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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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40話 森の集落

40話目投稿します。


コボルトの鳴き声は割と甲高いのです。

『ぐぬぬ…これは…』

今日の予定の道程を無事に消化し、エルフの集落からほど近い森の入り口。

旅は早めの就寝が肝心…というわけで夕食もさっさと済ませ、今は寝る時間なわけだけど…

(ノーム…寝つきがいいのはヨシとして…)

(いびき)が凄い。

「フィル…どうすんだこれ…」

流石のカイルも許容を越えているようだ。

『あんたの鼾も大概なんだけど…うん、流石にこれは…』

「ぬしらは不便じゃの。耳の感覚を閉じる程度ができんでどうする?」

こんなところでシロの特技を知る事になるとは思わなかった。

「あ、成程、そうか。」とカイル

『えっ?』(えっ?)私の中で心と言葉が反芻される。

エル姉はお酒飲んで気持ちよく寝てるし、むしろノームと二人で歌でも歌っているのかと思える程に…。

昨夜は昨夜でノームは喜びのあまり寝てなかったし、私たちは慣れない行軍で疲れてたからあっという間に寝てた。

翌日になって流石に疲れていたであろうノームは早々に寝静まり…静まってないが…この状況である。

シロの助言で打開策を思いついたようなカイルに少々恨めしさを感じるものの、こちらとしてはどうしようもない。

一先ず、手近の雑草を手に取って丸めて耳に押し込む。

…ないよりマシ。




眠るのに集中力を要するかどうか考えた事なんてなかったが、少なくとも聞こえてくる鼾を無視できるくらいの意識が今は必要で。

(そうだ、何か別の事考えよう。)

と、目を閉じ、例えば大地に触れている手の平、ここに意識を集中させる。

昨夜改めて知覚した大地の鼓動は、昨日よりも強く私の中に入り込んでくる。

(昨日より鼓動が強い…きっとこの先、エルフの集落に何かがあるんだ。)

そう考えると、叔父がこの地に向かうように指示した意味が解る。

ノザンリィの町から発掘された遺跡。あれと同様の遺跡があるのだとすれば、私の持つこの感覚の謎も少しは解るかもしれない。

(そういえば…)

遺跡、と言えば頭に浮かぶのは研究所のロニーさん。そして古代史研究室の室長、ヨハン…えーとヨハン=マルクス教授…だったかな?

同行していたらきっと、寝る間を惜しんで調査して、気を失うほど調査して、起きたらまたその繰り返し…。

仕方ないな、とか言いながら私は多くの研究員のお世話をする。

(ふふ…)

きっと楽しいであろうその光景を頭に思い浮かべるのはさして難しくもない。

そんな未来が来ればいいな。来るといいな。


(…でも今は、そんな未来に少しでも近づけるように、この旅を頑張るんだ…)

脳裏、瞼の裏に浮かぶ平和な光景を願い、眠りにつく。

先ほどまで私の眠気を阻害していた騒音は、それほど気にならなくなっていた。




眼前に生い茂る木々は薄い霧と日の出前の微かに冷たい空気を纏っている。

とある理由(・・・・・)で少々重い目を開き、出発の準備を行う。

昨日の野営の後始末が終わった頃、森の向こう側、山の稜線から差し込む陽光が霧に交わり、幻想的な光景を見せてくれる。

『よし、行こう!』

手荷物を抱え振り向くと、カイル、エル姉、シロ、そしてノームが頷く。

事前に見聞きしていた情報ではこの美しい森の奥にエルフの集落があり、これは推測だがノザンリィの町同様の遺跡があるはず。

少し、ほんの少し、昨夜の瞼に移った光景を思い出し、私たちは眼前の静かな森に足を踏み入れた。


森の中はこれといった道のようなものはないはずなのだが、何故か木々の合間を縫うように進む方向が決まっているようにも感じる。

時にこちらの様子を伺うような気配も感じられるが、明確な敵意や殺気のようなものがあるでもないため、警戒はしつつも歩みを止める必要もなさそうだ。

流石にそういった気配を感じればシロやカイルが真っ先に反応するだろうし、その点は安心できる。

『ねぇカイル。』

「あぁ、大丈夫だ。様子見してる感じ…かな?」

カイルの横を歩くシロに顔を向けると、「うむ」と頷く。


澄んだ空気の心地よさを感じながら森の奥へと歩み、木々の合間から覗く陽光が頭の真上に来る頃、巨大な倒木の内部を刳り貫いたような通路と、その先にいくつかの住居のような建物が見えた。

集落の入り口両脇に門番と見られる二人のエルフが立っており、近づく私たちに門番の一人は鋭い視線を向け、もう一人は恐る恐るといった様子でこちらを伺っている。

「よくぞ参られた、旅人よ!」

「エ、エルフの集落へ、よ、ようこそ!」

二人の門番、一人は強気な女性、もう一人は気弱そうな女性。

おどおどしている気弱な女性に、強気な女性が憤る。

「こらリザ!、もっとしっかりしろっていつも言ってるだろ!」

グイっと首を掴み腕の中に抱え込み、リザと呼ばれた女性の髪の毛をわしゃわしゃと搔き乱す。

「いた、いたいいたい!、だってぇぇえ、痛いよぅロカちゃぁぁん!」

わたわたと暴れるリザの様子に溜息をつき、ロカと呼ばれた女性はリザを解放する。

『えーと…こんにちわ?』

ハっとした後、改めて私たちに向き直り、

「これは見苦しいところを見せてしまった。すまない旅人よ。」

頭を下げるロカに、いえいえと手を振って返す。

その背後に、数名のエルフを伴った人影がこちらに向かってくるのが見える。

門番の二人より少々身形がよいように見えるのは、恐らく集落の長、もしくはそれに近しい人だろうか。


「改めてよくぞ参られた。聞いていた予定より早かったもので、森ではいらぬ警戒をさせたと思うが。」

『あっ。』と声を上げる。

森を歩いていた際に感じた気配は、予定より早く訪れてしまった私たちを確認するためのものだった。というわけだ。

『というか…私たちが来るのをご存じだったのですか?…えーと…』

「あぁ、すまない。私はルア。ルアフォン=ニールという。一応はこの集落の長という事になっている者だ。」

ルアと名乗った女性は、透き通るような長い金髪を一つに束ね、凛とした姿はその言葉を納得させた。


ひとまず最初の目的地に無事に到着できたことに安堵し、肩の荷物を下ろす。

心地よい陽光の温もりと、森を通り抜ける風が、どこか懐かしい匂いを運ぶ。

(どことなくノザンリィに似てる…気がするな…)


感想、要望、質問なんでも感謝します!


森の奥、眠る遺跡ではどんな事が待っているのか?


次回もお楽しみに!


*****

誤字報告いただきました。ありがとうございます!

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