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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第四章 異世界
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70話 仕入れのオマケ

70話目投稿します。


突如として駆り出された王都。しかし景色を楽しむ時間もなく走り回る街並みでふとしたご褒美。

さりげない優しさもまた人柄か。

『いい加減その顔やめてくださいよ。』

食事時になると自然と人が集まるこの研究室。

今日も十数名が席についた部屋の中央の食卓、席についたその数十名の顔はいずれも似たような顔。

取り皿を並べながら不服そうな彼らに私なりの文句を吐いた。

「今日も野菜炒め…昨日も…一昨日も…」

『違いますよー。今日は豚肉野菜炒めです。ほら、さっさと食べちゃってください。私もそれなりに忙しいんですから。』


あの日、私が当直室でグリムから風邪薬をもらい、リルに飲ませたのだが効果は出ず、結局今日に至るまで彼女の体調は回復していない。

結果、私もメルもリルの分だけここでの作業量が増えるのは当然の事。

本格的に体調を崩してしまったリルは別の寝室で療養する事となり、ここ数日いつもの寝室で眠るのは私とメルだけとなっている。

メルはメルで姉の不在が寂しいようで、床に入ってしばらく経つと私のベッドに潜り込んでくる。

それはそれで可愛いので嬉しいのだが、私にしてもメルにしてもリルが心配なのは同じだ。


「リルちゃんの美味しいご飯が恋しいよぉ~」

確かにリルの作る料理は美味しい。

『私だって…それなりに…』

家で母の手伝いはしていたのだが、確かにしっかり料理を教わった記憶というのは無い。

あまりに手厳しい研究員たちの意見。一つまみ、自作した野菜炒めを口に含む。

『別に不味くないと思うけどなぁ…』

脇から数名の「審査員」の口が開く。

「いやぁ…そりゃ不味くはないよ?。」

「そうそう不味くはない。ただ、なんていうか…男料理みたい?」

「あ、それそれ。それだ。」

酷い謂われ様?なのかな?

『それ褒めてないですよね?』

まぁ、実際に「美味しいか?」と問われたらまぁ…違うんだろう。

リルが元気になったら、少し教えてもらおう。と、そう思った。




「フィル。こっちだ。」

翌日、私は予想外の仕事を与えられる事となった。

久しぶりの外出となった景色は()()()()()物珍しさと、何よりずっと研究所の敷地から出る事がなかったのも相まって解放感に満ちている。

町の景色に目を奪われがちな私の前を歩くグリムがこちらを振り返り手招きをしている。

「すまないね。最近私たちも忙しくなってしまってね…こうして些末な買出しにキミを駆り出してしまった。」

『いえ、でも私が役に立てるんですか?、荷物運びなら…』

男手の方がマシだろう、とは思うのだが…

「山々なのだけどね。正直最近の()()は猫の手も借りたい程度には忙しいんだよ。」

確かにここ数日、片付けを申し付けられる場所が多い。

流石に一日ですべて終えるのは難しく、別日に割り振りながら熟しているわけだが…

リルの体調は思ったより芳しくないようで、メルも、姉の分までと頑張っている。

私にしろメルにしろ、少し過労気味なのはある程度は仕方ないが、そろそろメルの体調も心配になってくる。

『誰か…どこかからお手伝いさんとか呼べたりはしないのですか?』

「ふむ…確かに…」

と、ふいに差し出された手が私の頬に触れ、親指で私の目元をなぞる。

「疲れ、寝不足もあるようだね。目の下に隈が出ている。」

『…少なくとも読書する余裕はなくなりましたね。』

少しの嫌味を聞いたグリムは肩を一度上下に振るわせ、ふっと息を吐く。

「少し考えておこう。さて、あまり時間も取りたくないので少し急ぐ事にしよう。」




『ぜぇぜぇ…』

第一研究所の近くに戻ってきたのは空が夕暮れに染まる頃だった。

といっても、出発したのは昼食の片付けが終わった後だったので時間はそれほど経っていない。

が、その短い時間で回った数は両手で足りないほどで、流石に息も上がる事となったわけだが…

「次で最後だ。頑張ってくれ。フィル。」

『はぁ…はぁ…まだ何か買うものが?』

「さぁ、入りたまえ。」

顔を上げた先、グリムが開けたその店の看板には「服飾店」と書かれている。


予想外の目的地に少々戸惑うが、店内へと招かれ足を踏み入れる。

服飾店とは言っても、立地的にいわゆる住宅街が近いこの店舗は煌びやかな洋服や装飾品というより日用的なモノを多く取り扱うお店のようだ。

『あの…グリム様?…』

店主と思われる女性と話しをしているグリム。

たまにチラチラと二人でこちらを見たり…なんなんだ?

「フィル、こっちに来なさい。」

言われるままに近づくと、そのまま店主によって試着室に放り込まれた。

一緒に放り込まれた数着の服。

(えーと…着ろ?って?…)

確かに今着ている服は牢獄に捕らわれた時に着せられていた所謂「囚人服」といったものに近く、正直これで外出となると…その何というか…

(確かに余所行きの服…ではないよね…)

そういえば、と思い出した。

捕らわれる前に私が持っていたものってどうなったんだろ…

服、鎧…あと何より父と母から渡された大事な物。

手段があるなら、何とか探したいところなのだが…。


姿隠しの布の向こうからグリムが声を掛けてくる。

「好きなのを選ぶといい。」

『…はい。』

とりあえず時間を取らせるのも悪いので、手早く渡された服から選ぶ。

日常的に使うなら動きやすい方が便利だ。


結局選んだのは簡素な服。

試着室から出た私の姿を見たグリムは、追加で数枚のエプロン、更に同じような見た目の近い服で、少し小さいもの、更に小さいもの。

合わせて2着ずつを店主に包ませた。

流石に一気に荷物が増える事となってしまったが、これはグリムが運ぶようで助かる。

私は私で、試着室を出てそのまま店を後にすることになったわけだが…。

『あの…ありがとう…ございます…。』

「さぁ、暮れる前に戻ろう。」




研究所に戻り、戦利品を保管庫に片づける。

動きやすくなった服と、追加で仕入れてもらったエプロンのお陰で、今は多少の汚れを気にしなくてよくなった。

『ふふ…いいな、これ。』

何となく、片付けも捗るような気がした。

手早く済ませ、急ぎ足で調理場へ向かう足取りは軽い。


『よぉし、今日は…牛肉野菜炒めだ!』

感想、要望、質問なんでも感謝します!


慣れていくこの環境も悪くないと感じ始めた。

その先に待っているものは何か?、ここがどこなのか…もう一度考える必要がある。


次回もお楽しみに!

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