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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第四章 異世界
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59話 開拓の途

59話目投稿します。


訪れた町は以前訪れた町並みと大きく違っていたが、変わらぬものもそこにある。

冒険都市キュリオシティ。

王都エルディアのやや北部に位置する町。

『あ―…これはまた…』

始めての旅で最初に訪れた町だった場所。

ノーザン山を下り、その先の丘陵地域に構えるその町は私の記憶の中のソレと大きくかけ離れている。

強固な外壁は見覚えのある印象とは程遠く、町の内外の境界を明確にするためだけに造られたような水路とそれをぐるりと囲む街路。

壁に至っては、外からでも町の様子が見れるほどの高さしかない。


町の外観に大きな違いはあるものの、活気そのものは私の記憶と遜色ないほどに賑やかな印象だ。

強いて挙げるなら、その光景を生み出す人々は、冒険者というより労働者といった感じだろうか?

町の入り口に差し掛かる私の姿に気付いた門番が元気に声をかけてくる。

「旅の御方、開拓都市キュリオシティにようこそ!」

『開拓都市…ですか?、冒険都市ではなく…?』

「?、えぇ。ここは開拓都市キュリオシティですよ。」

少し怪訝そうな顔をした門番は、改めてこの町の名前の頭に「開拓都市」と答えたのだ。

『あ、いえ、すいません。良ければ宿屋を教えていただけますか?』


『ふぅ…』

気さくな門番に教えてもらった宿屋で借りた一室。

何の偶然か、教えてもらった宿、この部屋、そして窓から見える町の風景も見覚えがある。

王都への旅路で私に宛がわれた部屋で間違いない。

ベッド横に設えられた窓に寄りかかるように、町の風景を見下ろし、この世界の事を考える。


今日一番に驚いたのは、間違いなく…

『晩御飯の特性スープ!』

いや、違うぞ。私。


開拓都市。

キュリオシティの名前は同じだが、俗称として頭に冠されたモノが違う。

この世界に来てから気にも留めてなかったが、もしかしたら千年王国も違うのだろうか?

開拓…町の中を活発に行き来している人の多くは、木こりや鉱夫といった資源採掘を行う出立、もしくは町の外から資源を輸送するような生業、または資源を使って建物を造りだす大工であったり、鉱石を加工する鋳造所で仕事を行う者、町を作り上げるのに主眼を置いた職業と思われる人が殆どだ。

冒険都市と呼ばれていた町で溢れていた冒険者たちとの違いは誰が見ても明白だ。

『つまり…この町はまだ建設の途中…という事…かな…』




『んー…思ってたより本、多くないんだな…って研究所と比べるのも良くない、か。』

翌日、宿の主人に町の蔵書を扱う図書館の場所を聞いた。

以前ここと似た町、冒険都市キュリオシティに訪れた時にはゆっくりと町の散策に充てる時間も無かったのを思い出す。

『散策…か。』

パタンと分厚い本を閉じ本棚へ戻す。

案内してくれた司書さんは、見た目の印象通り、本、読書が好きそうな男性だったが、蔵書の少なさから少々退屈そうに本の整理などを行っている。

『あの…お仕事中ごめんなさい。ちょっとお話しませんか?』

唐突な私の提案に、司書さんは驚きはしたが嬉しそうに頷き、お茶まで用意してくれるという歓迎ぶりだった。


図書館は基本的に陽光から本の劣化を防ぐために光量が抑えられていて、建物全体的には暗さが際立つが、本を読むための一角は十分な明るさが確保されている。

歓談の場として案内されたのも、その一角で、昼下がりのこの時間、冬が明けたこの季節はとても心地よい温もりを届けてくれる。

「いやぁ、驚きました。まさかここにお客さんが来るとは…」

『ふふ、えっと…初めまして、私はフィルと言います。見ての通り旅をしてます。』

「あぁ、すいません。僕はリーブと言います。ここに勤めて…いや、ここが出来てからと言った方がいいかもしれない。5年程になるでしょうか?」

自己紹介の中で、私にとっては驚くべき情報が飛び込んできた。

『えっ?、ここが出来てからまだ5年…なのですか?』

「はは…驚かれましたか?。この書庫をご覧いただけば解ると思いますが、蔵書が少ないでしょう?」

図書館という施設にしては少ない蔵書に、恥ずかしさを感じているようだが…

「お恥ずかしい事ですが、この町はまだまだ発展の途中なのです…フィルさんがご覧になっていた区画はどちらかというと伝承であったり、空想の物語などが多く並ぶ棚ですが、他の区画、その殆どがこの町の発展や成り立ちなどの記録物が並んでいるんですよ。」

『へぇ…そうだったんですね。』

リーブと名乗った司書さんは私が思っていた以上に暇を持て余していたのか、退屈を吹き飛ばすかのように饒舌に話しが続く。


「普通に考えれば、まだまだ発展途中の町で何で図書館が?…とか思いませんか?」

『言われてみれば確かに…』

本好きとしてはあまり気にもしてなかったし、蔵書が保管される施設はあって困るとも思えないが、あくまで本好きの意見であって、一般的では無いのだろう、と改めて思った。

「僕も直接聞いたわけではないのですが、この町の始祖とも言われる御方がこういった文献を残す事に気を配ったと言われています。」

始祖…とはまた大袈裟にも感じたものの、その考えはとても素晴らしいと思うのもまた、私やリーブが本好きな点からの思考なのだろうか?と少しばかり苦笑する。




陽の光が随分と傾き、随分と長い時間リーブとの会話を楽しんだ私はまた改めて訪れる事を伝えたのち、図書館を後にして宿への道を歩いていた。

行き交う町の人々は揚々に今日の仕事を終え、満足そうな顔を浮かべ、帰路を辿ったり、酒場を訪れたりと様々だ。

『酒場の賑わいは変わらないんだねぇ…』

染み染みと口から出た言葉は、開拓途中のこの町の活気と雑踏に掻き消される。

眩しさに翳した指の隙間から橙色の光がすり抜け、町の所々に灯され始めた篝火がその役目を引き継いでいく。


『世界が違っても、町の光が変わっても、温もりは同じ…みたいだね。』

感想、要望、質問なんでも感謝します!


聞かされた町の歴史はまだまだ浅い。そこから導き出された一つの推測は元の世界に戻るための鍵となるのか?


次回もお楽しみに!

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