46話 参謀の妹
46話目投稿します。(同日閑話連投です)
グリオスとの会合、新たに知り合う女性の正体は?
「フィル様、お待たせしました。こちらへ…」
応接室に案内されるまでの間に数人に対応されたが、気のせいかいずれの人も体格がゴツい。
これも主に似るものなのか…果たして?
(まぁ…鉱山なんだから屈強なのは当たり前か?)
そう言えば、父もこんな背中だったか?、と思い出す。
結局纏まった時間も取れず故郷を出てから手紙の一通も出せず終いである。
今度こそ王都に戻ったらゆっくりさせてもらう。
せめて一月?二月?。ともかくゆっくりと研究所の書庫で思う存分本に埋もれたい。
大きな扉の前に立つと、脇に控えていた兵士が扉を開く。
「主様、フィル様が参られましたよ。」
通された室内はそれなりに豪華ではあるものの、どこか作業場地味た雰囲気で、この部屋の主の雰囲気とも合っている。
「おぉ、お?」
はて?と私の姿に少しばかりの疑問顔。
『あー…』
恐らくは城で私を見た時との格差から来るものだろう。
『グリオス様、こうして直接の機会は初めてだと思いますが、改めまして、フィル=スタットと申します。』
裾を少し上げ、頭を下げる。
「いやはや、済まない。女性は「化ける」とは言うが、その姿もまた其方らしいと言ったところか。失礼をした。グリオス=オストロードだ。よくぞ参られたな。」
初対面とは言わないが、互いに見た事がある程度の面識だ。
しばしの歓談としての話題は、私の旅の話と、先日の社交の場での内容が主だ。
正直後者に関しては、苦笑しか出ないから困る。
『それで、竜の様子はどうなのです?』
グリオスは頷き、待機していたお付きの部下に合図を送る。
「この者は私のお付きでな。参謀であり、優秀な兵士だ。」
紹介された女性、軍服に近い小綺麗な制服を纏った眼鏡美人。
知的な雰囲気で、書類を脇に抱えて立つ姿はまさに「参謀」という言葉が似あう。
どこかで会った事があるような気もするが…はて?
「マリアン=オストルと申します。マリーとお呼びください。以後お見知りおきを。」
見覚えがあると思うのだが、思い出せない。
少々頭を悩ませている私を他所に、抱えていた書類のいくつかを差し出す。
「フィル様、こちらをどうぞ。」
手渡された書類には、ここ10日間程の周辺地域の被害状況が記されたもの。
テーブルに広げられた地図は、その地域に印が描かれている。
『火山の被害は山脈の反対側の方がひどいのですね。』
「あぁ、手を振って喜べるような事ではないが、国内への被害を考えれば運が良かった…とも言える。」
別の資料に目を向けると、そうとも言えないようだ。
「山脈の向こうが無人の荒野というわけでもないのでな。」
グリオスにも新たな書類を渡しながら、マリーは付け足す。
「山脈の東から難を逃れた民たちは、現在オスタングの外に建設中の避難所に身を寄せてます。」
ただ、とその顔が曇る。
「竜、だな。あれに動かれると一溜りもない。」
地図に避難所として記されている場所は、オスタングから少し南西の平地。
私たちが通った場所から少し離れていたようだ。
「ええ。平地ともなると、竜の襲撃があれば逃げる場所さえ無いでしょう。」
マリーは地図に指を落とし、竜が住処としている山脈から、避難所へと指を走らせる。
「本来であれば、オスタングの中に避難所を造りたいところではあるのだが、我らの町は構造上、急な拡張は難しい…避難民ともあれば待たせるわけにもいかん。」
つまり、今、この東領が抱える問題は私が考える以上に大きく、脅威はいつ襲い掛かっても可笑しくないという事だ。
「幸い…というのも変な話ではあるが、ここ一月辺りは大人しいのがせめてもの救い、と言ったところか。」
やれやれ、と書類をテーブルに放り投げ、グリオスは背もたれに体を預ける。
『竜が求めるものが何なのかわかりませんが、少なくとも次に襲撃されるとしたら…』
「今度は間違いなく、山脈のこちら側…という事になるでしょう。」
部屋の中に重苦しい空気が漂う。
「ひとまずはアイン殿の到着を待つしかなかろう。マリー、予定ではどうだ?」
ぱらぱらといくつかの書類を眺め、
「早馬の連絡では恐らく明日か、遅くとも明後日辺りでしょう。」
私たちは顔を見合わせ、ひとまず現状の確認を主とした話の場を切り上げた。
『マリーさん、出来れば叔父の到着までに、避難所の周囲を含めた地形の詳細を調べておいてもらえますか?』
「分かりました。出来る限りの情報を集めましょう。」
「フィル様。少しよろしいですか?」
グリオスの部屋を後にした私に、マリーの声がかかる。
『えぇ、マリーさん。どうかしましたか?』
「いえ、至極個人的な話なのですが、お時間宜しければ少しお話でも、と。」
幸い火急の用事はない。笑顔で了承する。
「ありがとうございます。では私の私室に参りましょう。」
マリーの私室。彼女の見た目と同様に、綺麗に清掃、整頓が成された部屋だ。
「お茶でも淹れますね。掛けてお待ちください。」
『ありがとう。』
個人的に気になるのはやはり本棚。
『マリーさん、本棚を見せてもらっても?』
「えぇ、構いませんよ。」
並ぶ本はやはり軍関係のものが多い。
戦術本、兵士の育成、魔法の手引書などもある。
ふと傍らに置かれた執務机の上…小さな額に入れられた絵が目に入る。
(あれ?…これ、ロニーさん?…)
ハッとなって、マリーの姿と、絵を交互に見る。
『マリーさん、あなたもしかして…』
振り向いたマリーは、私が置かれた絵画を手に持っているのを見て、
「えぇ。そうです。ロニー…ロニルダ=オストルは私の妹ですよ。」
と笑った。
応接用のテーブルに、お茶を乗せた盆を置き、「どうぞ」と促す。
『うわぁ…驚きました。』
「ふふっ」と笑い、眼鏡を外すその顔は、双子とまでは言わないが、ロニーに似ている。
「お話したかったのはまさにロニーの事だったんですよ。」
少々柔らかく感じる口調は、「個人的な話」だからだろう。
『えぇ、是非に。』
町に流れる重苦しい空気を吹き飛ばすように、今一時の楽しいお茶の時間を楽しんだのだった。
感想、要望、質問なんでも感謝します!
叔父の到着からいよいよ東領の問題解決へと動き出します。
45話予告でできなかった部分も回収します!
次回もお楽しみに!




