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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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41話 過去の救い

41話目投稿します。


訪れた集落で開かれる細やかな宴は、集落で語り継がれる昔話を謳う。

『初めまして、ルア様。』

胸に手を当て、軽く頭を下げる。

「あまり畏まってくれるな。アイン殿には幾度も世話になっているのでな。」

気さくなその言葉に安堵した私は、後ろに立つ面々を紹介する。

「ほぅ…コボルト族を連れているのか。それに…まさか貴方様もご一緒とは…しかも従者とな?」

貴方様、とは?…何事か肩を震わせながら言うルアの視線の先はシロの姿。

「ふん。エルフの小娘が随分と立派になったものだな?」

つかつかと私とルアの前に歩み出たシロがルアをじろりと睨む。何でだろう?

『え?…シロ、知り合いだったの?』

シロとルアを交互に眺め…口元を抑えて肩を震わせるルア、その口から次第に押えられない笑いが漏れた。

「くっくくっ…ぷっぷっぷ…」

シロが彼女を睨む理由が分かった気がする。

「ええい、笑うでない!」

耐えきれなくなった笑い声と、「シャー!」と飛び掛かるシロ。


(この人?たちはどのくらい生きてるんだろう?…)

雷狼にせよ、エルフにせよ、人間の私としてはどれほどの長い時を生きてきたのか想像もつかない。

シロとじゃれながら散々笑いつくしたルアは改まって口を開いた。

「…ふぅ、と。済まない。あの二人ともども見苦しいところを見せてしまった。ひとまず皆が休めるところを案内させよう。」

振り向き、集落の中へと私たちを誘う。

「時間も丁度昼時だ。食事も踏まえて話を聞かせて貰えるかな?」

後ろを歩くカイルとコボルトが「やった!」と小さく喜ぶ。




宿舎として案内されたのは集落の中央、周りを見回しても集落の中では豪華であろう造りの建物だ。

内部で割り当てられた部屋に荷物を置き、踵を返が同室となったエル姉は数日ぶりのしっかりした寝床に飛び込み起き上がる様子がない。

『エル姉、お昼食べないの?』

「あぁ、今は減ってない。むしろ眠い。」

『それじゃ行くね?。何か持ってこれそうなのあったら持ってくるね。』

つっぷしたまま腕だけ振って返事をするのを確認して部屋を出る。

(昨日は早々にお酒飲んで寝てたと思うんだけど…ま、いいか。)

目にする時は大量に飲んでいる印象だが、彼女の荷物のどこにそれほどの量があるのかは謎だ。


急ぎ宿舎の外に出たのだが、エル姉と私を覗く面々はすでに揃っており、案内役のエルフと、この場から見える範囲の集落内について話していたようだ。

「エル姉は?」

『ん、寝るって。』

案内役にも同様に伝え、ルアが待つ場へと足を進める。

道すがら、先ほど聞きかじった集落の様子をカイルから聞き、この目的地の更に奥地に恐らくは私が行くべき場所があると分かった。




「ルア様。お客人たちをお連れしました。」

案内されたのは集落の中では比較的大きめな建物で、中に入ると広い部屋の一室。

集会所…だろうか、恐らくは宴や大人数での話し合いの場などに使われるような建物なのだろう。

ルアが座した前には食事が用意されており、それを囲むようにいくつかの空席。

「好きなところに座ってくれればいいよ。」

とルアに促され、私を含める4名、集落に暮らす数名が腰を下ろした。

まぁ、こういう場合、私はルアの近くに座するべきだろう。


皆が座したのを見計らってルアが口を開く

「改めて歓迎するよ、フィル=スタット。そして一行の者たちよ。久々の客人をこちらも楽しみにしていたのだ。」

面白いモノも見れたしな、とシロを見ながら付け足す。

『ははは…』と集落に到着した際のやりとりを思い出し乾いた笑いで返す。


ルアの合図で昼食の時間が始まり、カイルとノームは待ってましたと言わんばかりに用意された料理を手に取っている。

『こちらこそ、こうした歓迎の席までご用意頂いて感謝します。ルア様。』

私の返事に頷き、笑顔で飲み物が入った瓶の口をこちらに向ける。

膝元に置かれたカップを手に取り、ルアの酌を頂き、再度礼を告げた。


『ルア様は叔父の事をご存じなのですね?』

「叔父…あぁ、アイン殿の事だな?。良く知っておるよ。」

懐かしい記憶を探るようにルアは続ける。

「…アイン殿だけではない。フィル。キミの父と母、ジョン殿、アイナ殿もアイン殿同様この集落で恩義を感じていない者はおらんだろう…とは言っても、前に会ったのは何年前だったかな…すまない、そこの小動物ほどではないがエルフも長命故、少々年月の感覚に疎くてね。」

少し考え込む。

「あぁでもあの時はまだ長の役についてはいなかったから…えーと…ん?いつ頃だ?」

見兼ねたエルフの一人が二十数年程前だと告げた。




二十数年前…確か叔父、父、母は同年代だったはずで…とすると、二十代より…少し前くらいだろうか。

ルアは語る。

この集落に暮らす皆が感じている感謝の思いと、齎した優しい人たちの記憶。


当時、王国は平和であったものの、今現在からは想像できないくらい異種族間の交流が疎らだった時代、閉鎖的に暮らしていたエルフの集落に突如として訪れた冒険者の一行。

外部からの干渉を遠ざけ、今以上に質素に暮らしていたエルフの集落は、古くから幾度訪れていたある種の病気に侵されていたという。

外からきた冒険者を受け入れたのもルアの前任の長がそれに対する解決法を求めて縋った事が理由。

怪我であれば魔法で治療はできる。

しかし病気や老衰はその限りでなく、人に比べれば魔力の扱いに長けているエルフにもどうにもできない事だ。

長寿であり、また、死しても精霊に近しい存在へと昇華するとされるエルフ族は、そうした事も古くより繰り返され、自らの命も自然の摂理と、半ば諦めのように考えられていた文化の中、当時その対象に居たのが前任の長の子、まさにルア本人の事だった。

長は、子の命を救ってほしいと冒険者たちに頼んだ。


アイン本人は別段魔力の扱いに長けていたわけではないが、その知識でみるみるうちに古くからの厄災染みた病気を治していったという。




「実際は単なる栄養の偏りによるものではあったのだがね。」

と苦笑交じりにルアは言う。

それまで森と共に暮らすエルフ族は共存という言葉のもと、野生の獣を狩る事もなく、集落で栽培した作物や木の実などを主食としており、その為食生活にも栄養価の偏りがあったのだという。

今、例えばこの歓迎の席で出されている料理には、少量ではあるものの動物の肉を使ったものも見受けられる。質素である事は解るが、極端に偏った食事ではないのは良く分かる。


「当時この集落を救った者、そして今この時代にまた…この集落だけというわけではないが、この東の地を救うために訪れたのが、ジョン殿、アイナ殿の子であり、アイン殿の姪というのだから、運命のようなものを感じずにはいられんものだな。」

気付かないうちに、各方面から寄せられる期待が大きくなりすぎてる気がするが…

聞かされた昔話は、この胸にも誇らしい気分を齎してくれる。


『ルア様、もしよろしければ、父と母、叔父の話をもっと聞かせてください。』

ルアは優しく「憶えている限りにはなるが。」と笑った。

感想、要望、質問なんでも感謝します!


云わば過去からの贈り物、それは一つの思い出の形でした。


次回もお楽しみに!

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