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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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44話 抱擁の温度

44話目投稿します。


推測を重ねた議論の中で問われる事、悩みは尽きません。

森を抜けた先に広がる景色は打って変わって一面岩肌という他に表すようの無い程サッパリした物だ。

何者かが境界線でも描いているかとも思えてしまう。

この身に吹き付ける風も同様に、森特有の涼し気な物から少々熱気を含んでいるようにも感じる。

ここ数年活発になったという火山活動の影響であることは間違いない。


エルフの集落で最初の目的と、短い親睦の二日間を惜しみ、私たちは次の目的地である東領の都市【オスタング】を目指していた。

鉱山都市オスタング。

東領主グリオス=オストロードが統治する採掘と鍛冶の都市だ。

「フィル様、しばらく進むと河に当たります。今日はそこで休みましょう。」

オスタングでの商売ついでに案内役として同行するエルフ族の男、名はロディル。

集落ではしばしば外との交流を生業としている彼は道にも慣れた様子で、見知らぬ土地を進む私たちにとってとても頼もしい存在だ。

『解りました。ありがとうロディルさん、助かりますよ。』




先日同様に簡易的な野営の準備からロディルの手による夕食を楽しんだ後、エル姉が買って出た火の番の元、それぞれに休みに就く。

私は昨夜、ルアとのやり取りを思い返し、少々眠れなくなっていた。


『と言った感じなのですが、正直理解らない事が多すぎて困ってます。』

掻い摘みの経緯を伝えるとまず最初にルアが気付いたところは光の柱についてだった。

「ノザンリィで感じた時の話を合わせると、柱はあの遺跡そのもの…という印象があるな?」

それについては叔父に話した際にもほぼ同じ意見があった事を鑑みると間違いはないと思う。

ただ、今回については事前に遺跡の場所を知っていたからこその話ではあったが、場所が明確でない点から残りの場所を探し出すのは骨が折れそうではある。

(もっと離れた柱も気に掛ければ良かった。)

と考えはするがすでに遅い。

少なくとも再度訪れた際にさしたる反応もなかった二つの遺跡からは調べようもなかったのだ。


点在する星明りのような灯火も私が感じた事と同じで人や獣、つまりは命の光。

『今回も柱の傍には一つの星と少し離れた辺りにいくつか…近くのものはルア様の輝きだったと。』

輝きの強さの違いは不明。

「それは確かに謎だね。いずれの輝きもさして違いがないのであれば個々の魔力量のように持っているものでもないのだろうね。」

初めて「命の光」として感知したのはオーレンを探す時だったが少々弱々しい光と感じたのはより集中していたからなのか、オーレンの体調によるものか、もしくは彼の心境か…

あの時はオーレンの光と、付近に居た狼数匹は感じられたが、その後私を襲撃した影については光として捉えることはできなかったのははっきりと覚えている。


今回の旅の直前にイヴに起こった事を併せて考えれば、影そのものは命の輝きとはまた別のものだという事も解る。

影についてもルアに話したのだが、この点に関しての彼女の言葉はどうにも歯切れの悪さのような物を感じた。

「ふむ…私よりはシロ、サマの方が詳しいだろうな。ただ…」

一瞬悩むような素振りの後、

「この先、フィル、キミには今まで以上に大きな覚悟が必要になる…と私は思う。」


「私の考えだが…」と前置きをしたルアは語る。

影は恐らく人の感情に起因したもの。

故に様々な思惑が集う王城だからこそ少女は膨大な影と相対する事となった。

「まさに人の世はキミが今まで見て来た以上に…いやむしろ今まで見えてこなかったものを沢山見る事になるだろう。」

一見平和に見える世界にも「影」は必ずあるのだ、と彼女は告げる。

時に何等かの選択を選ぶ事もある。

「そうなった時、キミは選べるか?。それによってキミが目にした光が失われる事も、必ずある。」




言葉が出なかった。

私は昨夜、ルアに何と答えればよかったのか…。

(私の選択で失われる命がある…かもしれない…)

中々働かない眠気も相まって、ぼぅっと眼前の焚火を眺めるが、答えは出ない。


「どうした?ぼーっとして。」

近くの河から水を汲んで戻ったエル姉が私の様子を見て声を掛けて来た。

『ん…少し考え事してた。』

少し弱まった焚火に新しい薪をくべ、エル姉は私の隣に腰を下ろした。

私の頭に手を乗せ、撫でられる。

何故だろう、その手から感じられる温もりに安心する。

「今のおまえみたいな顔、教会…いや、むしろ家の方が多いか?。ともかくよく見るよ。」

ぽんぽんと軽く叩き、

「一人で答えが出ない事考えてる顔。」

心でも読めるのか?と思えるくらいに的を得ていて少し怖いくらいだ。

「そんな時に私が言う言葉、何だと思う?」

解らず首を振る。

「ありきたりなんだがな、考えすぎるな、もっと気楽に行けよ。っていうんだ。」

そして、と立ち上がり、私の後ろに回る。

ふわり、と背後から抱きしめられる。

「考えすぎるな、もっと気楽に、だ。」

より一層の温もりに包まれ、心地よさに体を預ける。


『うん。ありがとエル姉。少し楽になった気がするよ。』


私の返事に満足したのか、ニカっと笑うエル姉。

凄いなぁ、と。流石だなぁ、と。

「明日も早いんだし、さっさと寝ろよ?」

『うん。ありがと。エル姉も火の番、無理しないように、ね?』


『おやすみなさい。』

いずれ来るであろう大きな選択があったとしても、選べる意思、その結果を乗り越える覚悟。

少しだけ纏まった考えは、先ほどまでのあった眠れぬ感覚を押しのけ、私は心地よい眠りに誘われたのだった。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


辿り着く鉱山都市、そこに待ち受けるモノは?


次回もお楽しみに!

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