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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第四章 異世界
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66話 鏡像

66話目投稿します。


今は会えぬ人の顔を思い出す。

再会の願いを叶えるために今はただ、その機会を待つ。

「ではフィル=スタット、くれぐれも息災で戻るのだぞ?。またの機会、楽しみにしている。」

僅かに熱くなってくる季節の心地よい青空の下、この言葉を私に投げかけた金髪の青年。

ラグリア=エデルティス。

千年王国エデルティアの王で、その眼差しは純真さと安らぎ、そして年齢の割りに全てを見透かすような

不思議な雰囲気を持っていた。


(残念ながら陛下、息災で…というのは少々難しいかもしれませんね…)




今、私の視線を釘付けにするその姿は髪の毛は随分長いもののラグリア=エデルティス本人で間違いない。

容姿以外でただ一点、それも私が感じる些細な相違点。

そこだけがラグリアとは異なる。

瓜二つのその目、確かにラグリア同様の眼差しではあるはずなのだが、その奥にはこの場に居る他の者同様の…いやむしろ、一層強い狂気を感じてしまったのだ。


事の次第を伺う私たちを余所に、取引の会場に集まる人影は、3つの集団に別れ話し合いを始めたようだ。

察するに、品定めを終えて引き取るかどうかの意向の相談でも行っているのだろう。

いずれの集団からも異様な熱気が感じられ、少なくとも姉妹は恐怖を感じてしまっている。

少しでもその気持ちを落ち着かせるために、それぞれの肩に触れる。

ビクッとなりながらも、私の顔を見つめる視線に頷きで返す。


気になるのはやはり、正面に立つ集団。

中には当然、ラグリア瓜二つの青年の姿もある。

私の視線を感じたのか、相談事の最中、ふいに顔を上げた目と視線が交ざる。

口元はどうにも安心できるものではないが、笑みを浮かべているようにも見えるが…

(もしかしたら…暴れなくても大丈夫?…な可能性も…)

楽観的過ぎる考えに心の中で苦笑するが、妙な予感がする。

恐らく招く結果としては「嫌な」と頭につく類いの予感だとは思うが、少なくとも今は。




「さて、各班の皆様方、そろそろ決とさせていただきたいのですが、いかがですか?」

この部屋の入口に居た女性研究者が、3つの班に向かって呼びかけ、

話し合いを終えた集団から、それぞれ1名ずつが部屋の中央に集まる。

3つの集団で話し合った内容を各々の代表者で話し合い、最終的な結論を出す…といった感じだろう。


「待て!どういうことだそれは!」

3人のうち、一人が突然大声を上げる。

会場の中央から突然上がった大きな音に、騒めきと視線が集まる。

その光景に驚いているのは、招かれた参加者だけでなく、傍らの姉妹、脇に立つ女性研究員もその成り行きを見守る形となる。

「そうだ!そんな話、納得できるものか!」

釣られるように、もう一人が声を上げ、最後の一人はやれやれといったようすで肩をすくめ、自分が居た集団の方へと助け船を求めた。

歩み出たのは、ラグリアと瓜二つの青年だった。


「…さて、わざわざ説明するのも馬鹿馬鹿しいのだが、第四、第六の御歴々方も納得いかないようだね?」

大仰な身振り手振りで周囲の視線を集める青年の言葉にざわつく会場が静まり、彼の言葉を待つ。

「先ずは我ら第一研究所の要望だが…今回の3名は全てこちらで貰い受ける。という事だ。」

己の身内となる研究者以外、先んじて話を聞いた代表者以外からの抗議が上がる中、彼の言葉は続く。

「第四の。貴方がたはそこまで素材に困っている状況でもなかろう?。()()()()と、までは敢えて公言は控えておく事がこちらの譲歩と思い給えよ。」

第四と言われた勢の声量が途端に小さくなる。

次に、体の向きを変え、再び開かれる口から出た言葉は、

「第六の方々はもう少し研鑽すべきではないか?。()()は少ないわけではないが、無限ではないのだぞ?。はっきり言って無駄に使い古されてもいい迷惑でしか無いぞ?。」

ピシャリと言い放った強気な台詞に改めて抗議するような声が上がる様子はない。


会場は静まり、新たな抗議が湧かない様子に、傍らに立つ女性研究者が最終的な決定を会場に向けて告げる。

「では、今回、こちらの3名は第一研究所の扱いとさせていただきます。」

その言葉を確認した第一研究所の代表者は、女性研究者、敷いては私たち3人の方へ歩みより、女性からいくつかの書類を手渡され、私たちをこちらへ、と促す。


今更ながら、その場の流れに任せるしかない私たち3人だが、中でもリルとメルの姉妹は「何がなんだか」と言った様子が見て取れる。

対して、私は、「何となく順調すぎて」逆に恐ろしいのだが、

今のところ酷い扱いを受けてないという事で大人しく男の後ろに付き従う事とし、まだ口を開くわけにもいかず、顔を見合わせ頷いて見るものの、2人としては離れ離れにならないという事で僅かに笑顔が伺えるのがせめてもの救い…と思うべきか。

私も笑顔で応えはするが、半分は苦笑だ。

(次は、あのラグリア様そっくりな人を相手にしなきゃいけない…って事になるんだろうなぁ…)

先ほど見た光景から、骨が折れそうな事になりそうで、少々気が重い。




そういえば、とその姿から、ラグリア本人の事を思い出す。

「もう少し話がしたかった」と言っていたラグリア。

結局あの日以降その機会が訪れる事はなく、普段から簡単に会いにいけるわけでもないが、今は特にそれも難しい。

(戻れたら…何とか機会を作ってラグリア様ともお話がしたいな…)

など思いながら、おや?と気付く。

戻る戻れないの不安に悩んでいた事を忘れている自分が居る。

ラグリアの顔、正確には瓜二つの顔を見てしまったからだろうか?

僅かに二つの世界の繋がりを無意識に感じ取っているのか、もう「戻れない」という考えが浮かぶ事はなかった。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


成行きに任せた先、3人の少女が連れられた先で待つのは何か?

第一研究所で行われる研究とフィルたちに与えられる役目は何か?


次回もお楽しみに!

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