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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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45話 誇り

45話目投稿します。


誇れる事は人それぞれに。他者の目には眩しく映るのです。

案内役として同行したロディルの助けもあって、私たち一行は然したる問題もなく鉱山都市オスタングへの到着と相成った。

東領の中心都市、かつ王国の土台を支える資源の宝庫。

交易の殆どが資源、近隣の山から採れる鉱石と、その加工を主軸にしている。

王都を始めとした国内の武具の殆どは、ここオスタングから出たものと言っても過言ではない。

山肌を刳り貫き、その内部を生活の拠点とした町は、日中でも薄暗いものの、町中に灯されたランプの光で視界としては問題ないほど明るい。


ここで暮らす者は亜人種であるドワーフ族が多く、また長い歳月から生まれた混血児も多い。

解りやすい事に純血のドワーフ族に比べ、混血の者は背が高い。

国全体がそうであるように、純血、非純血に対して一般的な格差はないが、細やかに信仰される「教え」の中にはその差を明確にすべきだ、といった過激な宗教や思想もあるらしい。

今現在において、そういった過激派が台頭しない大きな理由には領主の存在が大きく起因している。

ここ東領の領主、グリオス=オストロード本人がドワーフと人との混血児。

かつ正確は豪胆で義に厚い。

となればそれを敬う人は多く、過激な思想、活動が表立つ事自体が稀。


余談ではあるが、北領を除く他の三領のうち東と南の現領主はそれぞれに他種族との混血。

西の現領主も他種族の純血ではあるが、そういった理由から国内の種族差別は問題視されない程度の話だ。




町の様子は…何というか平和に見えるのは間違いないのだが、少しばかり怯えのような重苦しい空気、緊張感を感じる。

当然といえば当然で、火山から少し離れているとはいえ、そこに巣くっている竜の脅威はいつ迫っても可笑しくないのだ。

それでもそう見えるのは領主の統治力と、暮らす人々の勤勉さといったところだろうか?。

町の至る所から金属音は鳴りやむことはない。

建物から上がる黒煙は、鍛冶場特有の熱気と匂いを放ち、鉱山都市と称されるのも納得がいく。


「この中央通りを進むといくつかの宿があり、そのまま進めば領館などの施設があります。」

流石に交易で幾度も訪れているロディルは町の各施設にも詳しいようだ。

『ありがとう、ロディルさん。色々と助かりました。』

頭を下げる私に、ロディルは謙遜し「では」と短く返し、背中の荷物を抱え手を振り去っていった。


『ひとまず宿を探そう。』

エル姉とノーム、シロが頷くが

「あぁ、フィル。俺は鍛冶屋に寄っていく。」

といって、腰に下げたショートソードをぽんぽんと叩く。

手持ちの装備品の整備を怠らないのは流石だなと感じるものの、故郷に居たころも事あるごとに町の鍛冶屋で遊んでいたのを思い出す。

『解った。あとでノームに迎えに行かせる。』

「オムカエ! オムカエ! マカセロ!。」

こういう時、ノームの嗅覚は助かる。

「そいじゃ、また後でな!」

通りを走り去るカイルと、シロの姿を見送りつつ、辺りの宿に目星をつける。

「フィル。あそこにしよう。あそこがいいぞ。」

エル姉が指さした宿、隣には酒場…あぁ、まぁそうだろうね。

『いいよ。行こうか。』

いつも通り過ぎて逆に落ち着く。

(お酒…飲み過ぎて困る事とかないのかな?…)




二人部屋を二つ確保し、案内された一室。

ここ数ヶ月でいくつかの宿に滞在したが、造りはいずれも似たりよったりだが、私としては町の景色が見られるのは楽しい。

早速窓を開けると町の喧騒と隣の酒場からの音が耳に聞こえる。

見下ろすと入口付近で待っていたノームの姿。

『ノーム。』と呼びカイルの迎えを頼む。

やはり彼としても人の町には興味があるようで、鼻をスンスンと鳴らしながらも辺りを見回し、楽しげな足取りでかけていった。

『さて、と。』

手早く細かな身支度を済ませ、同室のエル姉に

『私はひとまず到着の報告に行くんだけどエル姉はどうする?』

「隣に行きたいところなんだが、一応は私も仕事だ。」

親指が示す先はまぁ分かってはいたが、酒場の方向。

「仕事」とは教会絡みの事だろう。彼女の公の目的は各領の教会への行脚なのだからそれは流石に蔑ろにはできまい。

『解った。それじゃ色々終わったら酒場に集合ってことでいいかな?』

「へへ、解ってきたじゃん?」

『いい加減、ね。』

また後でな、とエル姉は部屋を後にした。


宿の店主にカイルへの伝言を頼み、私もエル姉の追うように外に出る。

表通りを少し進むと少し先を多少見知った姿が歩いているのが見え、走り寄る。

『ロディルさん。』

振り向き、私の姿を確認したその人、ロディルは笑みを浮かべながら答える。」

「おや、フィル様。その様子ですと、無事に宿は見つかったようですね。良かった。」

『ロディルさんの用事は…』

先ほど別れた時より背中の荷物は少ない。

「えぇ、こちらも無事に終わりました。今は交易の報告で領館へ向かうところです。」

良ければご一緒に、と目的地も同じ事もあり、隣だって歩く。

『そういえば伺ってませんでしたけど、何の取引だったんです?。』

領館へ向かう道すがらの話題として聞いてみた。


エルフの集落とオスタング、両間の交易は少しの手間がかかるものではあるものの、この町にとっては重要な事なので蔑ろにはできないという。

「あれを見てください。」

指さした先にあるのは…風車?だろうか。

曰く、オスタングは山の内部を刳り貫いて造られた町という事から外からの風が入りにくい。

内部に籠る空気と、鍛冶場から発生する煙と熱気。

設置された風車はその循環、排出を担うために必須な施設だそうだ。

本来の風車は当然、そもそもの風がないと回転すらしないのは当たり前の事ではあるが、そもそもの風を発生させる方法としてエルフが得意とする風魔法が役に立つのだという。

風車を動かすための動力として、オスタングで採掘された鉱石から抽出したある種の宝石、これを一旦エルフの集落へ運び、風の魔力を籠め、再度オスタングへと運ぶ。

ロディルの仕事はこの運搬が主な内容で、集落へ戻る際には交易で設けた金銭を使い、集落の必要物資と新たな宝石を持って戻るらしい。

「風を生み出して風車を回す。そして同時に風車を利用して地下水の汲み上げにも役に立っているそうですよ。」

仕掛けについての詳細は知らないそうだが、永らく続く交易が両間の発展を担う事、自らの仕事に誇りを持っている、とロディルは語る。


『何というか…凄いですね。それに、素敵な事だと思います。』

率直な感想を伝えたところ、ロディルも「そうですね。」と相槌を打つが、彼の言うところと私の感想は少々ズレているように思えたので付け加えておく。

『いえ、確かにあの風車とかオスタングの技術力?ですか?も素晴らしいですが、私はロディルさんも素敵だと思いますよ?』

きょとんとした顔で私を見るロディル。

すぐに私の言わんとする事が分かったようで、少々照れ臭そうに頬を掻いた。


『誇りを持ってできるお仕事、私はとても素敵だと思いますよ。』

「ありがとう。でも…」

『?』

「きっとフィル様にもきっとあるはずですよ。自分を誇らしいと思える事が。今は思いつかなくとも、必ず、必ずです。」

グッっと握った拳を私に見せるようにロディルは言った。

『…だといいですね。うん。』


『私もきっと、見つけてみせます。』


感想、要望、質問なんでも感謝します!


東の領主との邂逅。迫る危機と迫る時期、王都からも多くの兵が訪れ、高まる士気を目にしたフィルは何を思うのか?


次回もお楽しみに!

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