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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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42話 叫び

42話目投稿します。


辿り着いた遺跡は神殿さながらの神秘的な空気を生み出していました。

集落の入り口にあった刳り貫かれた巨大な古木。

私たちが通ってきた道から集落を挟んだ反対側にも同様の道があり、その先は周囲に比べるとより一層深い森が広がっている。

どことなく神聖な雰囲気を漂わせる道に少々の緊張を胸に歩く。


ちょっとした宴会じみた昼食の後、エルフ族の長ルアの案内の元、誘われるこの先にある遺跡が叔父に示された本来の目的地だ。

ここに来るまでの間で「本来の目的」の話は聞いてなかったが、私が感じた鼓動、そしてルアに聞いた事で明確になった遺跡の存在。

ルアの話によれば、二十数年前に叔父や両親が訪れた際の彼らは、未知への好奇心に押されるように調査を行ったものの、然したる成果も上がらなかった事を悔やんでいたという。


「フィル。アイン殿からは遺跡の案内を頼まれてはいるものの、キミはあの手の類に詳しいのか?」

確かに聞いた話だと二十数年前とはいえ、それなりの知識を持っていた叔父も然したる成果が上がらなかったという意味では、私が触れたところで遺跡の謎が解明するとは思えないが。

『うーん…どうでしょう?。王都では一応研究所の所属ではありますが…』

「いや、すまない。アイン殿が遣わしたという事はそこに何某かの意味があるのだろうとは思うのだが。」

恐らく意味はある。

だがこの場に叔父が居たとしてもその説明は難しい。

「さぁ、まもなくだ。」

少し歩みを早めたルアの後を追う。


深い森を抜けた先にあった光景、遠目でも判るほど透き通る浅い湖の中央に石造りの島。

ノザンリィの町で発掘された遺跡とどことなく似ている気がするその建造物は、周囲の雰囲気も相まって、遺跡というより神殿と言った方が近いかもしれない。

『綺麗…』

自然に漏れた感想を喜ぶようにルアは口を開いた。

「ふふ…ありがとう。」


「我らエルフがこの地に暮らし、もうどれほどの時が流れたのか、正確に解る者などもうおるまい。」

長寿の種族にありがちではあるようだが、時の移ろいに鈍感になってしまう感覚は私には分からない。

「長い年月でも我らが護ってきたモノ。それがこの地だ。」

湖に近づくルアの後を追い、その淵に遺跡とは違った意匠の台座がある事に気付く。

台座の前に立つルアが手を翳し、目を閉じる。


キンッ といった音が耳に聞こえた気がした。


『ルア様、これは?』

「あぁ、これは簡単な結界のようなものだ。一応は代々の長にしか取り扱えないような仕掛けだ。」

ほほぅとまじまじと台座を眺めていると、ドクンと強い鼓動を感じた。

ハっとなって目を向けたのは湖の中央にある遺跡。

(うん…間違いない。)

間違いなくノザンリィの遺跡と同様の物。

ここまでの道程でわずかにしか感じなかったのは恐らく先ほどの結界による阻害。

それが解放されたため、その鼓動を強く感じる。

ルアに目を向けると、頷き、その目線で遺跡へ近づくよう諭される。

私も頷き、ゆっくりと遺跡に近づく。

浅い湖の水は澄み切っていて、ブーツ越しでも少し冷たいが、西に傾きかけた陽の温もりがそれを補う。


辿り着いた遺跡、少し警戒しながら、その中央へ…

ノザンリィの発掘直後の遺跡と違い、この遺跡はエルフ族によって綺麗にされているのか、周囲の木々から舞い落ちた葉がいくつか落ちている程度。

『ふぅ…』と胸に手を当て、大きく深呼吸。

意を決してしゃがみ、遺跡の中央部分に手を触れる。

意識を…集中して…


もう一度、ドクンと大きな鼓動と共に、私の意識は落ちた。

倒れる私の薄い視界の隅で、ルアが駆け寄る姿が見えた気がした。


「…―――めて…」

水の中に体が沈むような感覚…いや、これは…沈んでいるんじゃない。

むしろ浮いている。

仄暗い空間で浮いている。

(あの時と同じ感覚…)

「…――を、――めて…」

誰か声。

私に語り掛ける誰かの声。

周囲を見回しても、声主の姿は見えない。

(誰?!、どこにいるの!?)

「…―――を…――めて…」

声の姿は見えずとも、伝わる悲痛さは解る。

(よく聞こえない…ねぇ、何が言いたいの?)

見えない姿に問いかけるが、当然ながら反応はない。


聞こえる声は同じ言葉を繰り返し語り続け、止まることもない。

一先ず耳に留め置いて、改めて周囲を見回す。

以前同様に、いくつかの光る柱と、星空のような光…これは人の命だと以前の光景から認識した。

柱から発した光は他の柱へと這い巡るように走る。

(ん…?、前より少し弱い?…気がする…)

あの時は今以上に分からない事ばかりだったので、気付けなかった事も多い。

無論、この状況の全てが理解できているわけではないが…。


この遺跡、私が触れる事で見えるこの世界。

きっと私に何かを伝えようとしている。

止まる事なく続く悲痛な声は、はっきりと聞こえない。

でも…


(必ず…見つける…かならず見つけるから!』

一瞬、ほんの一瞬、声が止んだ気がした。

『今はまだアナタの声、聞こえないけど…きっと…アナタを見つけるから!!』

虚空に向かって手を伸ばす。

手に触れるモノの無い空間を掴み叫ぶ。

『待ってて!』


次第に遠のいていく景色と意識を感じながら、瞼を閉じる。

理由の判らぬ涙が零れ、仄暗い闇へ落ちていく。


「…―ってる…待ってるから…」


と確かに聞こえた。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


聞こえて来た声の正体は?謎が深まります。


次回もお楽しみに!


※(と』はわざとです。何となく察して頂ければ嬉しい限り

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