表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第九章 禁呪
371/412

364話 薄い情報の産声

364話目投稿します。


王都故に情報が集積する場所。

叔母との思いもよらぬ湯浴みの後、私は一人、景色が大きく変わってしまった王都の様子を見るべく城下に繰り出した。


上層部分だった区画を抜けて下層部へと向かう。

昇降機が設置されていた周辺は思っていたのと違い、上層が落ちてきた事による被害の様子は無さそうだ。

強いて言えばいつもより衛兵や城に関わる者たちの姿が多く見えるくらいだろうか?

それよりも思った以上に町の人々の様子が慌ただしい雰囲気が無いことに驚いた。

私が知らないうちにラグリアが何等かの手を挟んだのだろうか?

もしそうでなければこれ程の変化に騒然としていない方が異常だ。


こんな町の光景は思い出したくはないが似た物を見た事がある。

出来れば見たくはない、しかも真新しい記憶だ。


『すみません、ちょっと良いですか?』

南側の大型昇降機を担当する衛兵と実際に操作を行う担当者の姿を見つけて駆け寄る。

事情を説明して町の状況、特に人心についてを確かめる。

捕まえた彼らは普段からこの場所に勤めている人たちらしく、昨日は実際に落ちた上層部も相俟って大騒動になったらしい。

幸い怪我人は他の昇降機に於いても出なかったという事だが、それはそれで不思議に思ったと彼らは言った。

『何か理由が?』

彼らが感じた不思議さ。

その理由は昨日、現場に入る前に行われた連絡の時間に通達された内容もあったからだと言う。

丁寧な事に内容まで教えてくれた2人に感謝を述べて私は下層区画へと歩みを進めた。


『…』

少しだけ行き先に迷った。

恐らく技術院にせよ学術院にせよ、赴けば調査場所に辿り着く事はできるだろう。

だが今の私が地下の現場に向かったところで大して役には立たない。


私にしか出来ない事、そう考えて向かった先。

ギィィと重苦しい音は相変わらず。

正式な主不在の建物は日中だというのに少し肌寒い。

正面入口から入ってすぐの礼拝堂を通り抜け、目的の場所に向かう為の、一般人には知られざる秘密の場所へ。




『…フー…』

埃っぽいのも上の入口同様に相変わらず。

初めてここに足を踏み入れた時は、さして気にも止めて居なかったが、日常的に、それも決して訪れる者が頻繁ではないはずのこの地下。

ここを照らす灯りは煌々。

何等かの装置か、はたまた魔力に依るものか、或いは王都の地下という意味合いで言えば、あっちの技術が使われている可能性も無くはない。

「お久しゅうございます。」

光が行き届いていない暗がりから、外套を目深く被った姿が現れた。

私の前まで近付きフードを払った中から見えた顔。

初対面でチキに続いて、私の手並を図ろうとした禿頭の男、名をフウキと名乗った男が恭しく頭を下げた。

『フウキ…で合ってたかな?』


マグゼやエル、リアンがエディノームに拠を移して以降も王都に残った者の内の一人だ。

以前からキョウカイの徒である事を秘匿として各領に出ていた3人組、エデ、オスタ、ヴェスの3人は今現在も各地で目立たぬように任を全うしているらしい。

ただ、エデについては今現在、王都ではなく私たちの故郷であるノザンリィに潜んでいるらしい。

「彼らからは今の状況に関する報告は上がっていません。私もそれは同様…というより例の地下に関しては我らが調べられる範疇を超えている、と言ったところでしょうか。」

今現在、ここより更に地下で行われているであろう調査、研究が進めば、彼やチキの元に集まる情報もわかるだろう。

これについては私もそれ程明確な情報は期待できないのは分かっていた。

『オスタとヴェスからは何かあったかしら?』

別段は、と返された言葉に、やはり国全体の規模としての異変はまだ起こっていないのが分かる。

『フウキ、貴方の出身は西の隣国ではない?』

「残念ながら違いますね。ですが…」

否定の上の遠からず。

「ですが、私の両親はフィル様の仰る通りですよ。」

残念ながら両親はすでに他界していると、笑うフウキ。

『…ご、ごめんなさい!』

配慮に掛けた自分の問いを謝罪すると、彼からは激しい謙遜が浮かんだ。

「両親は…そうですね、別段不幸といった物ではなかったのです。今となってはあくまで私の主観ですが。」

『そう…』

ならばそれ以上の詮索は不要だろう。


『オスタとヴェスには国境付近を警戒するよう伝えておいて。』


ラグリアの口振りからすれば東西の隣国はさして問題もないはずだが、長い間交流の無い事から全ての信頼に足るかは怪しい所だ。


「そういえば、今回の一件が理由かは不明ですが、ヴェスの報告によると、パルティア様が近い内にこちらへ赴くとの事です。」




『…ふーむ。』

フウキと交わした情報交換はキョウカイの力を以てしても入手できない事が蓄積された情報に繋がっているはずだ。

いち早く手に入れる事は今現在の最優先に含まれる事象だが、いずれにしてもすぐには解決できそうにない。


今はノザンリィに潜むエデの話を聞いた時、私の両親は今頃どうしているのか。

その存在は今の状況でどう動くのだろうか?


『久しぶりに顔がみたいな…』



感想、要望、質問なんでも感謝します!


各地の情報は、その新鮮さを保つのは難しい。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ