコラが下層側へ視線を向ける。

視線の先には…先ほどまで私とグリムが居た場所、遺跡造りの部屋。

高い位置から見える部屋から、黒い光…いや、ニコラとの会話から思うに、闇魔法の光が立ち上った。

『……』

この使用者は…


連鎖するように、周囲の光る筒の中、一つずつ、同様の光が出現する。

5つの筒の全ての光は、筒の内部で黒い球体状に留まり、同じく足元…浮いているから足元でもないが、下の方から他より強い闇魔法の力を感じる。

床の魔法陣はその光とは対照に金色様に輝き、全ての筒を結び、紋様を介してその魔力を集めた。


次第に大きくなる揺れと、下層の光。

対照的に僅かに力が失われていくような光が一つ。

「グリム様!」

私同様に気づいていた…というよりニコラは懸念していたのだ。

恐らく彼以上にこの魔法に必要な力がどれ程の物かを知っている者は居ない。

私は…


『ラグリアァァァァァァアアアッ!!』


出来るだけの想いを込めて、彼の名前を叫んだ。

想いが力になると言うなら、今の私に出来る事は、彼の名前を強く、強く叫ぶことだけだ。


声が届いたのかは解らない。

精一杯の叫び声を発した直後、私の体は黒い光に包まれたのだった。


『ラグリア…ラグリア!』

黒い光に包まれた途端、足、膝、手の平に地に触れるような感覚が戻り、私は力無く項垂れた。


光は無い。

音も無い。

閉ざされた暗闇の中、手の甲に落ちる雫は私の目から溢れていた。


止め処なく溢れる涙はやがて周囲に光を散らせ、次第に広がる輝きが夜空の星のように瞬き始めた。


光が動き始め、一つの方向に向かって遠くへと飛び去り消えていく。

(いや…これは、光が飛んでいるんじゃない…)

私が動いている。

無数の星より速く、速く、暗闇の中、何処かへ向かって…


『これが…ラグリアと、皆の意思…』


「フィルさん…」


暗闇の中、私の耳に聞こえてくる声は…


『リル…何で…』

感想、要望、質問なんでも感謝します!


闇の中での再会は何を意味するのか?

秘められた想いを知る。


次回もお楽しみに!

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