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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第九章 禁呪
375/412

368話 精査

368話目投稿します。


壁の向こうに潜む敵意、それを探るために壁を超える術は…

「さて、手に入れた情報はそれ程有用でもなさそうだけど…」

時間と場所をスタットロードの屋敷に改め集まったのは、私を含めて現場に居た者と、カイル、ラグリア、パーシィ、レオネシアを加えた数名。

後はこっそりと聞き耳を立てている影。


言葉通り、手に持つ書類の枚数は読み上げるに苦労も無さそうな程で、ピラピラと捲りながらこの場の話を始めたノプス。


彼女の纏めた内容に拠れば、今回の一件に紛れ込んだ侵入者べーチェはシャピル家に関わる者で間違いはなく、尚且つ彼女自身の記憶からも見覚えのある顔だった。

べーチェの本来の目的はこの施設の現状確認と知識や技術流出の妨害という事だが前者はともかく後者は彼女からすれば既に手遅れ状態。

このまま吊し上げがなければ身を潜めて折を見て行動に移すつもりだった、と。

この事から考えられる推測、並べるまでもないが、彼女側の勢力は未だに豊富な力、人員も含めて汎ゆる力というものを溜め込んでいるという事だ。

彼女自身が知りうる技術的な知識としては、ノプスたちの現状の調査で手に入れた情報に多少の補足を加える程度のものでしかなく、自身もあくまで定められた手順程度の機器操作しか出来ないようだった。

どちらかと言えば施設に関する知識というよりは、今の環境にすんなりと侵入できるといった理由で選別されたらしいのだが、如何せん相手とする者たちの評価を見誤った。


「舐められたものだね。あの家は一体何を見ていたんだろうか今更ながら疑問だよ。」

ノプスの過去を全て知っているわけではないが、彼女に聞いた事実からすれば、当時後継者争いの筆頭とされていた中で自ら背を向けたとはいえ高い位置に居た人物の評価としては低すぎる値なのは間違いない。

「まぁ…そう思われるようにしたと言えば功を奏した、とも言えるのかもね。」

ニヤリと笑う彼女を見ていると、らしい、と思うのもそれなりの付き合いがあるからこそだ。

「ともあれ、調査結果を裏付けできる程度の情報と、あの家が王国外から何かを企んでいるのは判明した、といったところかな。」

「場所の特定は難しいのか?」

セルストの発言は少しの怒気を孕んでいるようにも聞こえる。

彼からすれば関係者を問い詰めて元の姿、元の力を取り戻すのは個人の目的としては一番の優先度だろう。

「恐らくは想像通りの地図になるだろうけど、いかんせん彼女ですら本拠の情報は無さそうだ。」

「出向く必要がありそうだな。」

後の話は任せると言わんばかりに部屋を後にしたセルスト。

今度はヘルトも追う事は無かった。

「…あの姿のままでいいのに…」

と呟いた言葉は…彼には伝えない方が良さそうだ。




「壁はどうなる?」

「それ程の弱まりは無さそう、というのが私たちの見解ですかね。ただ、実際に触れている訳では無いですが、通れる者に制限がある…と言ったところでしょう。」

念押しに加えた理由は、そこから浮かべる対象が逆という点からだ。

『どういう?』

「キミも結界を作ったことはあったろう?」

まさかラグリアがエディノームの結界を知っているとは予想外だったが、秘匿していた多くの事からすればその実力は伊達ではない、と言ったところか。

「アレは…そうだな恐らくは、セルスト卿、私などは通れない代物だ。」

「そう。強い者、力ある者を行き来させない為の壁なんだよ。」

『ふーん…そうなのですね。』

「何を他人事みたいに言ってるんだい?」

ノプスが私に向かって指を突きつけ、

「キミも、だよ。あとカイル君もね。」

『え…でも』

以前、オスト火山から吹き飛ばされた時、その後にどうなったかは不明だがあの時は間違いなく国境を超えていたはずだ。

「あの時のキミはまだ大した実力じゃなかったろう?」

『む…』

事実だとしても、ラグリアの返し方は少々気に触る。

「…これでも褒めているつもりなのだが…」

疑いの感情を乗せて睨みつけると、流石に予想していた反応ではなかった為か、若干の狼狽えたような顔。

それはそれで良いものが見れたとしておく。


「成長した、と考えれば良いのではなくて?フィル。」

助け舟を出したのはレオネシアだ。

今回の一連、その切っ掛けに辿り着く為の鍵を解放したとも言える叔母は、今や王国そのものからすれば大罪人と称されてもおかしくはない。

それでも今この場に身を置けるのは王族としての血筋と、ラグリアに対しての立場。

王国という視点から見れば大罪人だとしても、私達からすれば真逆。

その真の結論が出るまではそのままだ。

『叔母様…まぁ…そうなんですけどねー』

「ふふ…それくらい許してあげなさいな。歪みきった性格を考えれば些末な嫌味でしょう?」

ある意味、本性を出したラグリアより怖い笑みで私を嗜める。

一瞬ゾクりとしたのは、叔母の言葉にもそれなりの嫌味が含まれていたからだろうか?

血筋からくる容姿も理由の一つだろうか?


「まー、そーいうのは後にして貰っていいかな?」

妙な雰囲気になりかけたのを返したのはノプスだ。

彼女の性格からすれば権力関係など興味の欠片もないし、実際今の場には関係のない話だ。

「多分今のフィルは間違いなく通過できないだろうね。少なくとも壁が消えるまでは。」

断言される事に異論する余地はないが、一つだけ試してみたいことに思い当たる。

「問題は壁がいつまで在るのか。そして壁を抜けれる者の存在だ。」

単純に身体的な強さを遮断するならべーチェのような者は出入りを遮られる事はないだろう。

彼女は運悪くこちらの手に墜ちる結果となったが、あくまでも運が悪かっただけで、今後もそうである確証にはならない。

今だって彼女を隠れ蓑に潜む者が居てもおかしくは無い。


「警備の人員はこちらで用意しよう。引き続き進捗を報告してくれ。」




『さて…と。わわっ?』

古典的にも足元に差し込まれた足につまずき転ぶ私に掛けられた問い。

「…何処へ行くつもりだ?」

見上げた高さはそれ程高くはなかったが…

『う…』

嫌な人に捕まってしまった。


感想、要望、質問なんでも感謝します!


2人なら確かに早い。

確かめる事も、その先の空気感も。


次回もお楽しみに!

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