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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第九章 禁呪
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394話 近い雰囲気

394話目投稿します。


彼の経緯は続く。

船は落ちない。

「で、どうする?…いや、むしろ何がしたいんだ?オマエは。」

ここに来た経緯を答え終えた雰囲気のカイル。

まぁこちらも粗方の流れは理解した。

今後の私たちについては何とも言えない。

シャピルの行動如何で左右されるのは間違いないわけだが、私の印象としては直接的に王国に被害が出るような気は感じられない。

『うーん…カイルはあの人と話してどう思った?』

「王サマとは違うって感じだが…そうだな…うーん…」

気になる事でもあるのか、大袈裟に悩むような仕草。

「あーいう人、どっかで会った気がするんだよな…」

実はシャピルと以前会った事がある、というわけではない。

カイルが言いたいのはあの雰囲気に似た人を知っているはず、という事だ。

彼が知っている人なら恐らく私も…。

でもカイルが感じたソレと私の印象も違う可能性はある…。

『似てる人…ねぇ…』

「なんつーか、あの人って所長の因縁の人ってはずだよな?」

『え、えぇ、私もそんな感じだと思ってた。』

「んー…表情が読めないのもあるんだが、敵意すらないんだからある意味戦い辛いってのもあるな。」

敵意…確かに試すような行動に巻き込まれはしたものの、今までにあったような恐怖感といった圧は無かった。


『似た人ねぇ…』

あまり感情を表に出さないと言えば、真っ先に思い付くのはヘルトだが彼女は仕事上でそうしているだけで、優しいし、私を叱りつける時は本当に怒っている。

感情の少ない人…誰か居ただろうか?

「あー、そういうんじゃない。なんつーか、どっち付かずっていうか…」

成程、言いたいことが何と無く分かった。

確かに言わんとする事も分かる。

『シャピルはきっと一族の残党…べーチェが居た場所に類する連中とは別に動いていると思う。』

多分、王国に脅威を齎すとすればシャピル本人ではなく、そちらの勢力だ。

「だから、オマエが今考えてるのも少し分かる。あの人と戦うつもりはそんなに無いんだろ?」

シャピルに限らず争いは苦手なのは変わらないが、カイルの言う通り、今の私にはあの男に刃を投げつける事は躊躇われる。

王国に害があるのか、詳細は不明だ。

この船が目的地に到着すれば何かが分かりそうなものではあるが…。

『皆に危険がないなら…ね。』


「にしても、誰だったかなぁ…いやまぁ、俺自身はそんなに話してたってとこでもないはずなんだけどな。」

となると…私の方がカイルが言う人物と関わりがあった可能性が高い。

私の印象ではなく、カイルが感じた印象。

敵でも味方でもない、そんな人…。


記憶を辿るように視線を落とした視界に右手が映る。

何気なしに握りしめた拳、開いた手の平。

もう一度繰り返した時。

『あ…そうか…』

一人、思い至る。

カイルの記憶に薄いのも納得が行く。

その姿がこの世界から消えてしまった時、カイルは一緒に居なかった。

彼からすれば一度だけの邂逅、記憶に薄いのも、私との差異も納得が行く。

今でこそ当然のように力を貸してくれてはいるが、彼らの種族は本来、人との接触自体が少なかった。

『…ルア様…』

「!、それだ!」

ポツリと漏れた名に、カイルが反応した。

「あ…スマン。」

モヤモヤがスッキリした事で嬉しそうな顔をしたが、カイルも成行は知っている。

『良いんだよ。あの人の魂は今も生きてるんだから。』

大樹の循環で今はまだ幼子の姿に転生したルア。

その名をスヴェンと変えて、エルフの集落ですくすくと育っているのだ、悲しむのは私たち人種族が持つ価値観なだけだ。


『でもカイルからするとルア様ってそんな感じだったのね?』

「そもそも俺たちが知ってたエルフ族ってそんなもんだろ?、話せば親しみやすかったけどさ。」

それでもカイルの中では、族長であったルアに感じていたのは何処か一線を引いているような、悪く言えば信頼しきれない部分があったという。

『事実、私も殺されそうになったしね…』

治療の荒療治にしては割に合わなかったと今でも思う。

それもまた、彼らと私たちの命に対する重みの違い。

『ルア様に近い物がシャピルに?』

「いや…俺よりオマエの方が知ってるだろうから、あんまり聞かれても困るぞ?」


魂の捉え方…。

似た雰囲気を持つ…。

人形の中に移りゆく彼の存在…。


エルフ族の母たる大樹はその内側に多くの魂を抱き、同族だけでなく、揺らぎない愛情を注ぐ。


シャピルの魂もまた大樹と同じ様に還るべき場所。

始まりと終わりの場所があるのだろうか?

今、この船が向かう先にソレがあるのか…。


『当たらずも遠からず…か。』


ふいにカイルが言った言葉。

思いも寄らない人に共通点を見出す事となった。

数多くの人形にその意識を巡らせ、互いに同じ思考、知識を持つ。

それはまるで命の循環を長く見守ってきた大樹と同じ。

だとしたら、シャピルもまた、大樹と同じ様に多くの魂、或いは命を見守る存在と言えるかもしれない。


「安心しろよ。もしもオマエに何かが降りかかるなら、遺さず叩き斬ってやる。」


『ふふ…何でも斬るのは駄目。』

「そっか…そうだな。」


感想、要望、質問なんでも感謝します!


もう随分前の事だ、大切な事を教えてくれた人が居た。


次回もお楽しみに!

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