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びんかんはだは小さい幸せで満足する  作者: 樹
第九章 禁呪
365/412

358話 懐かしい職場

358話目投稿します。


培った技術も、人脈も、生きる場所、暮らす場所が変わったとして消えるものではない。

『久々の操作でも大丈夫そうだね?』

「再就職できますかね?」

「おや、技術院は不満かい?」

「たまに?」

昇降機の操作ならお手の物。

そんな具合で一行は地下から地上へと登っていく。

「また忙しくなりそうだ。」

「お手伝いしますよ、所長。」

眼下に拡がる広大な地下空間を見下ろし、技術院所長のノプス、その隣に歩み寄ったロニーが共同作業の算段を始める。


「あっちはどうするんだ?」

私に声を掛けてきたのはガラティアだ。

ここで言うところの「あっち」とはエディノームの町の事だろう。

『状況にも依るけど、グリオス様やマリーさんに預けるのが無難かな…』

今現在もそうではあるが、様々な種族が共存しているあの町は、前で言うところのオスタングに近い雰囲気があるのは周知の事実だ。

元東領主であったグリオスと直属の配下であったマリーの2人が適任だ。

町の成長を日々眺められなくなるのは少々寂しいが、あの町の、国全体の存続を左右するような事象が起こればそれどころの話ではない。

『スコルプさんたちに報せなきゃ行けないこともあるけど、しばらくは直接戻るのは難しいかもね。』

伝令と言えば思い浮かぶのは少々胡散臭い顔だが、アレは見た目と性格に反してかなり優秀で一方通行の報告だけに走ってもらうのは勿体ない。

今回同行してくれた戦士たちに頼むのが無難だろう。


『そう言えば所長、コレってどれくらいの距離で使えるの?』

手渡されたものの、結局使い所の無かった技術院特製の通信器、事伝達、連絡に際して使えるとしたらこれ程優れたものはあるまい。

「ふむ…確かに便利ではあるが、それ程感度がいいわけでもないからね。しかし目の付け所は悪くないね。」

調査の傍らで良ければと、さり気なくノプスの仕事を増やしてしまった。

「でもね、フィル。この通信器、元の制作者は技術院じゃないんだよ。」

『あれ?そうなんですか?』

傍を歩いていたパーシィの肩を引き寄せる。

「貴女のよく知る人だよ?」と笑うパーシィ。

その胸元に下げた首飾りを指先で弄ぶ。

私が彼女に送った品だ。

『あ…』

「私たちはここに簡易的な線を繋げないかな、と弄っただけでね。」

ソレが元。


目の前の親友と、近しい幼子、2人が笑顔でいられますようにと微かな願いを込めて作った首飾りは少しはその願いを叶えてくれているだろうか?

「フィル、改めてだけど、コレありがとうね。貴女に出会えた事が私の中で一番の幸せなんだって思ってる。」

『…』

唐突なパーシィの独白に驚いた私は、一瞬固まってしまった。

「おやおや、こんなところで愛の告白かい?」

肩から首に回した腕を引き寄せ、ニヤニヤしながらノプスが突っ込みを投げる。

「…ちょっ、茶化さないでくださいよ、所長!、ねぇ?」

と同意を求められても、私には恥ずかしさのあまり、視線を合わせる事も出来ない。

『…パーシィ…それすっごく嬉しいんだけど、恥ずかし過ぎる…』

「ちょっ!フィル!アンタがそれ言っちゃ駄目でしょうよ!」

ノプスの腕を振り払って可愛く憤慨するパーシィ。

『いやいやいや…今言うのがどうなのよ?』

周囲に笑顔の輪を拡げる。

好きなやり取り。

落ち着く。

「むー!むー!!」

ポカポカと戯れる彼女を受け止め、ドウドウと留めながらも昇降機は登る。




『ここは…』

昇降機の動きが止まったのは静まり返った城内。

見覚えのある室内は…

「中央広間の真下ですね。」

流石は元城内勤務のメイドだ。

『こんなところに繋がってるのね。』


ガチャりと開いた扉の向こうからあっという間に現職のメイドと執事が現れ、ラグリアだけでなく私たちをも取り囲む。

揚々に頭を垂れる彼らに手振りだけで指示を送る国王。

その姿と振る舞いは伊達ではないようだ。

「傷の手当もな。」

主に負っているのはカイルとノプスで、片方に関しては当の本人の手による負傷だ。

すでに争うような雰囲気もないし、流石に城内でそんなことにはならないだろう。


余計な思考を浮かべている間に別室に拉致られた数名を除き、残った私たちの前で恐らくは筆頭のような立場の執事がラグリアに耳打ちする。

「被害がなければ些事だ。下層の区画にスタットロード夫人がいるはずだ。迎えを。」

短い王の返事に改めて頭を垂れて一歩身を引く。

別の者が退室し、王命通りにレオネシアを迎えに行ったのだろう。

私たちは別室、城に相応しい豪奢な応接室に案内された。


ヘルトに声を掛ける数名は元彼女の仕事仲間といったところだろうか?

其々、彼女が大事そうに抱きかかえる幼子を見て何か声を掛けているが、返答するヘルト自身は苦笑気味だ。


未だに幼子は目を覚ます様子はない。

果たして目覚めたとすれば、見た目同様に意識や記憶も年齢同様なのだろうか?

指先でその頬を突付くと、少し嫌そうに身を捩る。

ただ見てるだけなら良かった。


『どんな夢を見てるんだろう…?』


感想、要望、質問なんでも感謝します!


目を醒ました幼子は、何を成して、何を語るのか?


次回もお楽しみに!

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