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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第三章 魂の器
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38話 亜人の洞穴

38話目投稿します。


突然に襲い掛かる地震と、予想外の出会いはこの先何をもたらすのか?

『…ちょっと、カイル。エル姉、アレ大丈夫なの?』

焚火を囲み、横に座るカイルに耳打ちすると、「わかんねぇよ」と少し眠たそうな声色の返事が返ってくる。


河を越え、野営の準備をして、簡単ではあるが夕食を摂り、早めの就寝という事で各々眠りについた…はずだが。

薄暗い空洞は、何かの油を使った灯と、目の前に焚かれた火の灯火で視界に困るほどではないのだが。

この場に居る者、私、カイル、エル姉、人ではないがシロ、そして私たち以外の人影が3人程。

ただし、それは普通の人ではない。

コボルド族。

エルフより長い耳は兎や狐のように毛に覆われ、鼻先も同様に猫や狐のように前に伸びるような形。

体格は凡そ人で言うところの子供程度の大きさではあるが、四肢は獣のソレに近い。

大雑把な印象は、子供くらいの背丈で二本足で歩く狐…と言ったところか。


「かぁぁぁぁぁぁっ、旨い酒だなぁ!。」

私とカイルから焚火を挟んで向かいに座っているエル姉は、手に持った木製のカップを呷り、中に注がれていたお酒を一気に飲み下す。

「オマエ オンジン モットノメ!」

エル姉の右側に座るコボルトも、自ら持つカップの酒を器用に飲み干し、手酌をしつつもエル姉のカップにもオカワリを注いでいる。

エル姉は喜び、そのコボルトの肩に腕を回し、意気揚々と盛り上がっている。


「お客人。休んでいたところすまなかった。」

エル姉にお酌をしているコボルトと反対隣りに座るコボルトは他のものより歳をとっているのか、流暢な人語でこちらに声を掛けてくる。

『あぁ、いえ…ちょっと驚いてはいますけど。』

広げた手のひらを軽く振って返す。

「わしはこの集落の長のような役目を仰せつかっておるのじゃが、こういった事は初めてでな。」

そう。互いに予想もしなかったこの現状は数刻前に訪れた。




別段悪天候でもなかったので、天幕などの準備はせず各々適度に自分の荷物を使っての寝床を準備を済ませ、火の番を買って出たエル姉が手持ちの荷物からガサゴソと酒瓶を漁り始めたところで事は起こった。

『ん?…地震?』

と私が発した後、次第に大きくなる音と揺れに私たちは襲われたのだ。

地面に横たえていた体の上半身だけを起こし、辺りの様子を伺うと、荷物を漁っていたエル姉は動きを止め、カイルもまた私同様に体を起こして、枕元に置いたショートソードに手を掛ける。

ぐっと手に力を籠め、立ち上がろうとしたところ、手の先の感覚がフっと消えた。

『わわっ!?』

私同様に、二人からも似たような叫び声が上がる。

落下するような感覚は数秒間続き、体が何か柔らかい物にぶつかるような感覚と「グキャ」?というような擬音と共に辺りは静かになっていく。

落下した先は、夜という事を置いても暗く、目が慣れるまでに少しの時間を要した。

『カイル?エル姉?、居る?大丈夫?』

「いっつつつ…そっちは平気か?」

カイルは無事。

「二人とも怪我してないか?」

エル姉も無事。

『ふぅ』と安堵の溜息をもらしていると、お尻の下がモゾっと動き、何かを叫んだ。

「ニ、ニンゲン オモイ!」

『わわっ?!』

私のお尻が片言の叫び声を…いや、私のお尻の下から片言の叫び声が聞こえた。

咄嗟に体を動かし、お尻の下に居た何かを確かめる。

「グギギ イタイ。」

慣れて来た視界に入ったのは、コボルト族の姿。

私の下敷きになった時に怪我をしたようで、苦しそうに身悶えている。

『エル姉、こっち来れる?』

程なく近づいてきたエル姉は私とコボルトの様子を見て、「動くな。」とコボルトに広げた手を翳した。

仄かにエル姉の手が光り、その収まりと共に、コボルトがピョン!と跳ねるように立ち上がった。

(良かった…)

『えと、ごめん、大丈夫?。キミはコボルト?だよね?。私の言葉、解る?』

「キュッ。」と擬音というか声と共に、コボルトが私の顔を覗き込む。

「ニンゲン ケガ ナオス アリ ガト。」

ピョンピョンと左右に跳ねながらコボルトは喜ぶ。


幸いな事に、何となくこちらの言葉も解るようで、少しばかり片言の会話をした後、そのコボルトの案内で通されたのが今集まっている空洞というわけだ。

申し訳なさそうに頭を下げる長に返す。

『いえ、さっきのあの子、私の下敷きにしちゃって…』

実際にコボルト族を見たのは初めてで、性別はもとより、年齢の具合もいまいち分からないので「あの子」と例えてしまったが、少し離れたところに座っているコボルトを指で示すと長は頷いた。

「大丈夫じゃよ。こちらの御方に治療もしてもらったでの。」

予想外すぎる出来事の結果、コボルト族との出会いを果たした私たち一行は、少々手狭ではあるが見張りをせずとも休める場を借りられることとなった。




コボルトの集落という割りに、掘り返された空洞は人が普通に歩いてもその高さには余裕がある程の空間が確保されている。

長に理由を聞いてみると、そもそもこういった空洞はコボルトが自由にこの地で暮らす上で、東領主との約束らしく、何等かの災害があった時などの避難壕、もしくはその経路として使えるように彫り進められている。

全ての穴がそうである理由はないのだが、長らくそのように掘っていた習慣から、この程度の空間を確保する事が普通の事となったらしい。

聞けばこの空洞からかなり離れてはいるが、東領の都市オスタングまでも繋がっているという。

(竜に襲われない、という意味では安全に行けるんだろうけど…)

東領の地下を網羅するように敷かれているのであれば…

『もしかして、エルフの集落の方にも繋がってたりするんですか?』

長の返事は肯定。

「わしらコボルト族は、領主直々にこの地下開拓を依頼されておるでな。無論じゃよ。」

ここを利用させてもらえば目的地に辿り着くのも随分と楽になりそうだ。

『通らせてもらっても?』

再びの長の返事は肯定、そして何故か嬉しそう。

「ホッホッ、勿論じゃ。わしらの仕事が役に立って嬉しいものじゃ。」


翌日に案内役も紹介する、と約束してもらい、用意された寝床に潜り込む。

先ほどの焚火の周囲には未だ酒を飲みかわすエル姉とコボルト。

すでに横になって寝ているカイルの姿が見える。まぁ、カイルの背格好ではこの寝床は狭いだろう。

シロの姿が見えないが、まぁどこかで寝てるか…。


(土の香り…ノザンリィとはまた違う感じ…でも、懐かしい感じ…)

もともと就寝前に事が起こったので、日中の移動も相まって体はへとへとで、目を閉じると私の意識はすんなりと眠りに誘われたのだった。


感想、要望、質問なんでも感謝します!


コボルトは意外とモフモフするらしいです。


次回もお楽しみに!

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