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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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43話 戦いの予感

43話目投稿します。


集落での親睦の光景は、後に来るであろう想像を超える戦いの予感を呼び起こします。

「ーーー!、フィル!」

体を支えられる感覚と、名を呼ぶ声が意識を覚醒させる。

ゆっくりと開けた視界に入ったのはエルフ族の長ルアの顔だ。心配そうにこちらを伺う表情が見て取れる。

『う…すみませんルア様』

頬に添えられた手に自分の手を重ね返事をすると、一先ずの安堵からの吐息を漏らした。

「心配したよ。突然倒れるから…」

ルアの背後、周囲の様子に目を向けると…時間はそれ程経っていないだろうか?

『ルア様、私が、その…倒れた?のはどれ位前でしたか?』

疑問の顔に代わり、少し考え。

「ほんの一瞬だと思うが…キミがここにしゃがみ、転がるように倒れたのを見たのがあそこからだ。」

振りかぶり指し示したのは結界装置だと言われた湖の向こう側の台座。

「そこから駆け寄った、と考えれば…ほんの数十秒ほどだとは思うが…」


あの仄暗い空間での時間もそれ程長くはなかったとは思うが、ルアから聞く限りでは恐らくあちらの時間は長い。

何より感覚の稀薄さもあるよくわからない出来事だ、今のところは何とも言えない。


改めて感じる鼓動は触れる前に比べると弱い。

(…まるで魔力を使い切ったみたいな…)

と頭に浮かんだ「例え」からルアに問う。

『ルア様?、触れる前と後で、この遺跡で変わった所はありますか?…例えば、魔力の流れ、とか。』

問われた事を反芻しつつ辺りを見回すルア。

「…ふむ。」

目を閉じた後、何かを確認するように、

「キミが触れた瞬間で言えば、何らかの魔力の動きはあった…だがあくまで微細な変化でしか無い。」

例えば、と言われたのは油に火を灯す時に使う程度のものだったという。

確かにその例えであれば魔力操作が絶望的な私でも出来る程度の事だ。

(とすれば、この鼓動…あの柱の光は魔力とは関係がない?)

「フィル。キミが感じた事、見た物を私にも教えて欲しい。」

しばし考え込む私を見てルアが私に言い聞かせる。

確かにこの地を護り続けてきた経験は何かに気付くきっかけになるかもしれない。

この場に叔父も居れば一層に「濃い議論」も出来たのだろうな。と私の中の探求心が騒ぐ。

『分かりました。私も是非にルア様のお話を聞きたいと思ってます。』

私の身に怪我がないかと確認した後、支えていた手を離す。

「となればまずは村に戻るとしよう。」

立ち上がり元の台座の位置へ向かって歩き出す。

後を追うよう立ち上がろうとした瞬間、私の体が旋風に包まれた。

フワリ、と少し浮かび上がった私の体から、倒れた際に付着したであろう土と枝葉が取り払われる。

(わわっ、風の魔法?便利ー。)

私の体制を整え風に誘導されるように地に足を付ける。

『ありがとうございます!』とルアの背中に声をかけた。




集落に戻った頃には陽は随分と傾き、中央の広場では何故かカイルとエルフ族の戦士数名が肩で息を吐きつつ転がっていた。

『…あんた、何やってんの?』

「手合せ?」

『見りゃ解る。何で裸なのよ!』

傍らに脱ぎ捨てられている服を手に取り投げつける。

「いやぁ、暑くなっちまって。」

『早く着ろ!馬鹿!』

罵声ついでに頭を一発。

「いだっ!」


そういう馬鹿なのは、せめて故郷だけにしろと言いたい。

大袈裟に頭を抱える馬鹿者は置き去りにひとまず借宿に戻る。

(…そういえば、石剣、持ってなかった。)

向かう前にルアから、安全な場所と言われていたので単純に武具として持っていかなかったのだが、翌々考えれば何かの反応があったかもしれない。

夕食の後で、と改めて話の場を作ると言われ、それまでの時間はゆっくり休もうかとも思っていたのだが…


『ほら。』

借宿に用意されていた浴布を手に取り取って返し、横たわるカイルの体にかぶせるように投げた。

同様に横たわるエルフ族の戦士数名にも渡す。こちらはちゃんと手渡し。

「なーんか扱いに差がないか?」

『あたりまえでしょ。』

ありがとう、とお礼を言われ本当に大した事はしてないわけで…返答に困る。

「カイル君。キミは強いな…我らとてこの村でも腕が立つ方だと思ってはいたのだが…」

「全員でかかって何とか引き分けとは…」

代わる代わる戦士たちに握手を求められるカイルの様子は少々照れ臭そうだ。

『へぇ?…あんたが、ねぇ?』少しばかり疑いの目を向けると「うるせぇやぃ。」と軽口を返された。

しかしまぁ…人ならざる者から修行を受けてるって考えればわからなくもない、か。


『カイル、私は部屋に戻ってるけど、あんまり皆さんに迷惑かけるんじゃないよ?』

「へーい。」

(戦士…か…)

集落を、村を護る…とても大事な事だ。危険も多い。

部屋のベッドに横たわる。寝ると言ってたエル姉の姿は見当たらない。

流石にお腹でも空いたのだろうか?、まぁ、そのうち姿を現すだろう。

身を返し、反対向きに寝がえりを打つと、視界に入ったのは件の石剣。

指先で触れてみる。

『これも…武器…なんだよね。』


故郷を出て、王都へ…そして今は東領に向かっている最中…

慌ただしくもそれなりに平和だったけど、脅威がなかったわけじゃない。

『でも…今まで結局戦う事なんて…』

シロを助けた時、熊の前に立った…でも結局追い払っただけだ。

キュリオシティでイヴと初めて会った時。あの時だって思い返せばイヴに助けられた。

(カイルは…私を護るって言った…)

護る戦い。先ほどの戦士たちもそう。王都に居た兵士もそう。そしてカイルも…。


きっとこの先、近いうちに大きな戦いになる。

相手は竜…後から合流する事になっている叔父は、王国の兵士を伴って来る。

兵士も、東の領民も、ノームを始めとした亜人種、この集落のエルフ族、その全てが無傷で済むとは到底思えない。

『できれば…誰も傷ついてほしくない、な。』

その為にできる事。

叔父が考えている勝算。

きっとその要因の一つには、あの馬鹿も含まれてる。


そっと石剣を手に取り、胸の中に抱え込み呟く。

『私も…護りたい。』


感想、要望、質問なんでも感謝します!


短い休息の時間は終わり、更なる目的地へ向かう道程が始まります。


次回もお楽しみに!

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